引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のデイヴィッド・ローゼンバーグ氏との対談を紹介したい。今回はドル相場の動向について語っている部分である。
ガンドラック氏のドル下落予想
ガンドラック氏はもう1年ほどドルに弱気である。トランプ大統領が望む金融緩和とドル資産からの資金流出によりドルが下がると予想し続けている。
そして今回ガンドラック氏は次のように言っている。
ドル指数は115から97程度まで下落した。このドル下落はわたしのようなドル弱気派にとってかなり簡単なトレードだった。調整すらなく下がったからだ。ドルは毎日のように下がり続けた。
日本の投資家には信じがたいことだが、今年ドルは大きく下がっている。ドルの強さを示すドル指数のチャートは次のようになっている。

2025年のドル下落
2025年、ドルは大幅に下落している。このことは、ユーロドルなど他のドル相場を主に見る海外の投資家から見れば明らかな動きである。
だが、ドル円でドルを考える日本人には意外に見えるかもしれない。ドル円はむしろ上がっていて、ドル高になっているではないか?
その理由は明らかである。下がっているドルよりも円の方が更に下がっているからである。
ドルに話を戻そう。ガンドラック氏は最近のドル指数の動きについて次のように述べている。
ドル指数はその後97辺りで底打ちしたが、今では99辺りだ。下落が止まる時も、ただ横ばいで推移するだけだ。
ガンドラック氏が言っているのは、現在のドルの下落相場は調整すらなく、下落するか下落が一時停止するかだけで、ドルを空売りする投資家にとっては非常に有難い状況だということである。
ガンドラック氏は次のように言っている。
ドルは、これほどの大きな下落の後も、短期間でさえ対して上方向に反発することがない。この動きを見ていると、ドル相場は今後も下落を継続すると思える。
結論
ガンドラック氏はドルの下落が今後も継続すると考えている。トランプ政権が金融緩和に積極的であり、利下げを渋っていたFed(連邦準備制度)のパウエル議長も来年5月には退任することを考えれば、その予想は妥当だろう。
だが、日本円の下落を心配してドルを買っていた人には言っておきたいことがある。あなたは、紙切れをもう少しましな紙切れに持ち替えただけで、あなたが紙切れを持っている状況には何の変わりもない。
そしてその両方の紙切れの価値はいずれにせよ下落しているのである。
そもそもの誤りは、ドル円相場しか見ていないことから生じる。他の通貨を基準に通貨の価値を計ってはならないというのは、かの有名なアダム・スミス氏が何百年も前に『国富論』で分かりやすく説明していたことであるにもかかわらず、流行りのNISAは勉強するがこういう重要な古典は読まない人々には完全に無視されているようだ。残念なことである。
