ガンドラック氏: ドル安は始まった、金利は下がり、コモディティは上がる

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで、アメリカの金利動向やドル相場、コモディティ市場について予想しているので取り上げたい。

アメリカの長期金利

アメリカのインフレ率下落予想を当て続けているガンドラック氏だが、では彼は今何に投資をしているのか。

債券の専門家であるガンドラック氏はまず長期金利(10年物国債の金利)について次のように言っている。

10年物国債の金利はピークを過ぎたと去年の9月に言ったが、わたしは正しかった。

アメリカの長期金利は次のように推移している。

債券にとって金利低下は価格上昇を意味するので、10年物国債は今のところ底を打っているということである。

投資対象としての米国債

ガンドラック氏は米国債について次のように述べている。

長期債を保有している。

短期債も選好しているが、短期債は好景気が続いた場合には気をつけなければならない。ドアの近くで踊っているようなものだ。

長期国債は経済成長率やインフレの長期見通しに影響を受ける一方で、短期国債は直近の政策金利の動向に影響を受けるので、もし利上げが続けば短期的には下落することになる。

だがガンドラック氏は米国債全般について強気のようだ。彼はこう続けている。

金利はピークを迎えたと思う。米国債を保有することに何のためらいもない。

ドルとコモディティ価格

金利低下を予想するのであれば、金融市場では他にも出来そうなトレードがありそうだ。真っ先に挙がるのがドルと、あとは貴金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティ銘柄だろう。

ガンドラック氏は次のように述べている。

ドルは下落のトレンドが始まっただろう。コモディティ価格の上昇を見れば分かる。コモディティもドルが弱まっている今ではそれほど悪くないかもしれない。

コモディティ銘柄は基本的にドル建てで取引されているので、コモディティのドル建て価格上昇はドルが安くなったことを意味する。

例えば原油価格は次のように推移している。

7月以降短期的な上昇トレンドが続いている。

コモディティ市場については先月以下のように書いておいた。

仮にパウエル氏とGDP統計の両方が「インフレは減速したが経済は減速していない」相場を止めない場合、あと数ヶ月ほどこの相場が続く可能性はある。

その場合、一番恩恵を受けるのは、これまで下落を続けてきたコモディティ市場だろう。

FOMC会合とGDP統計の両方は実際そのようになった。

だからコモディティの価格上昇が続いている。農作物はロシアによる黒海封鎖の情勢に左右されているが、突発的な上昇はあるにしても、結局はコモディティ全体のトレンドに足並みを合わせざるを得ない。

景気後退とコモディティ市場

マネーサプライの減速の速さから見ると、来年前半には景気後退が来る可能性が高い。

景気後退が来れば、コモディティ価格は当然下がることになる。

だがそれまでにはまだ時間があり、今年の4-6月期のGDPにはその兆候は予想通りほとんど表れなかった。

だから「インフレ率は下がってきたが景気は悪くない」短期トレンドがまだ続いている。新たなGDPはあと3ヶ月発表がないので、これを止められるとすればCPI(消費者物価指数)統計か、あとはシリコンバレー銀行破綻のような突発的なイベントが起こる可能性くらいだろうか。

ガンドラック氏は来年までずっとインフレ率の下落を見込んでいるようだが、上記の短期トレンドが続いた場合、コモディティ価格が先月を大底として上昇してゆく可能性がある。

その場合、2020年のコモディティ価格上昇が2021年のインフレに繋がったように、2023年のコモディティ価格上昇が2024年のインフレ第2波に繋がる可能性について投資家は考えるべきだと思うのである。

統計データや突発的なイベントによって景気後退の知らせが来ることは筆者にとってメインシナリオである。だがそれがいつ来るかということが問題になる。

もしその知らせが来る前にインフレ低下により金利が低下し、コモディティ価格が十分以上に上がってしまった場合、次のシナリオは景気後退よりもインフレ第2波である。

いずれにしても経済データ次第である。次は雇用統計、そしてその後のCPIということになる。引き続き報じてゆくので、楽しみにしておいてもらいたい。