アメリカの財務長官でかつてジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementを運用していたヘッジファンドマネージャーでもあるスコット・ベッセント氏が、CNBCのインタビューで、Fed(連邦準備制度)のジェローム・パウエル議長の後任について話している。
パウエル議長の任期終了
コロナ禍とその後のインフレ期を通してFedの議長を務めてきたパウエル氏は、来年5月に任期終了を迎える。
トランプ大統領は、アメリカのインフレ率が2%まで下がっているにもかかわらず、利下げをせずに政策金利を4.25%で維持し続けているパウエル議長を批判し続けている。
一時はパウエル議長を任期終了前にクビにするという話もあったが、いずれにせよパウエル氏はもうすぐ議長ではなくなる。そして新議長を指名するのはトランプ大統領である。
トランプ大統領は、急速な利下げを好む人物を新議長に指名することになるだろう。
恐らくは政権内でトランプ大統領と一番良好な関係を保っているベッセント氏は、次の議長の候補について次のように述べている。
われわれの候補者のリストはとても充実している。そして席は2つ空くということを覚えておいてほしい。
Fedの支配を強めるトランプ大統領
席が2つ空くというのは、パウエル議長が退任するほかに、エイドリアーナ・クーグラー理事が理事を辞める。彼女の任期は来年1月に終了するはずだったのだが、個人的理由で今月中に辞めるとの発表があった。
これでトランプ大統領はFedの金融政策を決める投票権を2つ確保できるということになる。だから金曜日にクーグラー理事の辞任が発表された直後、ドル円が大きく下落したのである。

クーグラー理事の早期退職が突然発表されること自体は、投資家にとって予想の難しいことだったかもしれない。だが、遅かれ早かれFedの金融政策にトランプ大統領の意向が反映され、ドル相場はこれからの金融緩和を織り込んで下落してゆくというのは、筆者がここ数ヶ月何度も記事にしてきたことである。
- レイ・ダリオ氏、アメリカ版アベノミクスによるドル暴落を予想
- ネイピア氏: 貿易赤字を嫌うトランプ大統領はドルを暴落させざるを得ない
- チューダー・ジョーンズ氏、米国の大幅利下げでドルは大幅下落すると予想
金融緩和までのタイムフレーム
市場はしばしば事前に明らかなことを少しずつ織り込んでゆく。利下げに積極的な新議長が発表されれば、ドルはまた下がることになるのだろう。
そうなるということは今年の前半から明らかであるにもかかわらずである。
だから投資家は、それがいつ発表されるのか、実際に利下げが行われるのはいつかなど、これからの時間軸を考えて行かなければならない。
新議長の発表について、ベッセント氏は次のように言っている。
候補者のリストは大統領がこれから確認し、面接を行なうことになる。年末までには結果を発表できるだろう。
アメリカ経済と米国債を支えるために金融緩和によってドルが犠牲になろうとしている。それこそが、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)で予想しているアメリカの未来である。
ダリオ氏の新著は英語版しか出ていないが、英語が読める人は原著で読むことをお薦めしたい。ドルの未来がそこに書かれている。