ガンドラック氏: アメリカはもう一度だけ利上げする

2月1日のFed(連邦準備制度)のFOMC会合結果を受け、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューでアメリカの利上げについて語っている。

利上げ継続でもドル下落・株価上昇の理由

2月1日、アメリカの中央銀行であるFedは0.25%の利上げを行なった。

パウエル議長は言葉の上ではこれまで通り利上げの継続について語った。だが市場の反応はドル安・株高だった。米国株のチャートは次のようになっている。

利上げ継続を金融市場はなぜ喜んだのか。ガンドラック氏は次のように語っている。

パウエル氏は利上げ継続について語ったが、重要だったのは声明文を読んだ後の彼の態度だった。彼は自信を持っているように見えた。これまでの状況に安心している様子だった。多分誰もがそれを感じ取った。

これまでの利上げの結果、アメリカのインフレ率は急落しており、しかもアメリカ経済はそれほど落ち込んでいない。

減速はしているが、これだけの利上げにもかかわらずいまだに景気後退入りしていないのは驚くべきことである。

インフレ率低下に安心しているパウエル議長

パウエル議長は内心ではこれまでもかなりほっとしていただろうが、これまでの会合ではそれを表に出すことはなかった。インフレ率が急落する中でも利上げを強行するトーンを崩していなかった。

この12月の記事にも書いたことだが、その理由は、パウエル氏が利上げを緩めると発言すれば、金融市場では彼を先回りしてより長期の金利が低下するからである。

そして低金利はインフレを再来させる。だからパウエル氏は内心では安心していてもそれを表に出すことはなかった。

だが今回、パウエル氏は安心のトーンを表に出した。それを出しても良いと思えるほどにインフレ率が改善しているということである。彼は今回、いわば金利低下と株高を(インフレの原因になる可能性にもかかわらず)許容した。それについてガンドラック氏は次のように述べている。

パウエル氏は明らかに市場の資産価格の水準に異議を唱えなかった。

次回のFOMC会合までにインフレ悪化のサプライズが起こることはない。だからパウエル氏はかなり落ち着いていた。

それで実際に金利は下がった。アメリカの長期金利は次のように推移している。

筆者の意見では、これは良いことである。ガンドラック氏の言うような、引き締めのやり過ぎによるハードランディングシナリオの可能性が下がり、経済学者ラリー・サマーズ氏の言うようなソフトランディングシナリオが現実味を帯びてくる。

基本的に、中央銀行が何も余計なことをせず、市場が金利を自由に動かすのに任せるほど、市場は自動で適切な金利水準を探し出し、経済は上手く行くのである。今回、パウエル氏は金利の手綱から手を離した。そしてそれは良いことである。日銀も黒田氏を排除してそうすべきである。

今後の利上げ

さて、今後のアメリカの利上げについて、ガンドラック氏は自分の予想に修正を加えている。彼は次のように述べている。

もう一度利上げがあるだろう。声明文で複数回の利上げを表明しながら今後まったく利上げをしないのは、経済状況に非常に大きな変化でもなければ難しい。そしてそれが起こるだけの時間もない。

パウエル氏は今回の会合で今後も利上げを行うと言った。次回3月22日の会合結果発表までに何か状況に変化がなければ、そうしないことに整合性が取れない。

ガンドラック氏は次のようにつづける。

次の会合までにあるのは、パウエル氏も言及したように2回の雇用統計と消費者物価指数の発表だ。

利上げはあと1回だろう。

ガンドラック氏は今回の利上げが最後と予想していたので、1回分予想を修正したことになる。

去年亡くなったもう1人の債券投資家スコット・マイナード氏は利上げについて次のように言っていた。

もしかしたら政策金利は5%まで上がるかもしれないが、そこに長く留まることはないだろう。

いずれにしても利上げはもうすぐ終わり、遠からず利下げが始まる。パウエル氏のトーンもそのように変化している。