コロナ不況でデフレになる日本、インフレになるアメリカ

2020年は新型コロナウィルスで大変な1年だったが、周知のとおり株式市場は一度の急落を経験したあと2021年に入っても好調が続いている。

一度は株価下落を予想した著名投資家ジェフリー・ガンドラック氏も今では株式に強気な相場観を表明している。

相場が上昇している理由はトランプ政権が行なった莫大な財政政策と中央銀行による金融緩和が金融市場に資金を流入させているからである。

資金流入の代償

資金さえ流入させてしまえば株式市場は上がり、すべてが解決するのだろうか? ガンドラック氏ら株式市場の上昇を予想するファンドマネージャーらがその代償として指摘するのが物価の高騰である。しかし先進国経済は長らくのデフレに慣れてしまっており、インフレが起こると指摘されても多くの人がピンとこないだろう。

ではアメリカや日本の物価はどうなっているのだろうか? チャートを並べてみよう。まずはアメリカの消費者物価指数(CPI)である。経緯が分かりやすいように上昇率ではなく物価指数そのものを載せている。

右肩上がりである。最新の数字である12月のデータを前月比年率で見ると4.5%のインフレとなる。

これは11月から12月の物価上昇のペースが12ヶ月続けば年間のインフレ率は4.5%になるということであり、実際にはそこまでのインフレにはならないだろうが、10月以降のインフレ加速は目を見張るものがある。

しかもロックダウンのあった4月に一度落ち込み、そこから上昇しているこのチャートはあるものに似ている。米国株のチャートである。

これは政府による資金注入が金融市場とともにインフレ率を押し上げていることを示している。

金融緩和と現金給付がついにインフレを押し上げた

先進国はこれまで量的緩和など未曾有の金融緩和を行なってきたが、インフレ率が危険な水準まで上がることはなかった。しかし金融緩和と現金給付という新型コロナによる今回のアメリカ政府の対応はついにインフレ率を有意な規模で引き上げてしまったようである。

これは株価の上昇や店舗の売上の回復などを文字どおりには喜べないということを意味する。100ドル余分に儲かったとしても100ドルの価値そのものが減っている可能性があるからである。以前は100ドルで買えたものが200ドル出さなければ買えなくなる。

長らくデフレに慣れてしまった先進国の国民にはこの考え方は馴染みにくいかもしれないが、インフレがこのまま続くのであればそれは誰にとっても対処しなければならない現実となる。レイ・ダリオ氏は政府による資金注入が根本的な解決策にはならないと主張し、国民には自分の身は自分で守るように早くから警鐘を鳴らしてきた。

インフレが今後どの程度のものになるのかはまだ分からない。しかし紙幣をばら撒きすぎた国が警戒しなければならないのは物価高騰と為替レートの暴落である。物価高騰については去年からここでも警鐘を鳴らしておいた。

まだ警戒するべきレベルの物価高騰ではないと思った読者もあっただろうが、既に兆候は見受けられていた。金融市場は実体経済に先行するからである。

そしてドル暴落の可能性についてはガンドラック氏、ダリオ氏の両氏が警戒している。

日本はインフレに成るか

では日本はどうだろうか? 日本の消費者物価指数は次のようになっている。

下落トレンドである。注入された資金がアメリカほどではなかったということなのだろう。チャートは10月までのデータだが、続く11月でも更に下落となっており、アメリカのように上昇トレンドとはなっていない。

それを喜ぶべきなのかどうかは読者の判断次第だろう。貧富の差の激しいアメリカで物価の高騰と株価の上昇が起こった場合、すでに暴動が起こっているアメリカの政治的混乱が更に激しいものとなることが予想される。

日本はまだそこまで行っていない。しかし、まだそこまで行っていないだけである。