「現金はゴミ」発言のレイ・ダリオ氏、リスクオフできず新型コロナ株安で20%損失

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がどうやら新型コロナウィルス株安で大損しているらしい。報道によればBridgewaterのPure Alpha Fund IIは年始から20%ほど急落しているらしく、これほどの損失は彼のキャリア上なかなか無いのではないか。

ダリオ氏の2020年の相場観

彼の年始の相場観を振り返ってみよう。以下は1月のダボス会議における彼の発言である。当時は株式市場が特に理由もなく力強く上昇しており、多くの投資家が乗り遅れた列車に乗り込もうとしていた。

誰もが乗り遅れたため、誰もが乗ろうとしている。

現金はゴミだ。現金から離れるべきだ。いまだ多くの資金が現金のままになっている。

何とも力強いリスクオンの姿勢ではないか。また、列車に乗るとしてもいつ降りるのかと聞かれ、彼は次のように答えていた。

列車から降りるとは言うが、降りて何処に行くかが問題だ。現金を逃避先に選ぶことはできない。現金はゴミだ。中央銀行が紙幣をいくらでも印刷している。

だから現金以外の資産に資金が流れ込むという理論である。そしてその後米国株はこうなった。

思い出される2018年

ちなみに彼は2018年のダボス会議でも同じようなことを言っていた。

あらゆる場所に現金が積み上がっている。投資家の現金だけではなく、銀行や企業も大量の現金を抱えている。だから市場はこれから大量の現金に溺れることになる。それは強力な緩和となり、市場は恐らく吹き上がることになるだろう。言葉を変えれば、現金をそのまま保有している投資家は馬鹿を見ることになる。

ダリオ氏は現金に恨みでもあるのだろうか。そして2018年1月のこのダリオ氏の発言の直後に株式市場はこうなった。

中央銀行の総裁たちといい、最近は金融市場でコメディが流行っているようである。

ダリオ氏の反省

さて、今の状況をダリオ氏はどう思っているのだろうか。ダリオ氏はFinancial Timesのインタビューで次のように述べている。

ウィルスをどう扱うべきか分からなかったので、扱わないことを選んだ。われわれはウィルスの専門家ではなかったので、上手くトレード出来ないと思ったからだ。

結果としてポジションを維持することとなったが、振り返ってみればリスクをすべて排除するべきだった。

ダリオ氏にこのようなことを言うことになるとは思わなかったが、投資家は分からないものに投資をしてはならない。投資対象に自分にとって専門外のリスクが生じたならば、即座に手仕舞うべきなのである。

Financial Timesにおけるダリオ氏は完全に反省会ムードである。彼は2008年のリーマンショックで10%近い利益を上げたことを思い出し、次のように述べた。

こうした相場ではお金を失うべきではなく、2008年にやったようにお金を儲けるべきだったのに、こうなってしまったことは残念だ。

残念である。

結論

しかしダリオ氏は今回の下げ相場の間に投資家にとって有益なアドバイスを立て続けに投稿している。

一般的にはこうした一生に一度のレベルの災害はまず最初に過小評価され、そして状況が進むにつれて過大評価される。そしていずれファンダメンタルズが逆回転し始める(例えばウィルス感染が拡大から縮小になる)。

事実状況はその通りになっているし、感染者数もいずれその通りになるだろう。

何故ダリオ氏はこうした有益な相場観を自分のファンドのパフォーマンスに活かすことが出来なかったのか? それも1回ではなく、2018年の時も同じである。

常々思っていたのだが、ダリオ氏は非常に優れたアナリストでありながらトレードが上手く出来ない、ジム・ロジャーズ氏のようなタイプではないのか? クォンタム・ファンドではロジャーズ氏がアナリストをやり、ソロス氏がトレーダーをやっていた。ロジャーズ氏は自分を自ら「最悪のトレーダー」と呼び、トレーディングをすべてソロス氏に任せていたのである。この役割分担についてはロジャーズ氏自身が語っている。

ダリオ氏にはソロス氏のように動物的な勘で自分の分析をトレードに活かしてくれるトレーダーが居ないのだろう。しかしそれでもダリオ氏の非常に整理された相場観は今でも投資家の役に立つものばかりである。どれも的確にあたっている。

幸いわれわれはBridgewaterの顧客ではなく、彼の相場観を読んで参考になる部分だけ参考にすれば良い立場にある。投資家の最大の長所は自由である。