新型コロナウィルスで世界同時株安はいつまで続くか 株式市場の底を予想する

中国武漢発の新型コロナウィルス肺炎がヨーロッパとアメリカにも広がり株価が暴落しているが、下がって上がる相場だということは1月から言っている通りである。しかしそろそろ株価の底値について真剣に考え始める頃合いだろう。

1月から現在まで

順番に状況を整理してみよう。まず年末年始に中国では新型ウィルス発生の噂が囁かれ始めた。武漢ではウィルスについて最初に警告を発した医師が当局に拘束されるなどウィルス隠蔽の動きが見られたが、1月半ばには武漢当局も状況を隠しきれなくなり、中国で新型ウィルス発生のニュースが世界中に流れた。

しかしその時点ではほとんどの人々がヨーロッパやアメリカへの拡大など考えてもみなかった。多くの日本人も日本には来ないと考えていたことだろう。

以下の記事で紹介した通り、世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏は相場予想で「感染の中心地となる国では株価への影響が大きいが、その他の国では影響は限られる」との見解を示していた。

しかしウィルスは日本にもヨーロッパにもアメリカにも広がった。2003年のSARSの時には日本には来なかったが、人の動きがグローバルになったという点で当時と今は違う。

日本での感染拡大についても予測可能だったと言える。日本で感染者数が少ないとされていた時点で実際には隠れた感染者が多数おり、そもそも感染者が検出されないシステムとなっていたことを以下の記事では指摘しておいた。

それで日本での流行拡大で下落する株式銘柄をいくつも挙げておいたわけである。これらの銘柄は既に暴落している。

しかしそろそろ逆を考え始める時期だろう。つまり底値はいつかということである。

世界同時株安はいつまで続くか

何度も繰り返しているが、来年になれば新型ウィルスのことなど誰も覚えていない。それでもSARSの頃の例などを参照すると、流行拡大のピークまでは株価は下がり続けるということを1月の時点で分析しておいた。

今回の新型ウィルスがSARSと同じ規模で感染拡大するのであれば下落はまだ序盤か中盤ということになるだろう。

しかしSARSやMERSや今回の武漢のウィルスのようなコロナウィルスの感染はいずれ収まる。実際に中国南方航空の株価も2003年5月にSARSがピークを迎えると同時に底打ちしている。

今回のウィルスも4月前後がピークとなる可能性が高い。

下がって上がる相場だということである。1月からそう説明しているのだが、それでも市場はそれを数ヶ月かけてなぞらなければならないのである。

ピークについては「4月前後」という1月時点での予想を筆者は今も維持しているが、3月半ばとなった今、もう少し具体的に考えて行っても良いだろう。

先ずはレイ・ダリオ氏重要なコメントを思い出そう。

一般的にはこうした一生に一度のレベルの災害はまず最初に過小評価され、そして状況が進むにつれて過大評価される。そしていずれファンダメンタルズが逆回転し始める(例えばウィルス感染が拡大から縮小になる)。

これは完全にダリオ氏の予想通りである。状況はまず過小評価され、そして今過大評価されつつある。経済への影響は長くとも半年程度のものであり、短期的な影響が大きいとしても企業の来年の財務諸表には影響を与えない。それでも株は売られる。アメリカは利下げを行なったが、株価には効果がなかった。

隔離措置などで人々の消費が減っている状況を金融政策でどうにかすることはできないからである。2008年のリーマン・ショック以降上昇を続けてきた株式市場は株高に慣れすぎている。2018年の世界同時株安などは経験してきたが、それは金融政策で解決可能な問題だった。

しかし思い返せば株式市場は金融政策ではどうにもならない下げ相場を長らく経験していないのである。それで完全にパニックになっている。

しかし金融政策が効かないというのは実は良いニュースである。株価は純粋に新型コロナウィルスの流行拡大に反応しているということであり、それは流行状況が反転し始めれば株高で反応するということである。つまり、この状況はわたしが1月に予想した「流行のピークが株価の底値」という予想を裏付けていると言える。

では流行のピークはいつだろうか? これについては1月よりもはっきりとしたことが言える。

流行のピークはいつか

現在の感染状況だが、感染者数はイタリアで1万人前後、ドイツ、フランス、スペインで1000人以上、アメリカでは600人程度である。イタリアではまずミラノを含むロンバルディア州が隔離され、続いてイタリア全土の隔離措置が決定された。

この中で最初に収束に向かうのはイタリアだろう。中国では1万人を超えた1月末から、感染者の増加数がピークを迎えるまでの期間は1週間程度だった。イタリア人が中国人ほど隔離措置に従うかという問題と、ヨーロッパ人はマスクをしていないという問題がある一方で、イタリアと中国では人口が大きく異なるため、イタリアでの1万人は中国での1万人よりも事態が既に進行しているという側面もある。

こうしたことを総合的に考慮すると、イタリアでの流行のピークは大雑把に3月後半頃だろうと推測することができる。ドイツやフランス、スペインでは少し遅れて3月末だろうか。

そして金融市場への影響が一番大きいアメリカだが、600人から1万人に達するまで中国では1週間、イタリアでは1週間半かかっている。そうするとイタリアのピークから10日ほど遅れたとして、アメリカでの流行ピークは4月前半だと予想される。

アメリカについては正確な予想を立てるにはまだ早く、今後の記事で逐次微調整を行なっていくつもりだが、現在の状況では1月に立てた「流行ピーク=株価の底値は4月前後」という予想を「3月末から4月初め」というように更新することはできるだろう。

流行のピークで株価は底打ちするのか

さて、投資家にとって最大の問題は感染状況が反転すれば本当に株価は立ち直るのかということである。筆者の現時点での予想はYesである。ただし、「それまでにアメリカが金融緩和の余地を使い果たさなければ」という条件付きである。

まず第一に、現在の株価は完全に流行拡大に反応している。流行拡大に反応する相場は流行縮小にも反応する。そして何度も繰り返すが、来年になれば新型ウィルスのことなど誰も覚えていない。

しかし最大の問題はアメリカの中央銀行の緩和余地がなくなるリスクである。日本とヨーロッパが既にマイナス金利と量的緩和を実行している状況でアメリカまで同じ状況に追い込まれた場合、世界中の中央銀行に緩和余地がなくなってしまう。以下の記事で書いた通り、それは金融緩和を頼りにして2008年から上昇を続けてきた株式市場にとって死の接吻となる可能性がある。

アメリカは緩和余地を使い果たすだろうか。3月18日のFOMC会合では0.5%の利下げが予想されているが、これが予想通りである場合、アメリカにはゼロ金利までに更に0.5%の利下げ余地が残される。更にアメリカでも中央銀行が株式を買うという話が出ている。

利下げ余地が残っており、かつ株式買い入れという手段も残されている場合、アメリカの中央銀行が弾切れであるとは言えないだろう。つまり、パウエル議長が18日の利下げ以外に余計なことをしない場合、投資家は新型ウィルスの流行状況以外のことを考える必要がなく、流行のピークで株を買えるということである。

ということで、筆者はパウエル氏が余計なことをしないことを祈っている。3月2日の緊急利下げが既に余計な措置なのである。

それが叶えば投資家にとって状況は非常に簡単になる。アメリカの流行ピークが18日より遅くなりそうだということも投資家にとって朗報だろう。パウエル氏の挙動を見てから買いの判断ができるからである。

ということで、投資家にとっては非常に大きなチャンスが来そうである。18日のFOMC会合を含め、今後も市場動向については適宜報じてゆくので楽しみにしてほしい。これまでの記事も参考にしながら現在の相場を上手く捌いてもらいたい。株式以外にもチャンスはあるのである。