ポジャール氏: 政策金利は5%以上に上がって景気後退ではなく恐慌を引き起こす

金融市場ではアメリカの利上げが何処で止まるのかということが議論になっているが、クレディ・スイスの短期金利ストラテジスト、ゾルタン・ポジャール氏(※ハンガリー語の発音に従い「ポズサー」氏から訂正しました)は利上げがまだ半分も終わっていないと考えているようだ。

戦争とインフレ

ポジャール氏の論理はいつも明快で分かりやすい。彼は今の状況を次のように説明する。

戦争はインフレ的だ。この経済戦争を、消費を主体とした西側と生産を主体とした東側の戦いと考えてみると良い。西側では需要が最大化され、東側では西側の需要に応えるために供給が最大化されている。

そしてこの状態から供給がいきなり姿を消した。

よって今のインフレは一時的なものではなく、構造的な問題だ。供給不足はロシアと中国の変化、そして移民規制による労働力不足やコロナ蔓延による移動の不自由などの起因している。

労働力不足はサービスの値上げの原因だとして経済学者のラリー・サマーズ氏も重視している。

だが、その原因に移民規制を挙げているところはアメリカで働くハンガリー人であるポジャール氏らしい。アメリカ人であるサマーズ氏はアメリカ国内の事情を見がちである。

しかしサマーズ氏もポジャール氏と同じくインフレはまだまだ止まらないと考える側である。一方、債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は既に金利は中立水準に達したとして、これ以上の利上げはむしろ景気後退とその後の緩和政策によるハイパーインフレを引き起こすとしている。

ポジャール氏の議論に話を戻そう。インフレが構造的な問題であるならば、アメリカの利上げはどうなるだろうか? それこそが投資家にとっての問題である。アメリカの株式市場は年始から急落していたが、経済減速による利上げ頓挫が囁かれ始めると反発している。

だがポジャール氏の予想が正しければ、株価の先行きは明るくなさそうだ。彼は利上げについて次のように語っている。

いまやジェローム・パウエル議長率いるFedは政策金利を5%か6%まで上げ、その水準にとどめることで総需要を大規模かつ継続的に減らし、供給不足の状況に合わせなければならないリスクを抱えている。

現在の政策金利は2.25%だから、5%以上となれば利上げはまだ道半ばにも達していないことになる。

経済は景気後退ではなく恐慌へ

5%の政策金利というのは現代の経済にとって未知の領域である。2%までの利上げでこれだけ株式市場が同様しているのに、金利がそこまで上がれば市場経済はどうなってしまうのだろうか。

ポジャール氏は次のように予想する。

金利は一定期間高く保たれることになるかもしれない。利下げが経済のリバウンドを起こさない(つまり、V字ではなくL字になる)ようにするためだ。だがそれはインフレの第2ラウンドを引き起こすだろう。

ここの読者には聞き慣れた表現が出てきただろう。ポジャール氏が注目しているのは、金利が何処まで高くなるかだけではなく、どれだけ長く高水準に保たれるかである。

高い金利水準を長く維持しなければならないならば、経済は景気後退ではなく何年にもわたって続く経済恐慌となる。

また、そうなれば結局金融緩和が必要となり、それは経済成長よりも物価の方を押し上げてしまう。インフレ第2波というわけである。

このインフレ第2波シナリオは筆者が去年から提唱し、サマーズ氏が5月に追従し、先月ガンドラック氏が同じことを言い、そして今月ポジャール氏も加わった。

筆者は今年、株価急落とスタグフレーションの織り込みを的中させているが、個人的に一番手応えを感じているのはこのインフレ第2波シナリオをサマーズ氏らよりも半年ほど先に提唱したことである。ここでは常に世界最高の頭脳の経済予想を事前に報じてゆく。

株価はどうなるか

さて、ポジャール氏の予想するのは経済「恐慌」とその後の更なる物価高騰である。

その場合株価はどうなるのか? 彼の株価の底値予想については以下の記事で報じている。

彼は米国株がほぼ半値まで下落することを予想していた。

だが以前経済恐慌が起こったとき株価はどうなったか? それは1929年の世界恐慌における株価暴落である。そしてこれから同じような状況になることを予想していたファンドマネージャーがいる。スタンレー・ドラッケンミラー氏である。

彼が示唆した1929年の世界恐慌において、株価は80%下落している。ポジャール氏は「控え目」にも半値落ちを予想したが、今回の論考を聞くかぎりドラッケンミラー氏のシナリオが近づいてきたのではないか。

そろそろ株の空売りを再開すべきだろうか。