ますます流動性相場の様相を見せる世界の金融市場

連日報じている通り、世界のあらゆる金融市場は画一的な動きを見せるようになっている。例えば米国株と原油価格がこれほど密接な相関関係を見せるのは、その2つの市場がともに急騰しともに暴落した2008年以来のことである。そしてその相関はメジャーな市場だけではなく、ビットコインなどの価格動向にも及んでいる。

何度も書いている通り、この奇妙な相関関係に着目することは今後の金融相場を予想する上で非常に重要になる。

ファンダメンタルズ相場から流動性相場へ

繰り返しになるが、世界の金融市場は通常、それぞれ別の動きを見せている。米国株は米国の企業利益の増減に反応し、原油価格は原油の需要と供給に反応する。しかし、2018年の相場では全く別々のチャートが同じような動きを見せている。以下は米国株である。

そしてこれが原油相場である。

特に2月の急落後はほとんど同じような形をしている。しかしこれらは本来別々に動くべきチャートなのである。

これが何を意味しているかと言えば、これは投資家が2018年における世界的な資金の流れ(つまり流動性)を織り込もうとしている過程なのである。つまり、経済のファンダメンタルズに基づいた相場が、流動性相場へと変わろうとしている。

低金利の幻想はいつまで続くのか?

アメリカはリーマン・ショック以来初めて金融引き締めを行なっている。金融引き締めとは市場から資金を引き揚げる政策である。しかし世界の市場は1980年以来、金利が長期的に下がること、つまり中央銀行が市場に資金を供給し続けることを当たり前のものとして考えてきた。だからアメリカが利上げと量的引き締めを行なっていても、資金の供給はまだ続くと思い込んだ市場は、本当の限界が来るまで上昇を止めないのである。

このことは株価上昇とドル安が連動していることと符合している。つまり、アメリカが紙幣を無限に刷ってくれることを市場が夢見ようとすれば、株が上がり、原油も上がり、ドルが下がる。緩和が行われていないどころか、逆に資金が引き揚げられているのに、そうなる。そういう相場なのである。

例えば、ドル相場全体の状況を示す1つの指標であるドル建て金価格(上がればドル安、下がればドル高)は、株安と同じタイミングで下落し、株価の反発と同じタイミングで上昇している。

米国株のチャートと比べてみよう。

ゴールド以外の通貨では、例えばポンドドルも似た動きになっている。

ユーロドルはより平坦な動きとなっているが、短期的な上下動のタイミングは同じである。

そして株式市場や原油などのコモディティ市場、ドル相場以外には、例えば筆者が昨年から空売りしているジャンク債も同じことである。

すべての市場が繋がっているのである。

しかし唯一こうした動きに連動していないものがある。それは、本来全ての市場に影響を及ぼすはずのアメリカの長期金利である。

株安につられることなく一直線に上昇している。そしてこれこそが、2月の世界同時株安の原因となったのである。

長期金利はどうなるか?

2月上旬の株安は確かに長期金利の上昇を警戒して株価が下落したものだった。国債の金利が上がれば、投資家は株式ではなく国債に投資しようとし、リスク資産から資金が流出する。こうした状況を見たBridgewaterのレイ・ダリオ氏は、年始の株高予想を撤回した。

しかし、現状では株式市場は反発している。これをどう考えるかである。

先ず、投資の一般原則として、バブルの天井を当てようとしてはならない。世界一の経済大国アメリカが強力な金融引き締め政策によって市場から資金を引き揚げようとしているにもかかわらず、市場は緩和があった時のような相場が続くと思い込んでいる。それはバブルなのだが、バブルだからこそ、それがここで終わると考えるべきではないのである。

より確かなのは、金融引き締めが直接的に作用する金利の動向である。市場の主観的な金融引き締めの織り込みが顕著に現れるのは長期金利であり、もし市場の楽観がもう少し続くのであれば、長期金利が一旦下落するシナリオもあるかもしれない。

しかし確かなのは、長期金利の高騰が収まり株式市場も下落しなければ、アメリカは確実に利上げを続け、短期金利は押し上がるということである。

利上げを織り込んだ2年物国債の金利は2.25%まで上がっており、長期金利の2.87%までそれほど距離がない。つまり、短期的に市場がどう楽観しようとも、中長期的には金融市場に問題がなければ短期金利は予定通り上昇し、短期金利の上昇は有無を言わせず長期金利を押し上げるということである。

ここで賭けるべきは、やはり市場の楽観に左右される銘柄ではなく、長期金利の上昇に愚直に反応する銘柄ということになる。つまりは筆者が空売りしているジャンク債や、あるいはアメリカの超長期債辺りになるのだろう。

結論

この状況で投資家が甘く見るべきではないものが2つある。1つは長期金利の上昇であり、もう1つは市場の楽観である。

特に市場の楽観は甘く見るべきではない。著名ファンドマネージャーがバブルを空売りしようとしてタイミングを誤り、踏み上げられた例はいくらでもある。プロ中のプロでもタイミングは非常に難しいのである。

一方で、2008年に株価と不動産価格のピークがずれたように、バブル崩壊のタイミングは銘柄や指標によって数ヶ月分ずれるのが普通である。

だからこうした状況で投資家が考えるべきは、株式がバブルかどうかではなく、一番最初に下落するのは何かということである。筆者はそれは先ずジャンク債であると考えている。株式市場はそれより遅れるだろうが、それはいつだろうか。

市場の楽観は正直呆れるほどである。量的緩和にあれほど強烈に反応した市場が、量的引き締めを完全に無視している。

しかし金利低下というトレンドが何十年も続いた後であれば、それも仕方ないのかもしれない。金融業界でも金利上昇相場を経験したことのある人間はかなり少数派となってしまった。だから筆者は市場の楽観の持続性を甘く見ないこととする。しかし、同時に長期金利も甘く見るべきではないのである。

読者のポートフォリオはその両方に耐えられるだろうか?