ガンドラック氏: 日本円は割安だ、これから上昇する

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のデイヴィッド・ローゼンバーグ氏との対談を紹介したい。

今回のテーマは日本円だが、これは、どうだろう。

安い日本円

今回、ローゼンバーグ氏はガンドラック氏に日本円はどうかと聞いた。そしてガンドラック氏は次のように答えている。

円は安い通貨だ。継続的にどんどん安くなっているが、ともかくかなり安い通貨だ。

ドル円のチャートは次のように推移している。

高市首相が就任してからはドル高円安になっているが、ここ数年で見ればほぼ横ばいである。

厳密に言えば、ドルは今4%程度の金利が付くので、パフォーマンスは過去2年で8%程度ドルに負けていることになる。

また、このチャートだけをいつも見ている日本の投資家には日本円はそれほど下がっていないように見えるかもしれないが、このチャートはドル円であり、ガンドラック氏はこれまでドルの下落予想を公言してきた。

そして、前回の記事でガンドラック氏が説明していた通り、世界的に見れば今年ドルは大幅に下がっているのである。

日本円はそのドルにパフォーマンスで負けているのだから、当然ながら「安い通貨」というわけだ。

日本円は割安か

だが、ガンドラック氏の発言を聞いたローゼンバーグ氏は次のように言っている。

われわれも円を保有している。ほとんどの期間で横ばいの通貨だが、われわれのリサーチによればドル円は120円から130円程度であるのが妥当だ。

ローゼンバーグ氏は円が割安だと言うのである。そして、驚くべきことにガンドラック氏も次のように言っている。

わたしもそこに魅力を感じている。円はこれから上がると思う。

これはどうだろうか。確かに、ファンダメンタルズを考えれば日本円は安いように思う。アメリカやヨーロッパから日本に帰って来れば、日本の物価がどれだけ安いかということを思い知らされる。

自民党の円安政策のお陰で、今や日本は安い国になったのである。外国人観光客が大挙して押し寄せるのは、治安もよく食事も美味しい国がこれほどまでに安売りされているからだ。そして「安売りされているからその国に来る」観光客は、物価が高くともその国に来たい観光客よりも当然に質が劣る。

その原因は円安であり、日本人が外国人観光客の対策を円安を意図的に実現した自民党に委ねようとしているのは、泥棒に留守番を任せるのと同じくらい愚かなことだ。彼らが日本を安売りしたのである。保守とは何だろう。売国奴のことだろうか。

円安の理由

他にも円安が妙だと考えるファンダメンタルズ的理由はある。日銀は仮にも利上げサイクルにある。それほど利上げしているわけではないが、それでもアメリカは利下げサイクルに入っている。

日米の金融政策の違いを考えれば、ドル円はもっと下がっても良さそうなものだ。だが円は上がっていない。ガンドラック氏とローゼンバーグ氏はそれで円は割安だと言っているのだろう。

ガンドラック氏は次のように纏めている。

物事が実現するには思ったよりも時間がかかるものだ。だが最終的にはその方向に行くと思っている。

しかしどうだろうか。ガンドラック氏はドル安の予想を的中させており、その理由は債務問題による金融緩和懸念とドルからの世界的な資金流出である。

個人的には円安の理由は、ドルと同じく将来的な金融緩和が避けられないことだと考えている。日本の債務問題は金融緩和で無理矢理金利を下げることでしか解決できない。

だが、コロナ以降金融緩和でインフレが起きる世界が定着してしまった。Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が著書『巨大債務危機を理解する』で予言し的中させた通り、金融緩和はどんどん大規模化してゆくものであり、次の金融緩和は前の金融緩和より大きなものになる。


巨大債務危機を理解する

だから、コロナ後の緩和でインフレになったならば、次の緩和でもインフレになるだろう。

結論

それで人々はドルからゴールドへ資金を逃避させているが、日本円からも人々は逃げているのである。

そしてドルが下がり、円はそれ以上に下がっている。インフレになったことで、金利よりも債務問題が通貨の価値にとって重要な時代が来たのである。

債務問題は、通貨安で解決される。通貨安とは人々の預金の価値が下がることであって、実際にそれが起こっているのに、日本政府が形式的に財政破綻するかどうかだけが問題だと考えている人は面白い考え方をするものである。

レイ・ダリオ氏は新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)でドルの行く末を予想するにあたって、日本円を債務問題の対処に失敗した例として紹介している。

ダリオ氏の新著には日本語版はないが、英語が読める人はそちらも参考にしてもらいたい。


How Countries Go Broke