混み合ってきた長短金利差が示す世界同時株安の今後の動向

さて、債券投資家ガントラック氏の予想通り、2月に始まった世界同時株安は一度反発したが再び下落した。

ただ、1度目の急落と2度目の急落で異なる部分が1つある。2度目では、株安の原因となったアメリカの長期金利が急落していることである。

高騰していた長期金利の急落

読者にはお馴染みだが、世界同時株安の原因となったのはアメリカ長期金利がFed(連邦準備制度)の利上げとバランスシート縮小という金融引き締め政策によって上昇し、高金利を求めた資金が株式市場から債券市場へと流れたことである。

株安の原因となった金利高だが、今度は株安を受けてリスクオフの流れから債券が買われ、金利が下落している。以下はアメリカ長期金利のチャートである。

株安の原因となった金利高が収まったからといって、これが株価反発の原因となるわけではない。これは事前に述べておいた通り、株式市場から債券市場に流れた資金が何の理由もなく株式市場に戻ってくることはないからである。債券と株式が限られた資金の綱引きをしているということを覚えておきたい。

ただ、問題となるのは長期金利の今後の動向である。これも事前に述べておいた通り、長期金利に下落余地はほとんどないのである。

それは短期金利が下限として働いているからである。米国債の金利を並べてみれば次のようになる。

  • 2年物国債: 2.27%
  • 3年物国債: 2.39%
  • 5年物国債: 2.56%
  • 10年物国債: 2.74%

10年物国債の金利が長期金利である。

長短の金利が逆転しないという前提のもとでは、ご覧の通り長期金利に下落余地はほとんどない。利上げが撤回されない限りは短期金利は下がらず、したがって長期金利も下落余地が限られるということになる。

では長短金利は逆転しないのか? ここ数十年ほど、長短金利の逆転は例外なく景気後退の前触れとなっているが、アメリカの実体経済は好調であり、景気後退の兆候は見られない。まだ見られない、という意味ではあるが、今後半年ほどは大丈夫だろう。

したがって、世界同時株安で短期的に下落した長期金利は下落トレンドを維持することは出来ず、今後上昇に転じれば株価には更に悪影響を及ぼすことになるだろう。