マイナード氏: アメリカはあと半年で利下げを余儀なくされる

引き続き、21日に逝去したGuggenheim Partnersのスコット・マイナード氏の自社ポッドキャストにおける最後のインタビューを紹介する。

今回はアメリカの政策金利の推移予想について語っている部分である。

マイナード氏の利下げ予想

2021年から起こっていた物価高騰は、2022年には一般の消費者にも知られる現象となった。それでようやくインフレ抑制に動いたFed(連邦準備制度)は利上げを行ない、政策金利は0%から4.25%まで上げられている。

Fedは自己申告では2023年末までに金利を5%以上に上げ、一定期間そこに留めると言っている。だがマイナード氏は次のように述べている。

Fedは2023年の後半に入る頃までには利下げを始めなければならなくなるというのが、われわれの経済調査チームのコンセンサスだ。

理由は以下の記事で語っていた通りであり、住宅価格や消費などに既に景気の冷え込みが読み取れるからだ。

筆者の見解をそこに付け足せば、金利が4.25%の現状で既にインフレ率が9%から7%に2%も急減速しているのに、金利を更に上げればインフレ率はどれだけ急速に低下していくのだろうか。インフレ率のチャートを再掲載してみよう、

色々予想を立てることはできるが、金融引き締めが効いているかどうかの絶対指標は、インフレ率がどれだけ下がっているかではないのか。中央銀行家は現実逃避しても彼らの失敗で苦しむのは他人だが、投資家は現実に向き合わなければならない。

マイナード氏のインフレ率の推移予想

また、マイナード氏はFedのインフレ率の予想にも注文を付けている。

2023年末には短期金利が5.1%になり、インフレ率が3.1%になるという予想は、両方の数字がおそらく高過ぎる。

現在のアメリカ経済の減速を考えれば、2023年末に短期金利5.1%が無理なのは多くの人が同意できるところだろう。

一方でインフレ率はどうか。マイナード氏と同様に利上げが行き過ぎだとして、インフレ減速予想を的中させたジェフリー・ガンドラック氏のインフレ率予想は、2023年半ばに4.1%というものだった。

だとすれば、2023年末に3.1%が高いとするマイナード氏の予想は、ガンドラック氏の予想と大体同じくらいだろうか。

Fedの今後の動向

マイナード氏は今後のFedの動向について次のように述べている。

2023年後半にかけての何処かのタイミングで、Fedはインフレが自分の予想よりも早く減速していることに気付くことになる。そして利下げに傾いてゆく。

筆者も同感であり、今後の政策金利の動向を織り込んで推移する2年物国債の金利低下に賭けるトレードを行なっている。

2年物国債の金利は現状以下のように推移している。

4.2%という数字をどう見るかである。この数字は現状の政策金利とほぼ同じ水準なので、今後も利上げを続けるというFedの自己申告を考えれば、低いと考えられるかもしれない。

だが2年物国債はその名の通り今後2年の政策金利の動向を織り込むものである。既にインフレ率が急落している状況で、今後2年も金利が4.2%に留まる状況を想像してほしい。控え目に言ってもそれは有り得ないだろう。

結論

ということで、筆者はこの2年物国債の金利低下トレードをかなり堅いトレードだと考えている。

いつものことだが、Fedの誤りを正すことが最近の投資家の仕事である。政策金利などというものを廃止してしまえば、政府は人為的に経済を操作できなくなり、景気後退はあっても不必要な金融危機はなくなり、投資家もそのような馬鹿げた仕事はしなくとも済むのだが。

政策金利についてはマイナード氏とガンドラック氏もおおむね同じ意見のようだ。金利低下とドル安が2023年のトレンドである。