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世界同時株安で中銀はどうするか?: 金融政策をめぐる状況がブラックマンデーの原因に似てきた理由

米国の利上げと中国の景気停滞を原因とする世界同時株安が続いているが、米国株が高値から10%ほど売られる中、市場が短期的なリバウンドを見せるかどうかが注目される。

8月25日の市場は国によって異なる反応を見せた。先進国で一番最初に始まった日本市場は約3%安で開場し、正午にかけて前日比プラスに持ち直す場面も見られたが、再び売られ、日経平均は結局3.96%安で引けている。

量的緩和が今年始まったばかりの欧州市場は強い反発を見せ、ドイツ市場は強気のまま4.97%高で引けた。先程引けたばかりの米国市場は序盤から中盤まで強く推移したものの、最後に売られてS&P 500は1.35%安で引けている。

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世界同時株安でドル円が一時116円台: ドル円急落は何故起こったのか? これからどうなるか?

今回の急落では相場の動きをすべて事前に書いてしまってるので、ドル円が短期間に4円下落しても、書くことは以前の記事の焼き直しになってしまうが、一応纏めておこう。

米国時間で8月24日の朝、ニューヨーク証券取引所の取引開始直前にS&P 500先物が大きく売られ始め、それに伴いドル円が120円前後の位置から116円台まで一気に滑り落ちた。米国の株式市場の取引開始とともにS&P 500とドル円は一旦底値を付けて反発し、特にドル円は119円前後まで回復している。

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世界同時株安は暴落ではなく急落: 株安はいつまで続くか? 何を買うべきか?

米国利上げ前の世界的な株式市場急落は、ここでもずっと言及してきたことで、読者のなかに驚きはないだろうが、それでも良い銘柄まで売られている現状ではパニックになりかねないので、長期的に何が不変なトレンドで、急落のなか何を拾えばいいのかを再度纏めておこう。

円安トレンドは不変

先ず、リスクオフでどれだけ円高になろうとも、万一米国が利上げを撤回しようとも、円安は不変のトレンドである。

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中国の人民元切り下げで世界同時株安: 米国株の空売りとドル円の押し目買い

中国が人民元の基準値を2%切り下げたことによって各国の株式市場が下落している。切り下げの経済への影響は各国様々であるが、基本的には以下の通りである。

  • 米国・欧州・日本の輸出業への影響
  • 中国のコモディティ購買力の低下
  • 中国人観光客の減少
  • 中国のドル建て債務の増加

中国に関して一番心配されているのはドル建て債務の増加である。通貨切り下げは中国の輸出業の助けになるが、米国の利上げによる中国の債務バブル(株式バブルではない)崩壊が懸念されているなかで、ドル建ての債務が増えることが致命傷になる可能性がある。

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米国が利上げを急ぐ理由: バブル崩壊後の相場に向けた利上げ競争はもう始まっている

利上げとは、自国の経済の状況に照らして中央銀行が自分の裁量で決められるものと思われがちだが、実際はそうではない。他の中央銀行の状況によって大きく左右されるのである。

事実、Fed(連邦準備制度)は利上げの必要性に迫られており、米国が株式市場や債券市場の暴落を望まない限り、実際のところFedに選択肢はない。そして中央銀行に選択肢がない状況とは、投資家が中央銀行の動きを予想できる状況であり、グローバル・マクロ戦略にとって格好の投資機会なのである。

ドル高についてはこれまで、ドル高が行き過ぎればFedは利上げを止めるどころか量的緩和を再開することもできると書いてきたが、債券投資家のグロス氏などが主張するように、どうやらFedは量的緩和の危険性に気付いているようであり、しかもその副作用を最小限に押さえるため、随分前から準備をしてきたようである。

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債券王ビル・グロス氏が商品市場暴落と米国利上げを語る

債券投資家のビル・グロス氏がブルームバーグのインタビュー(英語)で、商品市場暴落の意味、米国の利上げとその後の金融市場について語っている。グロス氏は、世界経済に蔓延するデフレ圧力にもかかわらず、Fed(連邦準備制度)は利上げをしたがっていると指摘する。

デフレの気配がしており、CRB商品指数はもはやリーマン・ブラザーズが倒産したときよりも低くなっている。商品市場は世界経済の本当の姿を伝えてくれる。リアルタイムの需要と供給を反映しているからだ。

この論点は、奇しくもこのインタビューの一日前にここで公開した前回の記事とほとんど同じである。わたしのほうが早いので、真似をしたわけではないのだが、世界の市場を見ている投資家の考えることは皆同じということである。

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2015年2Q米国GDP: 全体的に弱まるも9月の利上げは正当化する内容

2015年4-6月期の米国実質GDP速報値は前年同期比2.32%となり、前期の2.88%から減速した。経済成長が全体的に弱まっているが、絶対値として見れば2%以上であり、Fed(連邦準備制度)が利上げをする口実としては十分であることも確かである。

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明らかに弱いのは投資と輸出だが、驚くべきことに輸入まで減速している。個人消費も弱まっており、輸入とともに内需の弱さを示していると言える。内訳を見よう。

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金価格急落: 価格の下落自体は既定路線も原因に新たな要素あり

さて、金価格の下落が始まったようである。2015年に入ってから概ね1150-1250ドルのレンジで推移していた金価格は、7月に入り徐々に下がり始め、20日には遂に1100ドルを割り込んだ。まだ暴落とは言えないが、ここ最近では見ていない急落ではある。

以前にも書いた通り、金価格の下落は米国の利上げ前の既定路線であるが、新たな要素として、今回の急落には米国だけではなく中国の景気減速も絡んでいるので、上記の記事に書いた買い下がりのレンジの見直しなども含めて、金の今後について書いてゆきたい。

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2015年1Qの米国GDPは堅調続く、原油関連は弱いが輸出に回復の兆し

4月29日に2015年1-3月期の米国GDP速報値が発表された。報道では前期比年率の悪さばかりが報道されているが、前年同期比で見れば2.99%の実質成長と、米国経済の力強さが衰えていないことが確認され、実際ドルも対ユーロを除いて上昇した。

以下に米国GDP成長率の推移を示したグラフを掲載し内訳を見てゆくが、数値はいつもの通り前年同期比である。報道では通常「季節調整済み前期比年率」が使われるが、個人的に統計処理による季節調整を信じていないというのと、また前期が冬場であったため、原油安という特殊要因を誤差なく見極めるためには統計処理に頼らない前年同期比が良いのである。

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バーナンキ氏ブログ: どうして金利はそれほど低いのか

いくつかのニュースでも報じられているように、Fed(連邦準備制度)前議長のベン・バーナンキ氏がブログを開設している。議長時代には言いたいことを言えなかったこともあってか、かなり饒舌に語っており、本人曰く「ようやくFedウォッチャーに監視されることなくコメントできる」だそうである。

Fedの仕事は98%が対話、2%が政策実行だったとも語っており、発言1つするにしても非常に気を遣ったのだろうと思う。しかし、引退した今は彼も民間人であり、自由に経済批評ができると思いブログを始めたのだろう。

現在9つの記事が投稿されているが、本稿では先ず、彼のブログ最初のエッセイ、「どうして金利はそれほど低いのか(Why are interest rates so low?)」を和訳して取り上げたい。 続きを読む バーナンキ氏ブログ: どうして金利はそれほど低いのか