世界最大のヘッジファンド: 現金はゴミじゃない

「現金はゴミ」の発言で有名な世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が、Twitter上で現金はゴミではないと主張しているので紹介したい。

「現金はゴミではない」

ダリオ氏は今年、Fed(連邦準備制度)による金融引き締めで金融市場が大荒れになり、またインフレ激化で現金の価値が目減りすることを正しく予想した。その時の有名なフレーズが「現金はゴミ」「株式はもっとゴミ」である。

だがダリオ氏の10月4日のツイートによれば、彼は意見を変えたようだ。彼は次のように述べている。

ジョン・メイナード・ケインズは「事実が変わったとき、わたしは意見を変える。あなたはどうする?」と言ったとされる。この格言に従い、事実が変わったので、わたしも意見を変えたい。現金はもはやゴミではない。

何故か? Fedの利上げのお陰でドルには少なからぬ金利が付くようになったからである。厳密に言えば現金というよりは預金だろう。現金には金利は付かないが預金には金利が付く。

そして短期金利が4%まで上がった今、ドル預金には馬鹿にできない金利が付くのである。2年物国債の金利は今以下のように推移している。

短期金利の上昇

このダリオ氏の発言はタイムリーにも筆者の預金礼賛記事とほぼ同じタイミングで出た。

短期金利がここまで上がってきた状況では、専門家は誰でも同じことを考えるようである。

この記事で筆者が預金を薦めたのは、インフレの局面において中央銀行がインフレを軽視しない場合、政策金利はインフレ率にほぼ並行して推移するからである。1970年代の物価高騰時代における2つの数字の推移を再び掲載しよう。

したがってインフレで利上げを行うまともな中央銀行を持った国の場合、インフレが生じても預金をしていればインフレによる現金の減価とほぼ同じ分の金利収入を得られるので、多くの国民にとってインフレは問題ではない。

債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏なども預金に似た変動金利への投資を薦めている。金利がここまで上がってこれば、やはりそう考えるだろう。

金利の水準は中立か

一方、ダリオ氏がこの水準で金利をある程度魅力的だと認めたことには、彼の金融政策に関する相場観が現れている。

彼は続けてこのようにツイートしている。

現在の金利と中央銀行のバランスシート縮小を考えれば、今は現金に対して中立だ。それほど良くも悪くもない。言い換えれば、現在の短期金利は大体適切だ。

ダリオ氏は金利水準について以前どのように語っていたか。以下の記事を思い出したい。

この記事で彼は、長期的なインフレ率の水準を4.5%から5%、妥当な実質金利の水準を0%から1%だと述べていた。

インフレ率と実質金利を足し合わせると名目金利になるので、ダリオ氏は今後の金利水準を足し算して4.5%から6%程度だと見積もっていたことになる。

現在の短期金利は上で述べたように4%強だから、金利が彼の適切だと考える水準に大体近づいてきたということだろう。

結論

これまで怒涛の勢いで上昇してきた金利が妥当な水準に近づいたということは、金利上昇で下落トレンドを続けていたゴールドの底値が近づいたということにもなる。

それは同じく金利上昇で下落してきた株式にもプラスになる可能性がある。

だが一方で、問題はダリオ氏がこの金利水準を長期的なものだと考えていることである。インフレが起こってしまった以上、中央銀行はインフレが落ち着くまで金利を一定期間この水準に保つ必要がある。

それはもう何十年も低金利を前提にしてきた企業の行動がこれから10年で根本的に変わることを意味する。筆者の予想では、この事実は企業利益に少なからぬ悪影響を与える。

つまり、高金利継続の悪影響はゴールドよりも株式に対して大きい。よって筆者は株式を空売りしゴールドを買い持ちにする両建てトレードに移行した。

ダリオ氏やガンドラック氏の反応を見る限り、専門家たちの金利への見方は筆者のものとほぼ同じのようである。だがとりあえずは来週のCPI(消費者物価指数)発表を待たなければならないだろう。