ドラッケンミラー氏、株安予想の通り米国株の買いを縮小

引き続き機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はかつてジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたスタンレー・ドラッケンミラー氏のDuquesne Family Officeである。

ドラッケンミラー氏の買いポジション縮小

ここまではジョージ・ソロス氏とレイ・ダリオ氏のファンドのポートフォリオを紹介してきた。そして米国株が史上最高値を更新する中、両者とも米国株の買いを拡大していた。

しかしその一方、ドラッケンミラー氏は買いを縮小している。Form 13Fに掲載されているポジション総額は39億ドルから35億ドルに減額されている。

ドラッケンミラー氏は6月、インフレ率の上昇からFed(連邦準備制度)が金融引き締めを余儀なくされ、その結果株価が調整すると予想していた。

Fedはまだ利上げとテーパリング(量的緩和縮小)を示唆した段階に過ぎない。だからドラッケンミラー氏も全面的なリスクオフのポートフォリオには見えない。しかし徐々に撤退し始めたということだろう。

一方でソロス氏とダリオ氏はアクセルを踏んでいる。株式市場への投資はいつもチキンレースである。米国株は基本的には上がり続けるが、下落する時には一気に暴落するからである。だから常に「いつまでアクセルを踏み続けるか」の問題なのである。

ドラッケンミラー氏のハイテク株投資

さて、全体としては買いを縮小したドラッケンミラー氏だが、個別株はどうなっているだろうか。2021年のドラッケンミラー氏と言えば、ハイテク株投資である。彼はコロナ以後ハイテク株に大きく投資している。

今回のポートフォリオでもハイテク株投資は維持されている。しかし内容が少し入れ替わっている。まず、最大ポジションのMicrosoftは5.0億ドルから4.0億ドルに減額された。

ここまでドラッケンミラー氏に大きな利益をもたらしてきたMicrosoftだが、株価収益率が36まで上がっていることもあり、少なくとも割安ではなくなったということだろうか。しかしまだまだ最大ポジションであることには変わりはない。

一方で増額されたのはAmazon.comである。2.3億ドルから3.2億ドルに増額されている。

上昇していたMicrosoftから横ばいを続けていたAmazon.comに乗り換えたということだろう。どちらにせよクラウド銘柄であり、将来性があることは間違いない。

問題はいくらの株価で買うかである。Amazon.comはソロス氏も買っていた銘柄だが、残念ながら決算後下落が続いている。

また、今回大きく増えているのがGoogleの親会社のAlphabetで、0.6億ドルから2.2億ドルの増額である。

GoogleもAmazon Web Serviceのようなクラウドサービスを行なっている。

こう見るとドラッケンミラー氏がクラウドサービスに全賭けであることが分かる。まだまだ旧来式のウェブサーバで運用されているウェブサイトも多い中、クラウドの伸び代はまだまだあるということだろう。また、コロナ禍のリモートワークがそれを後押しするともドラッケンミラー氏は述べていた。

結論

しかし全体としては米国株の買いは縮小されている。スコット・マイナード氏とドラッケンミラー氏が米国株に慎重、ソロス氏とダリオ氏が強気という構図になった。

すべてはFedの金融引き締めがどのようなペースで進むかということに尽きるだろう。株価が崩壊する臨界点は必ず存在し、問題はそこにいつ辿り着くかということである。

ギリギリまで賭けていられた投資家が一番儲けるということにはなる。しかし危ういものに賭けないこともまた投資である。

これは金融引き締めが進むにつれ株価が暴落した2018年の世界同時株安と同じ相場である。当時、金融引き締めが何処まで進んだ段階が天井だっただろうか? 今もう一度復習しておくことも悪くないだろう。