米国の利上げと中国の景気減速への懸念で8月に始まった世界同時株安は一度リバウンドしたものの、その後値を下げ、再び8月24日の安値に近づきつつある。
これまでも言っているように、世界同時株安の原因は、株を買うべき要因が世界的に存在しないことであり、日銀やECB(欧州中央銀行)の追加緩和やFed(連邦準備制度)の利上げ撤回など新たな要素がなければ中長期的な株安は変わらないだろう。
米国の利上げと中国の景気減速への懸念で8月に始まった世界同時株安は一度リバウンドしたものの、その後値を下げ、再び8月24日の安値に近づきつつある。
これまでも言っているように、世界同時株安の原因は、株を買うべき要因が世界的に存在しないことであり、日銀やECB(欧州中央銀行)の追加緩和やFed(連邦準備制度)の利上げ撤回など新たな要素がなければ中長期的な株安は変わらないだろう。
世界経済は冗談のような大嘘に満ちている。量的緩和は財政ファイナンスではなく、中国経済は年率7%成長しており、金融緩和は通貨切り下げ競争ではないというものである。
量的緩和は国債を政府ではなく市場から買い入れれば財政ファイナンスではないとされ、中国経済の成長率は他国の要人さえ7%前後を前提に発言している。通貨切り下げ競争に至っては、デフレや失業率など自国内の口実さえ思いつけば金融緩和は通貨切り下げではないとされ、米国は日本やユーロ圏の量的緩和を非難せず、中国の控えめな金融緩和のみを非難している。
こういう子供でも分かるような大嘘を政府が付かなければならないのは、その背景に彼らにとって重要な意図と行動があるからであり、世界経済はそういった意図に基づいて動いてゆくのである。本稿ではこういう嘘がどういう背景で運営されているかを明確にし、それが金融市場に与える影響を考察する。
9月16日から17日のFOMC会合を終え、Fed(連邦準備制度)の連銀総裁たちが今回の決定についてコメントをしているが、そのうちアトランタ連銀総裁のロックハート氏の発言のなかに重要なコメントがあったので言及しておきたい。
ロイター(原文英語)によれば、Fedは今回の会合で政策金利を維持することを決めたが、この決定についてロックハート氏は「現在の市場のボラティリティに対するリスク管理という観点に多くのウェイトを置いて判断した」と述べており、市場の不安定性を考慮したことを表明した。
また、ボラティリティは「より本質的な病巣の兆候」(a symptom of more fundamental ills)である可能性があるとし、進展をもう少し見守るのが良いと考えたとした。
速報でも報じたように、 9月17日、Fed(連邦準備制度)は政策金利を維持し、利上げを先送りにする決定を下した。今後の方針については、引き続き多数の会合参加者が年内の利上げを想定しているという従来の表現を続けたのみで、利上げについてこれまで以上の情報発信をすることはなかった。
表題に「不可解な」と書いたのは、以前の記事での予想、つまり、利上げをしない場合は近日中の利上げをはっきりと表明するという想定が外れたからである。この想定が外れた場合に何が不合理であるのか、そしてその矛盾は何を暗示しているのかを、この記事で考えてみたい。 続きを読む 米国利上げは延期、やや不可解なFOMC結果をどう解釈するか
2015年8月に株式市場が急落した後、市場はいまだ軟調であるが、以下の記事に紹介した通り、Fed(連邦準備制度)の姿勢は変わらず利上げに積極的である。
世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏などは米国の量的緩和再開を期待していたようだが、そのような投資家の希望的観測が当たらないということは、ここで一貫して主張してきた通りである。上記の記事では世界同時株安後の連銀総裁たちの発言を引用したが、それらの発言通り年内利上げは既定路線だと見るべきだろう。
さて、これらの状況を踏まえて投資家は今後の戦略を考えなければならない。基本的にはここに何度も書いてきた通りなのだが、重要なポイントを纏めてみよう。
米国の利上げと中国の景気停滞を原因とする世界同時株安が続いているが、米国株が高値から10%ほど売られる中、市場が短期的なリバウンドを見せるかどうかが注目される。
8月25日の市場は国によって異なる反応を見せた。先進国で一番最初に始まった日本市場は約3%安で開場し、正午にかけて前日比プラスに持ち直す場面も見られたが、再び売られ、日経平均は結局3.96%安で引けている。
量的緩和が今年始まったばかりの欧州市場は強い反発を見せ、ドイツ市場は強気のまま4.97%高で引けた。先程引けたばかりの米国市場は序盤から中盤まで強く推移したものの、最後に売られてS&P 500は1.35%安で引けている。
米国利上げ前の世界的な株式市場急落は、ここでもずっと言及してきたことで、読者のなかに驚きはないだろうが、それでも良い銘柄まで売られている現状ではパニックになりかねないので、長期的に何が不変なトレンドで、急落のなか何を拾えばいいのかを再度纏めておこう。
円安トレンドは不変
先ず、リスクオフでどれだけ円高になろうとも、万一米国が利上げを撤回しようとも、円安は不変のトレンドである。
利上げとは、自国の経済の状況に照らして中央銀行が自分の裁量で決められるものと思われがちだが、実際はそうではない。他の中央銀行の状況によって大きく左右されるのである。
事実、Fed(連邦準備制度)は利上げの必要性に迫られており、米国が株式市場や債券市場の暴落を望まない限り、実際のところFedに選択肢はない。そして中央銀行に選択肢がない状況とは、投資家が中央銀行の動きを予想できる状況であり、グローバル・マクロ戦略にとって格好の投資機会なのである。
ドル高についてはこれまで、ドル高が行き過ぎればFedは利上げを止めるどころか量的緩和を再開することもできると書いてきたが、債券投資家のグロス氏などが主張するように、どうやらFedは量的緩和の危険性に気付いているようであり、しかもその副作用を最小限に押さえるため、随分前から準備をしてきたようである。
コモディティ市場の下落が止まらない。米国の利上げが近いことによるドル高と、中国の景気減退懸念と言えばもっともらしいが、以下の2つの点で強い違和感がある。
米国は確かに大規模な量的緩和を停止したが、米国は買い入れた債券を放出しておらず、まだ利上げもしていないのである。
この時点でもし日本とユーロ圏が量的緩和を停止すれば商品価格は更なる暴落を迎えそうであり、そうなれば世界中で量的緩和を行ったらデフレになったなどということになりかねない。非常に奇妙な事態が起きているのであり、投資家は合理的な説明を考える必要がある。
2015年ももう後半であり、金融市場は金や原油などコモディティ価格の下落、米国の利上げ、中国株の暴落など、様々なトレンドが入り混じる様相を呈している。
これまでの単なる量的緩和相場とは異なる状況であり、単純に中央銀行に従っていれば利益が出るという状況ではない。そこで、ここで一度、世界の金融市場を俯瞰してみたい。個別銘柄よりもマクロ的分析が必要な場面なのである。
米国株
先ず、マクロで見れば米国株は買う理由のない資産クラスである。量的緩和が終わり、利上げを控えていることで、株式から債券への資金流出が懸念されている。ファンダメンタルズで見ればバブルではないが、割高であることは確かである。