2015年4Q日本のGDP速報値内訳: 死んだ個人消費、輸出はドル円下落で遂にマイナス成長

2015年10-12月期の日本のGDP速報値が発表され、実質GDP成長率は前年同期比(以下同じ)で0.66%と、前期確報値の1.65%から減速した。内訳は非常に示唆に富んだ内容となっており、何が日本経済の問題で、何が日本経済をこれまで支えてきたのかが一目瞭然である。順に見てゆこう。

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チャートについては、繰り返しになるが、消費増税の行われた2014年4月を境に、上昇に向かっていた各数値のトレンドが下方向に折り曲げられていることに注目したい。先ずは個人消費から見てゆこう。

マイナス成長となった個人消費

先ずもっとも注目すべきは非常に弱い個人消費である。成長率は-1.07%と、前期の0.41%から大幅に減速してマイナスとなった。

前年同期比で見た消費増税後の個人消費は、消費増税前の四半期との比較となる最初の1年間は当然マイナスで経過したものの、その後は0.03%、0.41%とプラスで成長していたのだが、遂にマイナスへと転落してしまった。

もう遠い過去のことのようだが、アベノミクス後に曲がりなりにも消費が回復していたのはどのような経路だったか? 株高で株を保有する富裕層の消費が回復し、デパートなどの売上が伸びたのではなかったか?

では、2015年の最終四半期にはその株価には何が起きたのか? 以下は日経平均のチャートである。

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世界同時株安は2015年8月から始まっているが、トレンドが変わったと大勢が認識した最初の四半期が今回のものだと言えるだろう。少なくとも、株高を原因とする消費はこの四半期に減速したはずである。

この流れが確固たるものであれば、2016年の相場環境は日本のGDPにとって非常にきまりの悪いものということになる。これは輸出について説明した後に説明する。

投資が消費より良いことの意味

住宅投資は4.88%と前期の5.75%からやや減速、非住宅投資は3.81%と前期の2.34%とやや加速となった。いずれにせよ個人消費よりは良い数字となっている。

住宅投資の好調は当然ながら量的緩和による住宅ローンの低金利が効いているのである。1月のマイナス金利はドル円には効かなかったが、長期金利を下げる以上不動産価格にはある程度効くはずであり、今後も日本のGDPのなかで相対的な好調を維持するだろう。

一方で非住宅投資のほうは非常に好調とは言いがたいが、それでもしっかりと成長している。恐らくはこちらも低金利が信用の膨張に効いているのではないか。低金利でシェール企業の投資が進んだのと同じ構図である。

しかし、いずれにせよ、設備投資は個人消費か輸出が好調でなければ、単に無駄な供給を増やすだけになってしまう。個人消費は死んでいる。では輸出はどうなっているか?

輸出と同時に輸入までマイナス成長に

世界同時株安はリスクオフを通じて円高に働いているから、輸出が減速しているのは想定内だが、何と輸入までマイナス成長となっている。輸出は前期の3.11%から-0.93%、輸入は1.60%から-0.90%へとそれぞれ減速した。

輸出を支えていたドル円の上昇がここ半年ほど止まっているのは周知の通りであり、輸入の弱さは個人消費のマイナス成長とともに内需の弱さを示しているのだろう。

これではっきりしたと言えるだろう。アベノミクス後の経済の好調は株高による消費増と円安による輸出増の影響がほとんどであり、それが剥落すればこの結果だということである。

景気低迷の原因

ここで、ここの読者であれば思い出すことがあるはずである。それは以下の記事で詳しく説明した、長期停滞論者のラリー・サマーズ氏の指摘である。「長期停滞下における高成長は、持続不可能な資産バブルと信用膨張によって一時的に達成されているだけである」。

この記事で書いた、先進国経済の本当の問題を思い出してもらいたい。それは需要不足である。成長率の低下により投資に魅力がなくなり、消費者が貯蓄と債務返済に追われたとき、問題の根源である消費の低迷はあらゆる景気刺激の努力をもっても解決が非常に難しいものとなる。

昨年から主張してきたように、2016年のテーマはドル高反転であり、ドル円の下落が日本の輸出を低迷させることに加え、日経平均はドル円と連動するので、株高による消費増という効果も期待しづらいものとなる。消費と輸出の両方が低迷すれば、誰かにものを売るための設備投資も、いまは相対的には好調であるが、いずれ消費と輸出の方向性に引っ張られることになるだろう。

すべては消費から

日本に限らず、先進国経済の問題の本質は需要不足であり、消費者が消費をしないことである。ここまで考えれば、これまでの日本の経済政策の非常に奇妙な点に誰でも気が付くはずである。

消費増税とは何であったのか? 深刻な消費の減退が経済を蝕んでいる状況で、それを更に毀損する消費増税を行う愚か者が日本の財務省のほかに何処にいるだろうか? 政府債務削減の目標を総額ではなくGDP比で設定する経済学の常識を彼らはどのような素人の屁理屈で否定できたのか? 日銀も含め、これほどまでに素人集団が実権を握っている国は先進国では日本のほかには見つからないだろう。

財務省は遠からず解体されなければならない。そうでなければ日本が本当に滅んでしまう。日本の有権者は日本の本当の敵に気づかなければならない。それは政治家などではないのである。