引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のBloombergによるインタビューである。
今回はFed(連邦準備制度)の金融政策と米国債の動向予想について語っている部分を紹介したい。
長期米国債の動向
前回の記事でガンドラック氏は、アメリカの長期国債の値動きがもはや安全資産とは言えない状態になっていると指摘していた。
普通ならばリスクオフで国債に資金が流入するような状況でも、米国債が下落し金利が上昇する状況になっているからである。
4月の株安で株価と米国債とドルがすべて急落したのは、長年相場にいる機関投資家には衝撃的だった。
その原因はアメリカの財政赤字である。株価は戻ったが、財政赤字の問題はまだ何も解決されていない。
だからガンドラック氏は次のように予想している。
Fedが利下げしたり、経済が大きく減速したりしても、長期国債の金利は上がり続けるのではないかという考えに達している。
長期米国債を買うべき瞬間
だからガンドラック氏は長期国債に弱気である。価格は下落を続け、金利上昇は止まらないと予想している。
しかし同時に、ガンドラック氏は次のように言っている。
だが投資家が方向転換しなければならない瞬間が来る。Fedがやり方を変える瞬間が来るからだ。
それがどういう形になるかについては様々なシナリオがあるが、メインシナリオの1つは量的緩和だ。
今のところ、Fedは利下げをするかしないかという議論だけをしている。そして利下げさえ何ヶ月も停止されたままである。
だがガンドラック氏は、いずれ利下げどころか、長期国債を直接買い入れる量的緩和をしなければならなくなる瞬間が来ると予想している。
ガンドラック氏は次のように述べている。
いつか金利が耐えられないほど高くなる瞬間が来る。どれくらい高くなるか? 6%と予想しておこう。
現在、アメリカの長期金利は4.4%である。長期金利のチャートを載せておこう。

かなりの金利上昇ということになる。ガンドラック氏は、そう予想する理由を次のように述べている。
景気後退になれば、財政赤字は5兆ドルまで膨らむだろう。そしてその分の国債を発行しなければならなくなる。
だからFedは方向転換せざるを得なくなる。
結論
ガンドラック氏は、次のアメリカの景気後退で財政赤字が大きく膨らみ、大量の米国債発行に債券市場が耐えられなくなって、中央銀行がそれを買い入れるしかなくなると予想しているのである。
だからガンドラック氏は次のように述べている。
そうなった場合、投資家は急いで長期国債を出来るだけ多く買わなければならない。
もしそうなれば、コロナ禍でFedが社債を買い入れると宣言した時のようになるからだ。20%下がっていた社債が数日で元に戻った。
長期国債の価格も20%上がる可能性がある。量的緩和で金利が1%下がるだろうからだ。
確かに、どんな状況でも中央銀行が紙幣印刷で米国債を買い入れれば、米国債の価格を支えることができる。
だがその時に犠牲になるのはドルである。量的緩和は、ドルを犠牲にして米国債を助けるための手段である。
Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想している基軸通貨ドルの衰退がどんどん現実のものとなってきている。
そしてその代わりにゴールドが暴騰しているのである。

世界秩序の変化に対処するための原則