米国利上げ後の投資戦略: 株価がいずれ暴落する理由と為替、債券、金がどうなるか

2015年8月に株式市場が急落した後、市場はいまだ軟調であるが、以下の記事に紹介した通り、Fed(連邦準備制度)の姿勢は変わらず利上げに積極的である。

世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏などは米国の量的緩和再開を期待していたようだが、そのような投資家の希望的観測が当たらないということは、ここで一貫して主張してきた通りである。上記の記事では世界同時株安後の連銀総裁たちの発言を引用したが、それらの発言通り年内利上げは既定路線だと見るべきだろう。

さて、これらの状況を踏まえて投資家は今後の戦略を考えなければならない。基本的にはここに何度も書いてきた通りなのだが、重要なポイントを纏めてみよう。

米国株とドルの同時上昇は続かない

ドルが上がれば上がるほど米国の輸出株の売上が減少し、米国株が上がれば上がるほど、Fedは利上げがやりやすくなるからである。纏めると以下のようになる。

  • ドル高 -> 輸出株安
  • 株高 -> 利上げ -> 株安

この相場観は先ず第一に米国株のショートポジションを正当化する。米国株が万一上昇すればそれは売り場ということである。

米国株については下落前からS&P 500の空売りを推奨しており、個人的なポジションもロングよりショートが多いポートフォリオになっている。この方針は恐らく、量的緩和バブルが崩壊するまで継続することになるだろうと思う。

一方で、ドルについては以下の記事で、ドル円が116円まで急落したときにドル円の買いを推奨した。

このドル買いのポジションも、ドルが上昇してゆけば精算しなければならないということである。ではドルを売って何を買うのか? 第一の候補はポンドドルである。

ポンドドルが下がりすぎればドルをポンドに換金すること

やや古い記事になるが、以下の記事で紹介した通り、米国とイギリスの経済はほぼ同程度好調となっている。

これは、米国が利上げしてポンドが割安となれば、イギリスにも同程度の利上げ要因があることから、ポンドの買いが正当化されるということである。

記事の通り、マネタリーベースで考えたポンドドルの適正レートは大まかに1.55であり、この水準を大きく上回ったり下回ったりすることがあれば、割安な方に乗り換えるべきだということである。米国が利上げをしてドルが上昇した場合には、ポンドドルのレートによってはポンドが乗り換えの受け皿になるだろう。

利上げが進むにつれて金を買い進めること

もう一つ重要であるのは、Fedが利上げを進めるにつれて徐々にドルを売り、金を買い集めてゆくことである。米国が利上げをすればドルが上昇し、ドルで取引されている金の価格は相対的に下落することになる。しかし重要なポイントは、米国は利上げを遂行できないということである。

米国の政策金利が上昇すれば、それはいずれ量的緩和バブルを崩壊させる。量的緩和により株式市場に流入した資金が一斉に流出してゆくということである。1度目の利上げは成功するかもしれないが、2度、3度となるにつれて金融市場はより不安定となり、更なる利上げは非常に難しくなるだろう。

したがって投資家は、利上げによって徐々に下落してゆく金を買い下がる必要がある。いつ、どのタイミングで金を買うべきかについては以下の記事に書いてあるので、そちらを参考にしてほしい。

また、量的緩和がどのようにバブルを引き起こし、それがどう崩壊してゆくかについては以下の記事を参照してほしい。これは2015年以降の相場で一番重要な記事である。

長期金利の上昇は株価暴落の合図

最後に、今後一番重要な指標は先進国の長期金利である。とりわけ米国債が下落し始めるとき、株式市場は債券市場と資金を取り合わなければならなくなる。日本株だけに投資する投資家も、各国の長期金利を注視しておくことは絶対に必要であり、そうでなければ、理由も分からないが持ち株が下落しているという事態になるだろう。

米国債については中国政府が売却を始めているという話もある。一番注意すべきは、株式が下落しているのに長期金利が低下していないという場合である。リスクオフにおいて資金が債券に流れていないということは、投資家が中央銀行を疑い始めているということである。

この兆候が本格的に見られるのはまだ先だと踏んでいるが、今後の相場は中央銀行の動きと投資家の反応がすべてであり、また各国の中央銀行が協調できているかということについても注視しなければならない。中央銀行の協調失敗は1987年にブラックマンデーを引き起こしており、今の状況が少し当時に似てきているからである。

このように、2015年以降の金融市場は非常に難しく、金融を専門としない個人投資家については、資産をキャッシュで持つことを強くお勧めする。それでも何かに投資をしたいという投資家については、ここの記事が参考になれば幸いである。