世界最大のヘッジファンド: 世界大戦になればどの国に投資すべきか

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、Business Todayのインタビューで、戦争リスクのある中での投資対象国の決め方について語っている。

どの国に投資すべきか

アメリカ発の世界的なインフレが起こっている最中、どの国に投資すれば良いかは大きな問題である。アメリカは現金給付がもたらしたインフレで2023年は酷いスタグフレーションになることが予想されている。

一方で中国では習近平氏は経済を完全に諦めたようだ。経済成長よりも内部抗争を重視した結果、ゼロコロナ政策によって中国経済は完全に死んでいるし、習氏の考え方を考慮するとそれはどうも長期トレンドのように見える。

ヨーロッパは自滅している。石油も天然ガスも原子力も拒否した結果、彼らに消費すべきエネルギーが与えられないのは当然のことである。この地域は消費するためには生産しなければならないという当たり前のことを一番理解していない。

そして日本は国の莫大な借金を破綻させない代わりに国民が大量に保有する日本円の価値がなくなるシナリオが現実味を帯びてきた。短期的にはドル円はピークだが、長期的にはこれは不可避のシナリオだということにようやく人々が気付き始めている。一番まずいのは、インフレ率が本当に上がり始めているということだ。

投資する国の選び方

このような状況ではどの国に投資すれば良いか。特に、経済危機が戦争に発展するというダリオ氏の従来からの予想が当たっているだけにその問いは難しい。

東西の対立は悪化してゆくのか。ダリオ氏はこう言っている。

武力衝突になるかもしれない。それが不可避だと言っているわけではないが、国連や国際的な裁判所がこうした問題を解決できるわけでもない。こうした問題は争いで解決されている。

だが投資家は何処かにお金を置かなければならない。北極でもない限り、何処かの政府の管理下に置かれる。リベラルたちがホッキョクグマに優しいのはそのためかもしれない。

どの国に投資をするのが良いか。ダリオ氏は次のように語っている。

どういう影響を受けるかは国によって異なる。経済戦争であれ軍事衝突であれ、戦争に参加している国は参加していない国より多くの問題を抱える。

アメリカ、中国、ロシア、ウクライナは当事者である。EUと日本もアメリカ側で経済制裁に参加しているので、当然ながら戦争の当事者である。

この時点で先進国の大半が消えてしまう。永世中立を謳っているスイスでさえ制裁に参加しているのでアメリカ側で参戦している。スイスフランに賭けるのは良いが、資金の保管場所としてはアウトである。

10年前にアメリカにやられたのが効いているのだろう。もはやスイスは資金の保管場所ではない。

ダリオ氏の3つの指標

ダリオ氏は国を選ぶために3つの指標を考案している。彼はこう説明している。

中立性こそが重要だ。わたしが国を選ぶとき、3つの指標を使う。

最初は財政だ。その国は自分の収入以上に消費をしていないだろうか? 

現在のインフレの原因はコロナ後に行われた現金給付だが、ダリオ氏はもっと根本的な原因を、生産せずに消費しようとするメンタリティだと指摘している。

世の中は生産しなければ消費できないということが理解できない馬鹿たちにあふれている。それで現金給付のようなことが起きる。

ダリオ氏はこう続ける。

次は、国民が協調的な方法で国を運営しているかどうかだ。健全な競争はあっても良いが、政治的に機能不全に陥ってはいけない。

アメリカは恐らく、2016年にトランプ氏かクリントン氏かで喧嘩をして別れた夫婦が大量発生した時点でもう終わっていたのだろう。中国では裏では物凄い不和が起きているのだが、驚くべきことにまだ共産党は政府として成り立っている。

この点日本は条件を満たすだろう。所得税と社会保険税と消費税で収入の半分以上を天引きされ、東京五輪や全国旅行支援や短期トレーダーへの給付金などに使い込んでも国民は文句1つ言わない。素晴らしい国民性ではないか。自民党は喜んでもっと搾取するだろう。

一方、スイスでは国民だけでなく政治家も協調し、長期的には財政赤字のない国家運営を実現している。ヨーロッパの1国であることが惜しまれてならない。

さて、ダリオ氏はこう続ける。

3番目は、その国に戦争のリスクがあるか、あるいは中立に徹していて国家間の戦争と距離を置いているかだ。

この条件を満たすのはハンガリー、ブラジル、インドなどだろうか。最後の条件でほとんどの国が消えてしまうのである。

結論

投資家にとって、国選びというのは2つの意味がある。まずはどの国が経済的に成長し、投資対象として有望かということである。そしてもう1つは、どの国に資金を保管するかという問題である。

世界的なインフレの中では前者だけでも難しい。お金ではなく現物資産を生産できる国が強いというのは間違いない。韓国と同じ規模しかないロシア経済がこのような状況でも耐えているのは、原油と天然ガスを生産できるからである。

だがどの国に資金を保管するかというのは更に難しい問題である。個人的な意見では、日本では戦後の財政破綻処理に行われたような財産課税がそれほど遠くないと思う。(50年以内の確率はかなり高く、もしかすると20年以内かもしれない。)

マイナンバーはそのための布石である。日本国内に資産を置いていれば、政府がボタン1つで没収できる環境が整うだろう。

一方、国外ではアメリカの戦争に巻き込まれたくない国々が、ドル資産を回避するために躍起になっている。ドルを持っていればアメリカが政治的都合で自由に没収できるからである。

私見を言えば、暗号通貨の最大の利点はここにある。国家や企業の支配を受けない資産の貯蔵場所としては最高の性能を有している。暗号通貨の実体は紙1枚に還元でき、何処へでも持ち運べる。

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こうした馬鹿げた使い方がすべて淘汰されてからが暗号通貨の始まりである。本当の価値がそこにあるのならば、余計なバブルはすべて弾けた方が良いだろう。