ハマスのイスラエル攻撃に対する世界各国の反応まとめ

パレスチナのガザ地区を支配するハマスがイスラエルに対して攻撃を行なった。これに対する各国の反応を纏めてみたい。

アメリカの反応

まずはアメリカから始めよう。アメリカのバイデン大統領は次のように声明を出した。

数千のミサイルがイスラエルの都市に降り注ぎました。ハマスのテロリストはイスラエルの兵士だけではなく、住居や通りにいる民間人まで殺しています。

これは道徳的に受け入れられません。イスラエルには自衛の権利があります。

アメリカは当然イスラエルの側に立っている。アメリカとイギリスがなければ、イスラエルという国はそもそも存在しないからだ。

この問題は、元々オスマン帝国の領土だった土地に国家を設立しようとしたユダヤ人を、イギリスとアメリカが援助したことに始まる。パレスチナは第1次世界大戦後にはイギリスの委任統治領になったが、その後第2次世界大戦を経てアラブ人の土地とユダヤ人の土地に分割されることが国連によって決定された。

国連の決定にはアメリカとイギリスの意見が反映され、中東の人々の意見は反映されなかった。パレスチナでは、1918年のイギリスによる人口調査ではアラブ人が70万人に対してユダヤ人は6万に満たなかったが、1947年の分割決議ではユダヤ人の土地が多くを占めたため、国連決議(つまりアメリカとイギリスの意向)はユダヤ人側には受け入れられたがアラブ人には受け入れられず、パレスチナは決議採択後に即時内戦となった。当たり前である。

イランの反応

だから中東の人々のこの問題に対する見方は、西側諸国のものとは違う。

アラブ人側を支持してきた代表的な国がイランである。今回のハマスによる攻撃もイランが支援しているとされている。

イランの外務省は次のような声明を発表している。

アル・アクサの洪水作戦(訳注:ハマスによる攻撃の作戦名)はパレスチナの抵抗勢力と、抑圧されているパレスチナの人々が不可侵の権利を守るために行なったことです。

この作戦は、挑発的で扇動的なシオニスト(訳注:ユダヤ人国家の建設を求めるユダヤ人)の戦争屋、特に人権侵害を行なうイスラエルの政権の挑戦的な首相の政策に対する自然な反応でしょう。

ちなみにハマスによる攻撃は、アメリカのバイデン大統領が凍結していたイランの資産60億ドルを9月に凍結解除した後に起きている。単に馬鹿なのか、狙っているのかは本当に分からないのだが、ウクライナの時といい、バイデン氏の行動は常に戦争の引き金になっている。

サウジアラビアの反応

さて、上述の経緯から中東諸国の反応はおおむねパレスチナに同情的だが、特に筆者の目を引いたのはサウジアラビアの反応である。

アメリカと完全に敵対しているイランと違い、サウジアラビアは中東の中でも西洋諸国とも一定の協力関係を築いている。

サウジアラビアはアメリカの仲介でイスラエルとも国交正常化を目指していた最中だったが、そのサウジアラビアがどのように反応したかと言えば、次のような声明を発表している。

サウジアラビア王国は双方に対し情勢の即時停止、民間人の保護、自制を求めます。

サウジアラビアは、長引く占領と、パレスチナの人々の法的権利の奪取、その尊厳に対する度重なる組織的挑発の結果として、状況が臨界点に達する危険について何度も警告してきました。

サウジアラビアはパレスチナの側に立っている。これには少し驚いたのだが、やはりサウジアラビアは中東の国だということだろう。

サウジアラビアは宿敵イランとも国交正常化をした直後であり、アメリカとイギリスが背後にいるイスラエルよりも同じ中東の国であるイランを取ったとも言える。これは欧米にとっても大きなニュースである。

ウクライナの反応

サウジアラビアは政治的利益よりも中東の国としての心情を取ったと言えるが、それと好対照の動きとなったのがロシアに侵攻されているウクライナである。

ウクライナは領土を他国に奪われ、それに対して反撃しているという点ではパレスチナ側に近いはずなのだが、ゼレンスキー大統領は次のように声明を出している。

イスラエルから恐ろしいニュースが来ました。テロリストの攻撃で親類や親しい人を失ったすべての人にお悔やみを申し上げます。秩序は回復されテロリストは打ち倒されると信じています。

しかしその理屈ではクリミアやウクライナ東部で活動しているウクライナ軍の兵士はテロリストになってしまうのではないか。ゼレンスキー氏は結局、ウクライナの人間というよりは西側の人間なのである。彼の意見はウクライナ人よりもバイデン氏と一致している。

インドの反応

もう1つ筆者がやや意外だったのは、インドの反応である。インドのモディ首相は次のように声明を出している。

イスラエルで起きたテロリストの攻撃に深い衝撃を受けています。わたしたちの思いと祈りは罪のない被害者とその家族の皆様とともにあります。この困難な時に、インドはイスラエルとともにあります。

インドは独特の立ち位置にいる国である。イギリスに侵略された国としていわゆるグローバルサウスの代表のような国でもあるが、一方で中国とも対立問題を抱えている。だがこの問題ではイスラエル側に立ったようだ。

ロシア

ロシアは、アメリカの敵という意味ではイスラエル側ではないのだろうが、声明文は以下のようにどちらに肩入れするものでもない。

パレスチナとイスラエルの双方に、即時停戦、暴力の放棄、必要な自制の実践と、長く望まれていた包括的で持続的な中東和平を樹立するために国際社会の助力によって交渉プロセスを開始することを求めます。

中国の反応

中国も次のような声明を出し、この問題から距離を置いている。中東から離れた国がこの地域に利害を持っていることがそもそもおかしいのである。

中国はパレスチナとイスラエルとの間で現在起こっている緊張の高まりと暴力を深く憂慮しています。中国は双方に、民間人を守って状況の更なる悪化を防ぐために落ち着いて自制をし、敵対行動を直ちに終わらせることを求めます。

イギリスの反応

最後にイギリスのスナク首相の声明を載せて終わりにしよう。

今日の惨状の野蛮さがますます明らかになり、イギリスは明確にイスラエルの側に立っています。

このハマスによる攻撃は卑怯であり、道徳的に堕落しています。

あまり状況に詳しくない日本人も、これにはツッコミたいのではないか。この件で一番道徳的に堕落しているのは明らかにイギリスなのだが、それはどうなのか。西洋人は決して自分を省みることがない。

また、この一件ではハマス側のイスラエル市民に対する暴力の画像が数多く流れているが、ウクライナの件と同様、それまでに起こってきたイスラエル側の行ないについては西側メディアではこれまでほとんど報じられてこなかったことを指摘しておきたい。

何度も言っていることだが、戦争が何もないところから突然起きることはない。メディアの報道に流されず、それまでの経緯を自分で調べてみることである。