ローゼンバーグ氏: 株価反発は米国株から逃げるための絶好の機会

引き続き、Rosenberg Researchのデイヴィッド・ローゼンバーグ氏の、デイヴィッド・リン氏によるインタビューである。

今回は4月の米国株急落からの株価反発について語っている部分を紹介したい。

4月の株価下落

米国株はトランプ政権の関税政策をきっかけに4月に急落したが、その後関税が一部延期されたことから米国株は反発している。S&P 500は次のように推移している。

この株安にハマった人は多かっただろうが、年末から米国株のバリュエーションについて警告していた人物がいた。ローゼンバーグ氏である。

筆者の意見でも米国株は元々極めて割高であり、有望な個別銘柄を持ちたい場合も市場全体の下落リスクはヘッジしておくよう筆者も去年から警告していた。

そして米国株は下落した。関税はきっかけに過ぎなかった。割高な市場は表面的にはその時のニュースのせいで下落したように見えるが、本当の原因はそれまでにバブルが形成されていたことであり、今回それが悲観的なニュースによって弾けかかった、というのが実際のところなのである。

株価反発は絶好の機会

そして株価は関税の延期によって一旦元に戻った。株式市場のこの状況をローゼンバーグ氏はどう思っているのか。

ローゼンバーグ氏は次のように言っている。

2月から4月までの株安にはまり、「株価が20%も暴落した」と顔面蒼白になっていた人にとって、この反発は神からの贈り物だ。ポートフォリオを精査し、リスクを下げるための絶好の機会だ。

米国株を元々割高だと考えていたローゼンバーグ氏からすれば当然の発想である。

株式市場のこの状況について確実に言えることが1つある。今年の相場は、株価の上昇に賭ける投資家には買い場を与えてくれ、米国株が高いと考えている人には二度目の逃げ場まで提供してくれている。

こんな親切な相場はない。米国株に強気にせよ弱気にせよ、投資方針が一貫している人ならば、ここまでで損している人は誰もいない相場である。

筆者は有望な個別銘柄の買いと、それをヘッジするためのS&P 500の空売りを両方持っているので、下がったときには好みの個別銘柄を有利な価格で買い足して空売りを減らし、上がった時には空売りを仕込んで個別銘柄の利益確定をしているので、ここ数ヶ月の乱高下では良いことしかない。

筆者の相場観については以下の記事で解説している。

投資方針の一貫性

少なくとも考えが一貫しているということが重要なのである。例えば、米国株が下がった時に「買うべき銘柄がもっと安くなった」と喜ぶのではなく、「買った株が下がってしまった」と思った人は、米国株を買うべき根拠が自分の中にない投資家である。

そういう人は株安の時に安値で売ったか、あるいは売っていない人は、また上がったことで単にほっとしているだろう。

だがローゼンバーグ氏は次のように言う。

市場はもう一度チャンスを与えてくれている。だがほとんどの人がどうしているか見てみるといい。強欲とはそれほど強い感情なのだ。

賭けてもいいが、リスクを減らして逃げるためにこの機会利用するという正しい選択をする代わりに、ほとんどの人はその真逆のことをするだろう。

投資戦略の一貫した投資家は安くなったものを買い高くなったものを売る。しかしそうでない投資家は上がったものを上がってから買う。個人投資家のこうした姿勢を、世界最大のヘッジファンドの創業者であるレイ・ダリオ氏は以下の記事で酷評していた。

この記事では次のように書いておいた。

多くの人々は1ドルのりんごが2ドルになれば割高になったと考えるが、1ドルの株式が2ドルになれば買いたいと思い始める。

今年、株価は大きく下がったが、その後持ち直した。それで個人投資家たちが「やっぱり自分の選択は正しかったんだ」と思い始める。

しかしヘッジファンドという概念を創始したジョージ・ソロス氏は、著書『ソロスの錬金術』に収録されている投資日記で次のように書いている。

強気相場は小爆発にときおり見舞われながら続いていく。そうしているうちに、だれも小爆発を恐れなくなる。このときこそ、大暴落の条件が整ったときなのである。

バブル相場のいつもの光景がまた始まっている。NISAの投資家たちは大丈夫だろうか。


ソロスの錬金術