サマーズ氏: 米国の金融引き締めは効いていない、米国経済は再加速へ

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューでアメリカ経済の見通しについて語っているので紹介したい。

強かった雇用統計

最近発表された3月の雇用統計は失業率が低下し賃金上昇が加速するという強いものだった。

この雇用統計についてサマーズ氏は次のようにコメントしている。

強い経済指標だった。労働者は30万人増加し、過去のデータも上方修正された。家計の状況も強く、労働時間も増え、賃金も年率10%で増加している。

今回のデータ単体で見れば間違いなく強いデータだったと言えるだろう。一方で失業率はそれでも長期的にじりじりと上昇を続けており、景気後退の前触れとなっている。

だからアメリカ経済はこれから加速するのか減速するのか、インフレ率は現在の3%台から上がるのか下がるのかということが議論され続けてきた。

専門家の中でも意見が割れた中でサマーズ氏は一貫してインフレ再加速を警告し続けていた人物だが、サマーズ氏は今回のデータでどうやら結論を得たようだ。彼は次のように言っている。

今回のデータは強いもので、経済が再加速していることを示している。

政策金利はどうなるか

だとすれば、5.25%で長らく維持されている政策金利はここからどうなるのか。

マクロ経済学者のサマーズ氏が注目するのは、経済にとって緩和にも引き締めにもならない中立の金利水準である中立金利である。彼は次のように続ける。

今回の雇用統計は多くの人々が期待していたものとはまったく違う結果で、人々が思っているよりも中立金利が大幅に高く、金融引き締めが効いていないという説を支持するものだ。

サマーズ氏はコロナ前とコロナ後で中立金利が大きく上がったと主張している。財政赤字が増えていることなどの理由により、金利をより高くしなければ経済を冷却することができないと考えているのである。

中立金利は経済データとして目に見えるものではないため、経済学者は何処まで金利を上げれば引き締めと言えるのかということを自分で考えなければならないが、一方でFed(連邦準備制度)のパウエル議長は最近次のようなことを口走った。

中立金利がこれからどうなるのかという問いは、現行の金融政策にはそれほど関係がないものだと正直思う。

これについてサマーズ氏は次のようにコメントしている。

中立金利を知る必要がないと主張することは、速度計を見ずに車を運転できると主張することに等しい。それは単に間違っている。

何処まで金利を上げれば引き締めと言えるかを知らずに、パウエル氏はどうやって引き締めをするつもりなのだろうか。

パウエル議長の金融緩和

そのパウエル議長の考え方は今の彼の金融政策を象徴しているようだ。サマーズ氏は次のように言っている。

アメリカの金融状況は極めて緩和的で、実際Fedが引き締め政策を開始する前よりも緩和的な状況となっている。クレジットスプレッドや株式市場の状況を見れば、引き締めは評価できる形で行われていないことが分かる。

実際、Fedは引き締めではなく緩和をしている。今年3回の利下げを予告しているだけではなく、マネタリーベースが次のように増えているからである。

つまりアメリカは実質的に量的緩和している。それが株式市場が上がり実体経済が過熱している理由である。

だからサマーズ氏は次のように言う。

6月に利下げを行なうことは不適切だろう。

結論

だがパウエル議長はそれを不適切と考えるだろうか。何人かの専門家はパウエル氏が意図的にインフレを無視し金融政策を緩和的にしていると疑っている。

それが最近の金価格急上昇の理由でもある。

パウエル議長はインフレを再加速させるのだろうか。