ローゼンバーグ氏: パウエル議長はインフレ時の失敗から利下げにも慎重になる

Rosenberg Researchのデイビッド・ローゼンバーグ氏がWealthionのインタビューでアメリカの利下げについて語っている。

アメリカの利下げ

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は今年3回の利下げを予告している。だが今年に入ってからのCPI(消費者物価指数)や雇用統計のデータがインフレ的なものになっていることから、利下げ観測は今年後半に徐々に後退している。

Fedは果たして利下げするのか。ローゼンバーグ氏は次のように述べている。

Fedは利下げするとは思う。だがタイミングは非常に難しい。

パウエル議長はどう考えているのか。中央銀行のトップという仕事は、確かにファンドマネージャーに比べて動きにくい側面はある。

ファンドマネージャーならば一度ポジションを持ったとしても、間違っていることが分かれば手仕舞えば良いだけだ。

だが中央銀行は公に金融市場に語りかけながら仕事をしているので、一度利下げして、後からインフレが再発してもう一度利上げに追い込まれてしまえば中央銀行としての信用にかかわる。

パウエル議長が慎重な理由

だが中央銀行としての一般論以前に、パウエル議長には慎重にならざるを得ない理由がある。ローゼンバーグ氏は次のように語っている。

彼らはインフレが一時的だと主張して面目を失った過去がある。2022年にはインフレ率は9%まで上がった。

パウエル氏の率いるFedは2021年、アメリカでインフレ率が既に7%まで上がっていた中でインフレは一時的だと根拠なく主張し、その後インフレは止まらなかったので撤回に追い込まれた。

ローゼンバーグ氏は次のように続ける。

彼らの頭にはその失敗がまだ残っているので、信頼を失わないよう保守的になっている。

だから金融政策を緩和するまでに時間をかけている。

また、パウエル氏にはもう1つの失敗がある。自分の金融引き締めによって2018年の世界同時株安を引き起こしてしまったことである。

この時パウエル氏は最後の最後まで今起こっている株価の下落は自分の金融引き締めとは関係ないと言い続けていた。

だがそれもその後撤回することになった。

パウエル氏の面目

基本的に中央銀行は経済や金融市場の予測ができない。だがパウエル氏の失敗ばかり引っ張り出すのは可哀想ではないかという話もあるのだが、ローゼンバーグ氏の主張する、パウエル氏が面目を気にしているという話は実は投資家にとって非常に重要である。

何故ならば、多くの人が思っているよりも人間は面目で動いているからである。だから中央銀行の動きを予想するためにはパウエル氏の面目を考えることは非常に重要である。

だからローゼンバーグ氏は、パウエル氏が簡単には利下げできないと予想する。これは他の専門家の意見とは多少違っている。

だがローゼンバーグ氏は、パウエル氏が利下げを遅らせるがゆえに、実際に利下げする時にはもっと早く利下げすべきだったということになっている可能性が高いと指摘する。

ローゼンバーグ氏は次のように述べている。

しかしひとたび利下げをしなければならなくなれば、今の市場の織り込みよりも急速に、より低いところまで利下げしなければならなくなるだろう。

Fedは後で利下げを強いられることになる。そして多くの人の予想よりも大幅に利下げをしなければならなくなる。

結論

ローゼンバーグ氏の論点は興味深いもので、利下げサイクルに入る時には実際そうなるだろうと筆者も思っている。

だが次の利下げサイクルの前に、そもそも利上げサイクルが本当に終わったのかどうかについてはよく考えなければならないだろう。筆者は特に、現状のインフレ率の低下はエネルギーや食品などコアインフレに含まれない部分に先導されている一方で、市場では原油価格が上昇していることを気にしている。

インフレは本当に終わったのだろうか。貴金属市場は少なくともそう言っていないように見える。