ジョージ・ソロスがスコットランド独立問題を語る

著名投資家のジョージ・ソロスがフィナンシャル・タイムズ(原文英語)でスコットランド独立問題を論じている。

ソロスは記事で、スコットランド独立後にイギリスと通貨を共有する場合、政治同盟なき通貨同盟は、ユーロ危機が証明したようにどちらの側にも悲惨な結果となり、しかしスコットランドがポンドを失えば、強いポンドがもたらしてきた低金利の恩恵を受けることができなくなると述べる。

スコットランド独立後の通貨の共有についてはイギリス政府側が否定しているから、前者の可能性は限りなく少ないだろう。これはソロスの記述ではなく私論となるが、現実的には、スコットランド独立の場合、投資家は、金利上昇のもたらす経済状況、すなわち不動産株安などを想定することになる。

ソロスはイングランドとスコットランドの政治気風の違い、すなわち教育などの分野におけるスコットランド人の左派的な政治志向にも触れ、保守党の支配するイギリス政府との指針の違いに耐えているスコットランドに理解を示しながらも、しかしそれでもスコットランドはイギリスに残るべきだと言う。

彼はまた、スコットランドのイギリスからの独立を、イギリスのEU離脱に重ねて論じている。ソロス曰く、EUに加盟しながらユーロ圏に入っていないイギリスは、通貨による制限を受けることなく自由貿易による利点を享受しており、世界経済で考えられる最高の状態に身を置いているという。スコットランドがイギリスから独立するべきでないのと同様に、イギリスもEUから離脱するべきではないと主張する。

彼はポンド危機の最中にポンドの空売りをしたことで有名であり、その結果イギリスはユーロ圏に加盟できなかった経緯があるから、現在のイギリスの状態に直接手を貸したファンドマネージャーがこのテーマを語るのは感慨深いものがある。

彼は既にファンドマネージャーを引退しているから、記事における主張は政治的なものに重点を置いているようにも読める。語彙も一方的に西側のものであり、「ロシアによる宣戦布告のない戦争」「ロシアのウクライナ侵攻」などは日本語における報道とは異なるものである。記事のなかでイスラム国についても案じている通り、彼は要するに、イギリスの空中分解が、西側による戦後秩序の崩壊への第一歩となることを恐れているのである。