絶好調のグロス氏と不調続きのアインホーン氏: 米国利上げをヘッジファンドマネージャーはどうトレードするか?

古巣のPIMCOを飛び出してJanus Capitalに移籍して以来、債券王ビル・グロス氏が絶好調である。

グロス氏が2015年4月に「ドイツ国債は一生に一度の売り場」発言をして数日後、ドイツ国債は大幅に急落、利回りは急上昇した。更にその後グロス氏は中国株安も予見し、Twitterにて「ドイツ国債の次は深圳総合指数だ」と述べた。その後中国株がどうなったかは周知の通りである。

一方で、グリーンライト・キャピタル (NASDAQ:GLRE、Google Finance)のアインホーン氏は不調続きである。

先ず、空売りを推奨したAmazon (NASDAQ:AMZN、Google FInance)は2015年中に株価が倍近くになった。Amazonが必ずしも割高ではないことは、以下の記事で書いた通りである。

また最大の買いポジションであったMicron Technology (NASDAQ:MU、Google Finance)が大幅下落となった。更に、ブルームバーグによれば金相場でも損失を出したようであり、グリーンライトの株価は最近になって10%近く下落している。

金相場での読み誤り

アインホーン氏は世界的な金融緩和がインフレを引き起こし、金価格が上昇すると予想していたようである。彼の見方は正しいが、2015年中盤での金の買いが時期尚早であることは、ここの読者であれば分かってもらえるだろう。金の買い場は利上げの後である。

要するに彼は生粋のロング・ショートであるということであり、グローバルマクロ戦略は得手ではないということである。

2015年のようにバブルになりかかった相場は、割高を空売って割安を買うロング・ショート戦略の投資家には難しい局面である。割高のものはそれ以上に上昇し、割安のものは上がらないということがありうるからである。タイミングを測るためには、割高・割安ではなく資金の流れに着目する必要がある。

グロス氏の巧妙な投資戦略

では、中国株安を予想したグロス氏はどのような資金の流れに賭けたのか? 彼は実のところ、中国株を空売りしていない。当局に操作されかねない中国株を直接売るのはリスクが高過ぎると判断して、中国株安からリスクオフの流れを予想し、代わりに北米の高利回り債を空売りしたのである。

彼はCNBCのインタビュー(英語)で「必ずしも中国株そのものをショートする必要はなく、リスクオフを利用すればよい」と述べている。一つのトレンドに賭けるにしても、様々なやり方があるということであり、もっともリスクが低く、利益が高いものを選べば良いのである。

米国の利上げに向けて

米国の利上げを控え、二人の投資家はどういう戦略を取っているのか?

先ず、ロング・ショート戦略のアインホーン氏は、ショートポジションの割合を増やし、ロングに傾きすぎないようにする戦略を取っている。以前紹介したように、6月末の時点でグリーンライトのポジションは差し引き17%のロングとなっている。

ちなみにわたし自身の現在のポジションは、株式に関して言えばショートの方がやや多い。現在の株式市場には、資産株や証券株を除いて、買う理由のある銘柄がほとんど見当たらないからである。

グロス氏の提案

Twitterによれば、グロス氏はより極端に、現在の金融市場はすべて当局によって操作された出鱈目であり、本当の価格などどの市場でも付いていないと述べている。

グロス氏によればこのようなレースには乗らないことであり、例えば金利差に着目してトレードするなど、量的緩和相場に真っ向から挑まない方法を探すことだと述べている。債券投資家の彼らしい意見である。

当局に操作された市場を避けるために個人投資家がより参加しやすいセクターをわたしから挙げるとすれば、例えばバブルになっていない小型株などだろう。当局のような巨大な資金の手の届かないところでトレードをするのが、グロス氏の流儀で言えば賢明ということになる。

しかしながら、当局と真っ向から勝負をするのがグローバルマクロの流儀でもある。しかしその時期は今ではない。これまでも述べてきたように、利上げを機会に市場は一度急落するかもしれないが、それは本当の暴落ではない。空売りの機会はまだ先である。

これまで何度も推奨してきた以下の記事をしっかり読んで、暴落が来た時に、それが本当の暴落かどうか見分けられるようにしておいて欲しいと思う。