ジャンク債空売りを開始、ロシア国債投資はロシア株へ移行

ジャンク債空売りは後述する理由でタイミングが難しいのだが、今後6ヶ月ほどは空売りを行う良い期間になるだろうと結論した。世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏はジャンク債ETFを買っているので、彼の動きに逆行することになる。

しかし米国の金融引き締めが継続する今後6ヶ月に関してはこの読みで正しいはずである。順を追って説明しよう。

金融引き締めとジャンク債

先ず、アメリカの金融政策を担うFed(連邦準備制度)は利上げとバランスシート縮小という2つの金融引き締め政策を同時に進めている。この政策はイエレン現議長のもとで決定され、2018年2月にパウエル次期議長に交代した後も継続される見通しである。

さて、先ずは利上げとバランスシート縮小の違いから考えたい。利上げは短期金利を直接操作する金融政策であり、今後の短期金利の見通しが中長期の国債の金利に影響することで、ドル相場全体の金利が上昇してゆくことによって金融引き締め効果が現れる政策である。つまり、影響の経路は次のようになる。

  • 短期金利 -> 中期金利 -> 長期金利 -> 超長期金利やジャンク債利回り

しかし、利上げの見通しについては金利先物市場において明確に織り込みの度合いが表れている。現時点では、2017年12月の利上げ確率が100%、そして2018年8月までに71.7%の確率でもう一度以上の利上げがあることを市場は織り込んでおり、それ以上でも以下でもない。数字で明確に織り込みが表れるからである。その数字を踏まえた上で、長期金利やジャンク債の金利などが決められている。

しかし、バランスシート縮小の方は短期金利ほど理論的ではない。投資家はこの政策がどのような経路で株価や金利に影響を及ぼすのかを良く考える必要がある。

バランスシート縮小

Fedのバランスシート縮小とは、Fedが量的緩和によって買い入れた債券の保有量を減少させる政策である。Fedによる債券の買い支えが無くなる分については、市場に参加している他の投資家によって折り合いが付けられることになる。ここまでは明確である。

問題は、この折り合いがどのように付けられるかである。Fedは国債や不動産担保証券などを(実質的に)市場に放出するが、必ずしも放出された資産が影響を受けるとは限らない。例えば、仮に10年物国債(長期国債)に大きな売り物が出たにもかかわらず、相対する大きな買い支えがあり、債券価格が変わらなかった(つまり金利が動かなかった)場合、その買い支えを行なった資金が元々投資されていた資産クラスに影響が出るのであり、10年物国債の金利(つまり長期金利)に影響が出るわけではない。お分かりだろうか。

通常、米国が金融引き締めを行う場合、「アメリカがくしゃみをすれば別の国が風邪を引く」と言われるように、その影響は米国債よりも他の資産クラス、典型的には新興国の資産など、よりリスクの高いとされている資産から資金の引き上げがあるものである。上記のように考えれば、資金が引き上げられる分のひずみは少なくとも何処かには出なければならないことになる。そしてアメリカ国内では米国債よりも、倒産の可能性が高い企業の社債、つまりジャンク債などから先に売られてゆくのが王道である。

一方で、ドル相場がどう動くかということは、主に長期金利に影響が及ぶかどうかにかかってくる。しかし、長期金利に影響が出るとすれば、それよりもジャンク債市場に影響が出るのが先ということになるだろう。だから、少なくともこの段階では、ドル相場をどうこうするよりも先ずジャンク債空売りに資金を置いておくのが安全だという結論に達したため、そうすることにする。ここ数日のドル安でジャンク債ETFは安値から反発しており、この値上がりを利用させてもらおう。

ジャンク債空売りのリスクヘッジ

また、ジャンク債を空売りする一方で言及しておきたいのが、現在行なっているロシア国債の買いについてである。ロシア国債は8%前後の高金利資産であり、しかも産油国ロシアの経済については原油暴落の後遺症から立ち直りつつあることを指摘してきた。

ただ、アメリカの金融引き締めが進めば、新興国通貨はやはり下げを免れないだろう。高金利通貨は為替ヘッジが出来ないので、ルーブル建てで投資するほかなく、撤退も考えたのだが、国債ではなくロシア株に移行する形でロシアへの投資を継続したい。短期的なルーブルの見通しについては弱気なのだが、アメリカのジャンク債は主にシェール関連企業が発行しているため、原油高シナリオがジャンク債の下落を阻む可能性はある。これをロシア株への投資でヘッジしておきたいのである。

ルーブル下落リスクについては、通貨安がプラスに働く輸出株や不動産株に投資をすることで緩和されるだろう。

結論

前回の記事でも述べた通り、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏はアメリカの金融引き締めが失敗するシナリオに賭けているようである。

しかし、筆者は少なくとも半年程度は金融政策の逆転は行われないと読んでいる。根拠は米国GDP統計の分析である。

したがって、ジャンク債の空売りを仕掛けるならば、その空白の期間となる半年以外にないだろう。高金利の通貨や債券は空売りが難しい。売り方はポジションを維持する限りその高金利を買い方に払い続けることになるので、タイミングよく空売りをしなければ大惨事となる。

著名投資家のジム・ロジャーズ氏は2015年からジャンク債空売りをしているそうであり、つまりはジャンク債の金利5%を2年も支払い続けていることになる。タイミングは重要である。

一方で、金融引き締めはいずれは頓挫するという点で、筆者とダリオ氏は一致している。その時には逆に、ロシア国債やジャンク債への格好の投資機会ということになるだろう。そういう目で各資産クラスを見ておくことは重要である。相場が変わった時に、どの資産クラスに目を向けるべきかがすぐに分かるからである。