量的緩和相場は数年の熱狂のあと世界的なバブル崩壊で終わる

世界的な株高、債券高が進行している。FRBによる量的緩和の役割は日銀、ECB(欧州中央銀行)へと引き継がれ、FRBが緩和縮小を示唆したときの市場の動揺は消え失せた。この株高、債券高の傾向は今後も続くと思われるが、しかしこの量的緩和相場が行き着く先は何処であるのか、そしてそこへ辿り着くまでに市場はどのような道筋を辿るのかということを、今のうちに考えておくことは必要である。

現在の株式市場、債券市場は中央銀行による債券購入に支えられている。金利が上昇(債券が下落)したり、物価上昇率が芳しくない場合には、追加緩和措置が取られ、市場が当局の意図する方向へと向かうように仕向けられている。

  • 中央銀行による資産購入 -> 株高、債券高
  • 株安(物価安)、債券安 -> 中央銀行による資産購入 -> 株高、債券高

この場合、投資家の取りうる行動は、当局の指示する方向へとポジションを取ることである。行き過ぎは市場の調整によって是正され、相場はある程度の安定とともに上昇してゆく。

しかし、当局と投資家との協調は永遠に続くものではない。中央銀行は債券を永遠に買い続けることはできず、投資家もそれを知っているからである。

現在先進国の金利が低位で安定しているのは、投資家が将来的な債券相場の下落を懸念していないからではなく、空売りにはコストがかかるからである。年間利回り1%の債券を1年空売りするためには、年間1%の損失を受け入れなければならない。中央銀行による債券買い入れが少なくとも1年は続くと考えられるなかで、損を受け入れながらショートポジションを持ち続けることは得策ではない。しかしこれは、投資家が今後空売りをしないことを意味するのではなく、投資家は皆、将来の金利上昇(債券下落)は不可避であると考えており、空売りの絶好のタイミングを待っているのである。

FRBによる量的緩和が終了した後も米国の金利が上昇していないのは、欧州の長期金利が低位安定しているからである。金融政策の違いがあるとはいえ、スペイン国債が米国債よりも大幅に信頼されるような状況は自然ではなく、ECBの政策が緩和的である現状では米国債にも買いが入らざるを得ない。しかし、すべての中央銀行が緩和を止めなければならない時が、この相場の終わりである。

中央銀行が支配する相場においても、証券価格を決定する究極の要因は需給であり、当局がいくら相場の安定に尽力すると約束したところで、自身の債券買い入れ終了という需要の減少を打ち消すことはできない。金利の上昇は当局もある程度覚悟している事柄ではあるが、問題は緩和終了後、債券安が行き過ぎた場合である。

量的緩和が続いている間、投資家が株安によって当局への催促相場を演じたとしても、空売りは結局当局の介入による株高によって罰せられる運命であった。しかし、ある程度の金利上昇が不可避である状況下では、債券の空売りによる追加緩和の催促は罰せられることがない。

  • 債券安 -> 中央銀行による資産購入 -> 債券価格の安定、株高

債券への売り圧力が高まれば高まるほど株式市場は高騰することとなり、多くの投資家が債券から株式へと乗り換えようとするだろう。このような催促を罰することは容易ではなく、こうなれば当局は投資家をコントロールする手綱を失ったも同然である。

  • 追加緩和 -> 債券価格の安定、株式市場の暴騰
  • 追加緩和なし -> 株式市場の安定、債券安

このような循環の終着点は株の上がり過ぎか経済恐慌である。中央銀行は株式市場におけるバブルを是認しない場合、債券安(金利上昇)を認めなければならず、上がり過ぎた金利は金融引き締めとなって経済成長を停めるからである。この場合もいずれにせよ最終的には株式市場のバブルの崩壊をもたらす。

このシナリオは近日中に起こるものではない。日銀の量的緩和はいまだ終わりが見えず、欧州はこれから量的緩和を行おうとしている。少なくとも2-3年は世界的な株高、債券高が継続すると思われる。しかし投資家は常に、この最後のシナリオを意識しながら投資しなければならないだろう。相場の天井は、すべての市場参加者が強気に転じた時である。多くの投資家が慌てて策を練ろうとするときには、市場は坂道を転げ落ちていることになるだろう。