世界最大のヘッジファンド、インフレ株安で欧州株を57億ドル空売り

世界中で物価上昇が止まらず、金融引き締めで株価が下落する中、レイ・ダリオ氏の運用する世界最大のヘッジファンドBridgewaterが57億ドル分の欧州株空売りを行なっていることが明らかになった。Bloombergなどが報じている。

インフレ株安で欧州株空売り

空売り対象にはオランダの半導体露光装置メーカーのASML(10億ドル)や、フランスの原油メジャーであるTotalEnergies(7.5奥ドル)などが含まれている。

ASMLの株価チャートを掲載してみよう。

当たり前だが空売りは成功している。半導体は高成長産業であり、これまで株価が上がってきた分、下げ幅が大きくなっている。

何度か説明しているが高成長株はインフレに弱い。明らかに狙いすまされた銘柄選択である。

また、TotalEnergiesの株価は次のように推移している。

こちらの狙いはASMLほど明確ではない。エネルギー価格が高騰する中でのエネルギー株の空売りだが、ダリオ氏のことだから原油などのコモディティは買い持ちにしているだろう。

そう考えれば、ウクライナ情勢のために欧州のエネルギー株が他の国のエネルギー株よりも不利になると考えたのかもしれない。そうすれば例えば原油の買い、欧州エネルギー株の空売りという組み合わせはこの状況において意味を為す。

欧州株空売りの規模

いずれにせよBridgewaterは合計で57億ドル分の欧州個別株の空売りを行なっているということだが、この金額は大きいだろうか?

ヘッジファンド業界のニュースに慣れている人ならば分かると思うが、この数字は大きくない。Bridgewaterの運用資産額は1,500億ドル(約20兆円)を超えているからである。

だが規制により開示されるこれらのポジションの断片からダリオ氏の思考を考えることはできる。そもそも、以下の記事で紹介したが彼は最近公の場で空売りを推奨している。

物価高騰で中央銀行が金融引き締めを止められないこの状況では、株の空売りがどう考えても投資家にとって主要な利益の源泉だからである。ダリオ氏でなくとも、投資戦略を聞かれたら他に答えようがない。

結論

だから規制により開示された欧州個別株の空売りポジションは氷山の一角に過ぎないだろう。主要な空売りは個別株ではなく、株価指数先物などで行われているはずである。そちらは開示されない。

だがこれで資産運用業界の足並みが完全に揃ってきた。

この状況では他にやることがないからである。ボラティリティ指数の買いくらいだろうか。