引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の、CNBCによるインタビューである。
今回は、ガンドラック氏がこれから選ばれるFed(連邦準備制度)の新議長について語っている部分を紹介したい。
Fedの新議長
Fedの議長であるジェローム・パウエル氏はトランプ大統領が前政権において(共和党支持者であるというだけの理由で)選んだ議長だが、トランプ氏は今では利下げに積極的ではないパウエル議長のことを嫌っている。
そしてパウエル議長の任期は、来年5月で終了になる。それでトランプ政権はもっと金融緩和に積極的な人材を新議長に据えようとしているわけである。
ガンドラック氏は、現在候補となっている人々について次のように言っている。
今名前の上がっている、自分の意見のなさそうな候補についてはあまり気に入っていない。
名前が挙がっているのは現Fed理事のケヴィン・ウォーシュ氏などである。
ソロス・ファンド・マネジメントを運用していたスコット・ベッセント財務長官も元々は候補の1人で、新議長がベッセント氏なら少なくとも他の候補よりはましな金融政策になったかもしれないと思うのだが、ベッセント氏は財務長官の仕事を好み、議長職は辞退したと報じられている。
それであまりぱっとしない人々が後に残った。だからかどうかは分からないが、ガンドラック氏は次のように言っている。
だがはっきりしているのは、トランプ政権の行動原理を考えれば、候補者の面接は「あなたは政権の言うことを聞いてくれますか?」のテストになるだろうということだ。
そして答えがノーなら、あなたは新議長にはなれない。
トランプ政権の金融政策
トランプ政権はどんな金融政策を望んでいるのか? 政策金利を下げることだ。
トランプ政権が気にしているのは、コロナ後の金利上昇で米国債の利払いが財政赤字の半分に達していることであり、ガンドラック氏が指摘しているように米国債の8割は1年以下の短期債だから、政策金利さえ下げれば利払いを大幅に抑えられるからである。
だが、インフレは2%台とはいえ春からずっと上がっている。米国債の利払いばかり気にしていたら、緩和でインフレが上がってしまうだろう。
だからガンドラック氏は緩和が過剰になることを心配しているのである。
ガンドラック氏は次のように言っている。
これがインフレ政策に関してわたしが心配していることだ。
来年の新議長就任
これからどうなるか。タイムラインとしては、これからトランプ政権が新議長を指名し、新議長が就任後の金融政策について話し始め、来年5月には新議長が就任して新たな金融政策が実行される。
ベッセント財務長官は新議長は年内には決まると言っている。
金融市場はこのタイムラインに沿って、来年5月の新議長就任より前から新たな金融政策を織り込み始めるだろう。
ガンドラック氏は次のように予想している。
新議長の姿がはっきりしてくるにつれて、金利がインフレ率より低く保たれ、実質金利がマイナスになるような状況になる可能性がある。
現在、インフレ率は2.9%、政策金利は4%である。このままインフレ率の上昇が続き、利下げが引き続き行われるのであれば、インフレ率が政策金利を上回ることも十分考えられるだろう。
金利がインフレ上昇を止められる水準を下回って推移するとき、アメリカのインフレはどうなるだろうか。一番利益を受けるのはゴールドとシルバーだろう。ガンドラック氏はゴールドがこのまま上がり続けることを予想している。
結局、レイ・ダリオ氏が新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)で予想しているように、アメリカはこれから金融緩和でドルを犠牲にしながらやっていくしかないのだろうか。
ダリオ氏の新著は日本語版が出ていないが、英語が読める人はそちらも参考にしてもらいたい。ダリオ氏によれば、アメリカ経済は日本のようになるそうである。