ギリシャ国民投票後の進展: やはりギリシャはそれほど譲歩を得られないか

債権団の要求にNoを宣言したギリシャの国民投票から2日が経ち、ユーロ圏各首脳が交渉に向けて動きを見せている。

先ず、これには驚いたが、バルファキス財務相が辞任した。国民投票後の交渉で、ドイツのショイブレ財務相らと折り合いの悪いバルファキス財務相が交渉の場に行くのはギリシャにとって不利に働くとツィプラス首相が判断したためで、事実上の更迭である。

ツィプラス首相にとっては債権団に対する一つの譲歩なのだろう。バルファキス財務相は正論を言い過ぎて債権団に嫌われた。彼の経済学的主張は、ノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ氏やクルーグマン氏などと基本的に同じものであった。

ユーロ圏の一部の要人は債務減免の可能性をも認めつつある。ドイツのガブリエル副首相やルクセンブルクのグラメーニャ財務相らが、ギリシャ側の譲歩と引き換えに債務減免を行うことは可能であると述べた。

債権団から新たな資金を借りて、古い借金を同じ相手に返すという無意味な状況がおかしいとようやく気付き始めたのだろう。バルファキス元財務相は最初から財務減免を主張していたが、彼が辞任して初めて、債権団はその可能性を認め始めている。

ギリシャはやはり大した譲歩を得られずか

一方で、ギリシャ側が国民投票の結果によって引き出す譲歩は、それほど大きいものでもなくなりそうである。真偽は確かではないが、ロイターではギリシャ政府の新提案は国民投票で否決された債権団の最終提案と大差のないものだと報じられている。債権団の最終提案の内容は以下である。

以下の記事で述べた通り、これはギリシャの銀行の資金切れまでに合意しなければならないという時間制限のためである。これは交渉におけるギリシャの立場を弱めるだろう。

ということで、国民投票はNoだったが、ギリシャは債権団と近々合意し、ユーロ圏も離脱しない。これまで話してきたメインシナリオであったと思う。問題は、為替市場がそれほど動かず、ギリシャの株式市場も開いていないため、予想が適度に当たったにもかかわらず、市場参加者として利益にならなかったことである。

ユーロはもう少し下がれば買いか

ユーロは下がっているが、万一ユーロドルが1.05を割り、かつユーロ圏の資産株の軟調が続けば、ユーロ買い、資産株買いのクロスポジションを作ることができる。

ギリシャが合意すればユーロは短期的に回復するだろうし、ECBの緩和継続が見込まれる場合には、ユーロが下がって資産株が上がるだろう。資産株の銘柄は、パリの不動産会社Gecina (EURONEXT:GFC、Google Finance)やフランクフルト国際空港を保有するFraport (XETRA:FRA、Google Finance)などである。

日本のメディアの見当違いなギリシャ観

さて、今回興味深かったのは、日本の報道がほとんどドイツの味方であったことである。当事者の欧州での報道でさえ、それほど一方的ではなかった。

日本のメディアのほとんどは国民投票でYesが合理的な結果だと報じていたし、結果彼らは成り行きを予想することができていない。これまで書いてきたように、Noは何ら驚くべき結果ではなく、ユーロ圏を離脱しないだけギリシャは譲歩しているのである。

日本で報じられているように、ギリシャ問題はギリシャ人が怠惰なせいではない。経済学的に間違っているのはドイツの政治家である。この点で、主要な経済学者もヘッジファンド・マネージャーも一致している。この問題の経済学的、文化的背景についてはそれぞれ書いたので、以下の記事を参考にしてほしい。

株式市場の世界的な荒れ模様とは対照的に、個人的には金融市場はあまりに凪であると思っている。ポジションをほとんど持っていないからである。個別株は別として、マクロ的なポジションはほとんど精算してしまった。投資先が見つからないのである。

株式は高すぎ、債券はバブルであるが一度の利上げでは揺るがず、ドル円もユーロドルもまだ高く、金の買い時はまだであり、ギリシャの株式市場は閉まっている。ポジションをこれほど精算したのは、2013年5月の日本市場の急落前以来である。

投資先が見つからないためにわたしのポートフォリオのほとんどが現金になるというときには、経験的には市場が急落することが多いが、急落に賭けているわけではないので、それを予想するわけでもない。

他の市場参加者はどういうテーマに賭けているのだろうか? 今ドル円を積極的に買っている投資家は、122での買いを正当化できているのだろうか?

各人、少なくとも自分のポジションを精査することをお勧めする。中国市場の下げは、ちょっと深刻になりそうである。