世界同時株安のあと株価はどうなるか?: 暴落でなければ米国株は何処へ行くのか

米国の利上げと中国の景気減速を原因とする世界同時株安は一度リバウンドを見せたものの、株価は再び下落し、2番目のボトムを探っている。

この後の展開がダブルボトム、トリプルボトムとなり株価が落ち着くのか、中央銀行が対応せざるを得ないほど急激に下落してゆくのか、チャートの形は分からないが、そろそろその後の展開を考える時期に来ているだろう。先ずは今回の急落を予想した2月の記事をもう一度思い出してみよう。

この記事では、利上げ前後に関する3つの可能性を挙げたが、そのうち一番可能性の高いと書いたシナリオは以下の通りである。

利上げが近づくにつれ相場は一旦下落するが、ここ数年そうであったように、10%程度の下落を迎えたところで押し目買いが入り、相場は利上げを乗り越えたと考えて、本格的な上昇相場に移行する。

但し、2月の時点から世界経済をめぐる状況が変化したことで、細部には変更がある。先ず、急落が始まった直後に書いた以下の記事では、下落幅を下方修正し、15%程度の下落は充分に有り得ると書いた。

そしてもう一つ必要な修正は、株価下落が収まった後の展開である。

株価は再び高値を目指すのか?

上記の記事でも書いているように、この株価急落は量的緩和バブルの崩壊ではなく、あくまで単なる急落である。バブル崩壊はまだ先であり、そうであるとすれば、今回の下落が収まった後には反発が待っているはずである。これが2月の時点での論理であった。

しかし、2月の時点と現在では状況が少し変わっている。変化した世界情勢とは、中国経済の減速とコモディティ市場の暴落である。

企業のコスト削減にもなる商品市場の暴落が何故問題かは上記の記事を読んでほしいが、考えなければならないのは、元々想定していた反発にこれらのマイナス要素がどう作用するかである。

そもそも株価は何故反発しうるのか?

そもそも2月の時点で株価が再び高値を目指すとしていた理由は、利上げの後も米国の長期金利がそれほど上昇しない可能性が高いからである。

長期金利が低く保たれていれば、高金利に惹かれた資金が株から債券へと移ることがない。つまり、量的緩和によってもたらされたポートフォリオ・リバランスが逆流することがない。(ポートフォリオ・リバランスについては以下の記事を参考にしてほしい。)

利上げはこれまで何度も株式市場の暴落の原因となってきたが、利上げをしても米国株が下がらなかった事例も勿論ある。最近の例では2004年から2006年まで行われた利上げで、これを主導したFed(連邦準備制度)の議長はアラン・グリーンスパン氏であった。

下がらなかった米国株

当時、米国株は2001年のドットコム・バブル崩壊からの回復の途上にあり、この上昇相場は利上げによって損なわれることはなく、米国株は2008年のサブプライム・ローン危機まで上がり続けることとなる。

この時に利上げにもかかわらず株式が上昇し続けた理由の一つには、長期金利が上昇しなかったことにある。一方で、1987年のブラックマンデーの原因となった利上げや、1994年のクリントン政権時の利上げでは長期金利が上昇し、前者では株価は暴落、後者では利上げが終了するまで株価は上値を抑えられた。ちなみにブラックマンデーについては以下の記事が詳しい。

さて、今回米国の長期金利が上がっていない理由は、日銀とECB(欧州中央銀行)の量的緩和である。米国債よりも南欧諸国の国債の利回りの低い状況は合理的ではなく、ある程度の裁定取引が働くからである。

この状況と、いまだ堅調な米国経済、そして利上げのペースが緩やかになるであろうことを考慮すれば、株価は再び上値を目指しても可笑しくはなかった。そこに水を差したのが中国の景気減速である。

チャイナ・リスクをどう考えるか?

中国の経済は大きく、中国の景気減速は貿易を通して輸出されやすい。中国でのシェア拡大を頼みにしていたApple (NASDAQ:AAPL、Google Finance)などは梯子を外された気分だろう。

一番の問題は、中国の景気減速が明らかになったことで、世界に米国以外にまともに成長している大国がないことが示されてしまったことにある。日本の景気は消費増税で挫かれ、ユーロ圏はユーロ安による輸出拡大によって景気回復を目指そうとした矢先であった。

つまり、経済の弱い大国は通貨安により他国の需要に頼ることで経済回復を目指していたのだが、そこに中国まで通貨切り下げを行ってきたことで、頼れる他国の需要など何処にもないことが明らかになってしまった。米国経済はいまだ堅調だが、米国だけですべての先進国を引っ張ることなどは出来ないのである。

リスクに対応するために

この状況で株をトレードするためには、上記のリスク要因に比較的影響されない銘柄を選ぶことである。マクロ要因に影響されず株価が上がりうる材料株や、セクターで言えば薬品株などのディフェンシブ銘柄、IT関連のなかであまり国際化していない割安なもの、ユーロ圏の低金利の恩恵を受ける不動産株などである。輸出株は、セクターとしては禁物だろう。

急落が落ち着いた後に米国株が再び上値を目指すかどうかについては、やはり上値は重くなるというのが妥当な見方だろう。株価が上がればFedは利上げを行い、ドル高によって米国の好景気は通貨切り下げに貪欲な他国に速やかに吸収されてゆくことになる。

成長のためのドライバーが世界中の何処にもないことを投資家が認識しているため、中央銀行の具体的なテコ入れがあるまで下落が止まらない可能性もある。しかし、中央銀行のテコ入れはまだ有効である。ここが今回のポイントであり、どれだけ下落しようともバブル崩壊とはならないとする理由である。

株についてはいずれにせよヘッジの空売りを外すべきではなく、個人的には株価の動向にかかわらず、買い持ちのポジションが売り持ちを上回ることのないようにするつもりである。今回の急落で一番の好機はドル円であり、仮に反発したとしても株式ではないのである。利益の源泉を為替相場に見るべきである。

ドル円については以下の記事を参考にしてほしい。今後も株式、為替ともに注視してゆく。