世界最大のヘッジファンド、中国株を売却して米国株買いポジションを維持

引き続き機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はレイ・ダリオ氏が運用する世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterのポートフォリオを見てゆきたい。

前回の記事では同じく伝説的なファンドマネージャー、ジョージ・ソロス氏のポートフォリオについて報じた。

ソロス氏は今年前半の株価下落を予想した投資家の1人である。

そしてダリオ氏もまた、今年前半の下落相場で大きな利益を上げた。おおっぴらには書かれていないが空売りが大きく寄与したと推測している。

前回の記事ではソロス氏がハイテク株の買いに回り、ハイテク株の短期的な反発を取りに行っている様子を報じた。ではダリオ氏はどうだろうか。

新興国株ETFポジションを縮小

今回の6月末時点のポジション開示でまず目に付くのは新興国株ETFが減らされていることである。以下はBridgewaterの保有する新興国株ETFのポジションの規模と株数の変化である。

  • iShares Core MSCI Emerging Markets ETF: 7.5億ドル (-4%)
  • Vanguard FTSE Emerging Markets ETF: 6.4億ドル (-32%)

Vanguardの方がかなり減らされている。どちらも中国株を大きく保有するETFである。ではVanguardの方のチャートがどうなっているかと言えば、次のようになっている。

微妙な値動きである。Form 13Fは6月末の開示だが、必ずしも6月末にポジションを減らしたわけではないことを考えると、ここからの撤収は妥当な選択だろうか。

米国株はそれほど増減なし

一方で、Form 13Fに報告されているポジション総額は236億ドルと、前回の248億ドルからそれほど変わったわけではない。

新興国株ETF以外の米国株ポジションがどうなっているかと言えば、例えばS&P 500のETFなどは増えている。括弧内は株数の増減である。

  • SPDR S&P 500 ETF: 7.0億ドル (-4%)
  • iShares Core S&P 500 ETF: 6.4億ドル (+51%)

読者には周知の事実だろうが、米国株は6月末以降反発している。

一方で米国個別株は少しずつ減らされているものが多いことから、米国株全体に対してはそれほど変化があったわけではないということになる。ポートフォリオの筆頭銘柄は以下の2つである。

  • Procter & Gamble: 9.7億ドル
  • Johnson & Johnson: 7.7億ドル

結論

ということで、ダリオ氏は中国株を更に手仕舞い、米国株については維持したということになる。7月以降は米国株のパフォーマンスの方が良いので、この選択は正しかったと言えるだろう。

ソロス氏と較べると、米国株の中でも特に反発が大きかったハイテク株を買いに行ったソロス氏の方が今回は一枚上手と言うべきだろうか。

だがソロス氏もダリオ氏も銘柄選択はしたものの、ポートフォリオの総額はほとんど変わっておらず、株式市場全体への姿勢は変わったようには見えない。Form 13Fには空売りポジションが載らないので、どちらも買いに加えて空売りポジションがあると推定すべきだが、買いポジションを見るだけでも彼らの姿勢は読み取れる。

だからどちらも米国株の長期的上昇に賭けているようには見えない。ソロス氏は最近は表に出てきていないが、ダリオ氏は米国株の見通しについて語っており、当然のポートフォリオとも言えるだろう。

一部の投資家は最近の株価反発に湧いているが、著名投資家の長期的な見方は大して変わっていないように読み取れる。

短期的に反発している時だからこそ、長期的な見通しを再確認することが重要だろう。