世界同時株安に対するトランプ大統領の見当違いなコメント

アメリカ発の世界同時株安で市場がやや荒れているが、その中でこれまで株高を自分の手柄として自慢してきたトランプ大統領がTwitter(原文英語)で株価下落に対して見当違いのコメントをしている。

景気と株式市場

先ず、米国株の急落は少し進んで次のようになっている。

そして、この状況を見たトランプ氏のツイートは以下の通りである。

過去においては、良いニュースが報じられると、株式市場は上昇してきた。しかし今では、良いニュースが報じられると、株式市場が下がってしまう。大きな間違いだ。そしてアメリカ経済にはこれほどまでに素晴らしいニュースが揃っている。

しかしこの理屈自体が大きな間違いである。経済成長と株式市場との間に直接的な関係は一切ない。重要なのは、株式市場に資金が入ってくるかどうかである。事実、リーマンショック直後は世界経済が停滞したが、中央銀行が量的緩和によって市場に資金を供給したことで株価はずっと上昇してきたのである。

この考え方は、投資家にとっては当たり前のことである。例えばトランプ相場初期に誰よりも早く経済成長を予想したのは、かつてジョージ・ソロス氏のもとで働いていたファンドマネージャーのスタンリー・ドラッケンミラー氏だが、彼はその予想をもとに株式を買っただろうか? 彼は2016年11月にこう言っていた。

わたしは経済成長に大きく賭けている。何をしているか? 世界中で債券を空売りしている。わたしはバブルを空売りしている。ドイツ国債を、イギリス国債を、イタリア国債を、アメリカ国債を空売りしている。

経済成長に反応しやすいセクターの株式を好む。経済全体の成長に敏感ではない株式は好まない。

ファンドマネージャーにとって、経済成長に賭ける場合の当たり前の選択肢は債券の空売りであって、株式の買いではない。その後、米国株は上昇したが、その理由は法人減税によって企業利益が増加することであり、GDP成長率が変化したことではなかった。

結論

よって、トランプ大統領が言うような景気と株式市場の関連性は存在しないのである。だからこの状況下で株式市場に強気のレイ・ダリオ氏でさえ、株高予想の理由は決して景気ではない。

あらゆる場所に現金が積み上がっている。投資家の現金だけではなく、銀行や企業も大量の現金を抱えている。だから市場はこれから大量の現金に溺れることになる。それは強力な緩和となり、市場は恐らく吹き上がることになるだろう。言葉を変えれば、現金をそのまま保有している投資家は馬鹿を見ることになる。

政治家は、金融市場のことを何も知らないならば、黙るべきなのである。しかし、何処の国を見ても、それだけのことがよほど難しいらしい。不思議な世界である。