日経平均下落の理由 債券市場に吸い込まれる資金

さて、株式市場が荒れ始めてきた。6月15日の日経平均は774円安と2%以上の下落となった。しかしこの程度では下がった内には入らないだろう。

株式市場は急落

日本やヨーロッパなどの先進国の株式市場は前日の米国株の動向に従うのが通例だが、前日(日本時間の金曜深夜)の米国株はやや上昇で終わっており、今日は東京市場の後場にかけて下落が大きくなった。日本時間に大きく市場が動いた状況となる。

2018年の世界同時株安でも日本時間主導で動いたことが思い出されなくもない。当時も日本株が一気に上がり、その後の急落から世界同時株安が始まったのである。

現在の日経平均のチャートは次のようになっている。

日本時間の株安を受けてザラ場前の米国株先物も下落している。ただ、今日の下げ幅はここ1ヶ月ほど突出して上がっていた日本株の下げ幅ほどではないようである。これも2018年の時と似ている。

そして株式市場の下落を受けて上昇しているのが国債市場である。債券の価格上昇は金利低下を意味するため、米国債の金利は引き続き下落している。

株価下落の理由

以上の動きを眺めれば、株価下落の理由は単純であると言える。リスクオフによって資金が株式市場からより安全な国債市場に動いたのである。この動きについては事前に説明してある。

既に債券市場と株式市場で資金の奪い合いが始まっている。債券市場と株式市場が綱引きを始めれば、勝つのは必ず債券市場である。

しかし何故債券市場と株式市場が資金の奪い合いをしているのか? 1つの理由はアメリカの中央銀行が既に量的緩和を行っていないことにある。アメリカのマネタリーベースは4月頃までは急速に増加していたが、増加は既に止まっている。中央銀行はこっそりと量的緩和を停止しているのである。

証券会社などは流石に気づいているはずだが、この事実を認識している個人投資家はここの読者ぐらいではないのか。大手メディアが何処も報じていないからである。このことについては上記の記事で以下のように書いておいた。

実体経済が壊滅的であるにもかかわらず量的緩和でここまで上がってきた相場が、量的緩和なしで上がり続ける理由があるとすれば誰か筆者に教えてほしいものである。

そしてその懸念が実現したということである。大手メディアではコロナ第2波への懸念が下落の理由だと言われているが、第2波への懸念などは先月も先々月もあった話で、今問題になったことではない。以下の記事にもこう書いてある。そういうメディアの反応も含めて予想しておいたということである。

丁度市場が支え手の枯渇に苦しみ始めた辺りでコロナの第2波などが来てぎりぎり支えてきたものが決壊することになる。しかしニュースとして何がトリガーになるかは大した問題ではないのである。

結局のところ、現在の相場が上下どちらに行くかということはコロナによって実体経済から失われた資金(信用収縮)、量的緩和によって市場に注ぎ込まれた資金(利下げと量的緩和)、そして経済対策によって実体経済に注ぎ込まれた資金(財政出動)のどれが勝つのかという話になる。

筆者の計算では量的緩和がまともに機能していても株式市場への影響は合計で大きなマイナスになるはずだが、量的緩和が動いていなければ上下どちらに行くかは言うまでもない話なのである。

結論

まともなヘッジファンドは全員がその計算をしている。今回の記事では短期的な値動きを取り上げたが、中期的な動向には7月から業績相場に入るということが動因として大きいだろう。

先進国ではコロナの経済的影響はロックダウンのあった4月が最大と予測されているが、4-6月の決算は7月以降に発表されるため、市場はそれを完全に織り込むことが出来ていない。まだ何も始まっていないのである。

これから市場は筆者や一部のファンドマネージャーが事前に計算した数字を各企業の純利益という具体的な数字のなかに織り込んでゆくことになる。著名投資家が数ヶ月前には弱気表明をしていたことについて一部メディアでは彼らが間違ったかのような報道がされていたが、とんでもない話である。

新型コロナが未だ収まっていないブラジルの銀行株が上がったことが典型的だが、現在の相場が流動性相場ではなく無知による楽観であることは個別の銘柄をしっかり精査すれば分かることである。

まともな計算や分析をしていない人々だけが勝手なことを言うことができる。しかし相場は彼らを無視して自分の進みたい方向に進んでゆくだろう。