新型コロナウィルス、ヨーロッパ各国の感染者数のピークはいつか

新型コロナウィルス肺炎がヨーロッパで大流行している。一番感染者数の多いイタリアでは3万人に届こうとしている勢いであり、数千人規模の国も数多い。

西洋諸国を中心に回っている金融市場ではヨーロッパで流行が始まった辺りから本格的な下落相場が始まった感があり、金融緩和でも止められなかった株安を止められる可能性があるとすれば、それはやはり流行自体がヨーロッパとアメリカでピークを迎えることだろう。

そこで、ここで一度各国の流行状況を纏めてみたい。まずは現在感染が一番広がっているヨーロッパからだろう。特に感染の多いイタリア、スペイン、ドイツ、フランスについて感染者数の推移と日毎の増加数と増加率、隔離措置の状況などを纏めてみた。まずはイタリアから見てみたい。

イタリア

イタリアの感染者数は27,980人である。

  • 2020-03-01: 1,694 (+556 +50%)
  • 2020-03-02: 2,036 (+342 +20%)
  • 2020-03-03: 2,502 (+446 +23%)
  • 2020-03-04: 3,089 (+587 +23%)
  • 2020-03-05: 3,858 (+769 +25%)
  • 2020-03-06: 4,636 (+778 +20%)
  • 2020-03-07: 5,883 (+1,247 +27%)
  • 2020-03-08: 7,375 (+1,492 +25%)
  • 2020-03-09: 9,172 (+1,797 +24%)
  • 2020-03-10: 10,149 (+977 +11% 不必要な外出の禁止)
  • 2020-03-11: 12,462 (+2,313 +23% 生活必需品以外の全店舗を閉鎖)
  • 2020-03-12: 15,113 (+2,651 +21%)
  • 2020-03-13: 17,660 (+2,547 +17%)
  • 2020-03-14: 21,157 (+3,497 +20%)
  • 2020-03-15: 24,747 (+3,590 +17%)
  • 2020-03-16: 27,980 (+3,233 +13%)

欧州最大の感染地となっているイタリアだが、このデータを見る限りでは3月9日の外出禁止と店舗の閉鎖の措置はある程度奏功しているように見える。感染者の増加率は着実に減少しており、増加数も3000人台で頭打ちしているように見える。外出禁止と店舗の閉鎖の措置は有効ということらしい。

流行のピークを判断するために重要なのは増加率より増加数であり、増加数が減少に転じたところを流行のピークと定義したい。16日は特に増加率が低かったが、増加数がこのまま3000人程度で収まるのであればイタリアではもしかするとこの辺りがピークになるのかもしれない。そうなれば、移動制限と店舗の閉鎖を行えば1週間ほどで流行はピークに達するという例が出来ることになり、周辺国の動向予測にも役立つ。今後数日のデータが待たれるところである。

スペイン

スペインの感染者数は9,942人である。

  • 2020-03-01: 85 (+26 +44%)
  • 2020-03-02: 121 (+36 +42%)
  • 2020-03-03: 166 (+45 +37%)
  • 2020-03-04: 228 (+62 +37%)
  • 2020-03-05: 282 (+54 +24%)
  • 2020-03-06: 401 (+119 +42%)
  • 2020-03-07: 525 (+124 +31%)
  • 2020-03-08: 674 (+149 +28%)
  • 2020-03-09: 1,231 (+557 +83%)
  • 2020-03-10: 1,695 (+466 +38% イタリアからの全直行便をキャンセル)
  • 2020-03-11: 2,277 (+582 +34%)
  • 2020-03-12: 3,146 (+869 +38%)
  • 2020-03-13: 5,232 (+1,086 +66% 生活必需品を除く全店舗の閉鎖)
  • 2020-03-14: 6,391 (+1,159 +22% 不可欠な活動を除くすべての移動の禁止)
  • 2020-03-15: 7,988 (+1,597 +25%)
  • 2020-03-16: 9,942 (+1,954 +24%)

スペインの感染者数の増加率はイタリアに比べ深刻である。スペインでは当初、感染者が数千人規模になっても国民はほとんど気に留めず、大規模な集会が行われたり社会行動も平時のままだった。

状況が一変したのは3月13日・14日の強制隔離が行われてからであり、その後は周辺諸国と同じ程度の増加率となっている。

伸び率は激減してはいるが、スペインの場合は隔離措置が劇的に効いたというよりはそれまで国民があまりに気に留めていなかったという方が正しいだろう。それでも20%台の増加率は周辺諸国に比べてやや高い。増加数については増え続けており、まだまだピークとは言えないだろう。

ドイツ

ドイツの感染者数は7,272人である。

  • 2020-03-01: 117 (+51 +77%)
  • 2020-03-02: 151 (+34 +29%)
  • 2020-03-03: 188 (+37 +25%)
  • 2020-03-04: 240 (+52 +28%)
  • 2020-03-05: 349 (+109 +45%)
  • 2020-03-06: 534 (+185 +53%)
  • 2020-03-07: 684 (+150 +28%)
  • 2020-03-08: 847 (+157 +24%)
  • 2020-03-09: 1,112 (+265 +31%)
  • 2020-03-10: 1,565 (+453 +41%)
  • 2020-03-11: 1,966 (+401 +26%)
  • 2020-03-12: 2,745 (+779 +40%)
  • 2020-03-13: 3,675 (+930 +34%)
  • 2020-03-14: 4,585 (+910 +25%)
  • 2020-03-15: 5,813 (+1,228 +27%)
  • 2020-03-16: 7,272 (+1,459 +25% 近隣国との国境閉鎖)

ドイツについてはイタリアやスペインほどの措置は取られていない。国境の閉鎖も15日にようやく発表された。スペインとはそれほど感染者数が違わないが、スペインの場合は強制措置を取らなければ大規模な集会など感染リスクの高い行動を国民が取り続けたために強制的な措置を行ったと言うべきなのだろう。

ドイツでは全国的な措置以外では州ごとに対策が取られている。全店舗の閉鎖ほどではないが、公共施設はある程度閉鎖されているようである。しかし全店舗閉鎖措置は遅かれ早かれドイツにもやってくると思われる。どうせやる必要があるなら早いほうがダメージが少ないのだが、手遅れになってから初めて手を付け始めるのは全世界の政治家共通である。

増加数も着実に増えており、こちらもピークとは言い難い。感染者数がもっと増えてから店舗の閉鎖や移動制限などが行われ、そこからピークに向かうのだろう。まだ時間がかかりそうである。

ただ、ドイツの凄いところは死者数が17人と非常に少ないことであり、イタリアの死者数2,158人、フランスの148人と比較しても1桁違うだけではなく、感染者数が1桁少ない日本の死者数27人よりも少ない数となっている。残念ながらこの功績は金融市場にはあまり影響しないだろうが、ドイツの医療関係者には頭の下がる思いである。

フランス

フランスの感染者数は6,633人である。

  • 2020-03-01: 130 (+30 +30%)
  • 2020-03-02: 191 (+61 +47%)
  • 2020-03-03: 212 (+21 +10%)
  • 2020-03-04: 285 (+73 +34%)
  • 2020-03-05: 423 (+138 +48%)
  • 2020-03-06: 613 (+190 +45%)
  • 2020-03-07: 949 (+324 +55%)
  • 2020-03-08: 1,126 (+177 +19%)
  • 2020-03-09: 1,412 (+286 +25%)
  • 2020-03-10: 1,784 (+372 +26%)
  • 2020-03-11: 2,281 (+497 +28%)
  • 2020-03-12: 2,876 (+595 +26%)
  • 2020-03-13: 3,661 (+785 +28%)
  • 2020-03-14: 4,499 (+838 +23% 一部公共施設の閉鎖)
  • 2020-03-15: 5,423 (+924 +20%)
  • 2020-03-16: 6,633 (+1,210 +22%)
  • 2020-03-17: (不必要な外出の禁止)

フランスでは3月17日から外出禁止令が施行される。ドイツよりも早い措置である。数日のデータだが公共施設の閉鎖が功を奏しているように見え、これは隔離措置自体の影響というよりはスペインのケースのように措置によって危機感が醸成され、国民の意識が変わってきたからだろう。日本で感染予防が周知された結果通常のインフルエンザの罹患率が減少したように、結局は個々人の衛生観念が一番ものを言うのかもしれない。

17日の外出禁止令が既に下がり始めている増加率を更に減少させるのかが注目される。増加数についてはまだねずみ算式に増えており、ピークとは言えない。

結論

以上がヨーロッパで感染者数の多いイタリア、スペイン、ドイツ、フランスの状況である。フランス以降ではスイスで2,353人、イギリスで1,543人、オランダで1,417人等々となっている。欧州全体では相当な数である。

イタリアでは既にピークに向かいつつある兆しが見られている。やはり外出禁止と店舗の閉鎖は効くのだろう。後を追うスペイン、ドイツ、フランスがイタリアよりもおよそ1週間分ほど遅れていることを考えれば、イタリアが今週ピークを迎えると想定した場合、スペインなどのピークは来週ということになる。他の国々がそれに続くことを考えると、欧州全体でのピークは3月末か4月初めだろう。

震源地となった中国では既に感染者数が減少していることもあり、1月から始まった新型コロナウィルス肺炎でようやく収束の兆しが見えてきたようにも思える。

金融市場には中央銀行の失策によって新型ウィルス以外の問題も出てきてしまっているのだが、それについては前回の記事で説明しているので、そちらを参考にしてほしい。

また、金融市場にとって何より重要なのはやはりアメリカでの流行状況なので、そちらも遠からず纏めるつもりである。