米国株と長期金利に不穏な気配、ドルの動向は

アメリカが利上げとマネタリーベース縮小という金融引き締めを進めようとする中、米国株と長期金利の動きがやや不穏である。

長期金利上昇が暗喩する株安

最初に変化のあったのは長期金利である。トランプ政権の経済政策への期待後退から低迷していた長期金利が、ここ数日で急上昇している。

金利が上がれば、投資家には株式を保有するよりも金利収入を得ようとするインセンティブが強くなるため、株式市場にはネガティブな要因となる。以下はS&P 500のチャートだが、ここ数日の米国株が安定しないのはそれが理由である。

欧州株などはもっとあからさまで、こちらも長期金利が急上昇したからだが、ドイツの株価指数DAXなどはより激しい急落となっている。

株高は続くのか?

トランプ政権の法人減税を頼りに上昇を続けている米国株だが、長期金利が高騰すればただでは済まない。しかしFed(連邦準備制度)のイエレン議長がバランスシートの縮小、つまり量的緩和の逆戻しの年内開始を示唆してから、市場はそれをある程度織り込もうとしている。ここまでは以下の記事で書いた通りである。

しかし問題は、イエレン議長が実際に金融引き締めを何処まで行うのかということであり、株式市場の命運はそれによって決まると言えるだろう。

Fedは現在、利上げとバランスシート縮小という二つの方法で金融引き締めを行おうとしているが、先ず利上げの方は行き詰まっている。これは長期金利が下がっているからであり、Fedが直接操作している短期の政策金利が長期金利に近づいている。

だから、Fedの次の手は恐らく利上げではなくバランスシート縮小(より長期の国債の保有削減)だろう。あるいは、長期金利が高騰すれば利上げとなるかもしれないが、どちらにしても長期金利が上昇するシナリオとなる。

但し、Fedによるこれらの金融引き締めを市場が受け入れなければイエレン議長は引き締めを停止するだろうが、「市場が受け入れない」とは株式市場の暴落を意味するのであり、幸か不幸か、株式市場は長期金利が低く抑えられている限り多少の上下はあっても暴落はしないのである。

結論

だから、どう転んでも長期金利はここから上昇してゆくことになる。ガントラック氏の言う通りである。

その結果は先ずドル高になるだろう。そして株式市場がどう反応するかは、長期金利が2.8%-3.0%のレンジに到達するかどうかによる。このレンジが決壊すれば、個人的にはロシア株の絶好の買い場になると見ている。

また、他の市場がどうなるかということについては、以下の記事を参考にしてほしい。ジム・ロジャーズ氏が空売りするジャンク債も、ある程度の揺さぶりを受けることになるだろう。