ロックダウン延長の日本、解除の米国より感染者数増加は緩やか

新型コロナウィルスの流行が世界的に落ち着いてきたことからアメリカやヨーロッパではロックダウンの段階的な解除が始まっている一方で、日本では緊急事態宣言の5月末までの延長が決定された。日本では欧米よりも流行状況は悪いのだろうか? もう一度現状を確認してみても良い頃合いである。

世界の流行状況

まずはヨーロッパから見ていこう。ヨーロッパの流行震源地となったイタリアでは4月14日から書店など一部店舗が再開されたほか、5月4日からは工場が再開され、通勤や通院などでの都市間の移動が可能となっている。イタリアの感染者数の推移(これまでの累計、増加数、増加率)は以下のようになっている。

  • 4月25日: 195,351人 (+2,357 +1.2%)
  • 4月26日: 197,675人 (+2,324 +1.2%)
  • 4月27日: 199,414人 (+1,739 +0.9%)
  • 4月28日: 201,505人 (+2,091 +1.0%)
  • 4月29日: 203,591人 (+2,086 +1.0%)
  • 4月30日: 205,463人 (+1,872 +0.9%)
  • 5月1日: 207,428人 (+1,965 +1.0%)
  • 5月2日: 209,328人 (+1,900 +0.9%)
  • 5月3日: 210,717人 (+1,389 +0.7%)
  • 5月4日: 211,938人 (+1,221 +0.6%)

確かに増加数は着実に減ってはいる。コメントする前にアメリカの状況も確認しよう。アメリカでもトランプ大統領の再開ガイドラインのもと州単位のロックダウン解除が行われ始めており、ジョージア州、オクラホマ州、アラスカ州、サウスカロライナ州、コロラド州、ミシシッピ州、ミネソタ州、モンタナ州、テネシー州、ルイジアナ州、ネブラスカ州などではレストランやショッピングモールなど一部店舗の再開が始まっている。

アメリカでの感染者数の推移は次のようになっている。

  • 4月25日: 933,698人 (+34,956 +3.9%)
  • 4月26日: 960,582人 (+26,884 +2.9%)
  • 4月27日: 982,668人 (+22,086 +2.3%)
  • 4月28日: 1,007,097人 (+24,429 +2.5%)
  • 4月29日: 1,033,001人 (+25,904 +2.6%)
  • 4月30日: 1,062,675人 (+29,674 +2.9%)
  • 5月1日: 1,095,682人 (+33,007 +3.1%)
  • 5月2日: 1,126,250人 (+30,568 +2.8%)
  • 5月3日: 1,151,643人 (+24,383 +2.3%)
  • 5月4日: 1,172,921人 (+21,278 +1.8%)

そして一方日本では5月末までの緊急事態宣言の延長が報じられたが、日本の感染者数の推移は次のようになっている。

  • 4月25日: 12,829人 (+441 +3.6%)
  • 4月26日: 13,182人 (+353 +2.8%)
  • 4月27日: 13,385人 (+203 +1.5%)
  • 4月28日: 13,576人 (+191 +1.4%)
  • 4月29日: 13,852人 (+276 +2.0%)
  • 4月30日: 14,088人 (+236 +1.7%)
  • 5月1日: 14,281人 (+193 +1.4%)
  • 5月2日: 14,545人 (+264 +1.8%)
  • 5月3日: 14,839人 (+294 +2.0%)
  • 5月4日: 15,057人 (+218 +1.4%)

アメリカに比べれば増加数と増加率の両方が少なく、イタリアでは4日に1,221人の新規感染者が出たことに対して日本では218人である。それでも日本ではロックダウン延長であり、欧米では解除となっている。

日本が厳しすぎるのか、欧米が緩すぎるのか

日本の流行状況は欧米であれば経済再開が行われていてもおかしくない水準まで落ち着いてきていると言える。ここで考えなければならないのは、日本が厳しすぎるのか欧米が緩すぎるのかである。

特にアメリカにおいてはいまだ毎日2万人から3万人の新規感染者数が出ており、この状況でロックダウンを解除して人々が経済活動を開始しても再流行が起きないのかという疑問は大いにある。毎日2万人感染者が出ている状況がどういうものかと言えば、アメリカで1日の新規感染者数が2万人程度だった3月末から1ヶ月足らずでアメリカの累計感染者数は100万人を突破したのである。

勿論ロックダウンは一気に解除されるわけではないため、3月末からの爆発的流行が同じスピードでもう一度来るということはないだろうが、それでもこの数字はそもそも経済を再開できる数字なのだろうか。イタリアの方が落ち着いてはいるが、それでも1,000人以上の感染者が毎日出ていることには変わりはない。

逆に理想的にウィルスを封じ込めた例としては台湾などのアジアの国が挙げられ、台湾では直近10日で新たに見つかった感染者は9人となっている。ここまで封じ込めて国境を閉めてしまえば再流行が起こる可能性も極めて低いのであって、日本の1日当たり218人は欧米諸国に比べると台湾などの水準に近いと言えるため、月末までのロックダウンでそれを目指せるならば目指すべきなのだろう。

再流行すれば経済崩壊へ

何故筆者がそう言うかと言えば、日本を含むほとんどの国の経済は既に2008年のリーマンショックより大きいダメージを受けており、万一再流行が起こってしまえばその国の経済は完全に終わってしまうからである。アメリカのGDPを分析した例が以下の記事にある。

コロナショックでは先進国だからこそリーマンショックの倍程度のダメージで済んでいるが、ブラジルなどロックダウンしようにも国民に生活費を賄う貯金がなく、政府も支援する資金がない国ではロックダウンで経済が崩壊するか流行拡大で国民の数パーセントが死亡するかの2択を迫られている。日本やアメリカといえどもコロナショックがもう一度来るような事態になれば流石に経済がもたず、ブラジルと同じ運命は避けられないだろう。

よって月末までのロックダウン延長は妥当であると言いたい。そしてアメリカが本当に再流行を引き起こすことなくロックダウンの解除が出来るのかを見守っておこう。投資家としてはアメリカで再流行が起こった場合米国株は完全に終了するということは認識しておかなければならないだろう。