引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のUBSによるインタビューである。
今回はAI関連銘柄について語っている部分を紹介したい。
アメリカのインフレ
前回の記事でガンドラック氏は、アメリカ経済の動向について語っていた。ガンドラック氏は、アメリカ経済はインフレになるにもかかわらず利下げが進んでゆくと予想していた。
だとすれば、アメリカの経済も金融市場も過熱してゆくことになる。
米国株にとっては過熱のしすぎが金利上昇を招き、遠からず問題になることは予想されるが、少なくとも今のところは米国株は上がっている。
筆者もガンドラック氏も米国株全体には何の魅力も感じていない。割高であり、アメリカの金融緩和に賭けるのであればゴールドを買えば良いからである。
AIブーム
しかし米国株にはそれでも投資家が無視できない一部の銘柄がある。AI関連銘柄である。
ガンドラック氏はAIについて次のように述べている。
AIが退屈な種類の仕事を駆逐し、失業率を上げるかもしれないと考えるのはわたしだけではないだろう。それは既に起こっている。
また、わたしはAIをただの道具だと考えている。AIが人類の文明を終わらせるとかいう終末思想は持っていない。AIはただの新しい道具だ。膨大な量の電気を消費する途方もない計算能力なのだ。
ガンドラック氏は冷静にAIを眺めている。債券投資家であるガンドラック氏は、株価の高騰で熱狂することが性に合っていないということもあるのだろう。
だがガンドラック氏は次のように続けている。
AIは少しゴールドラッシュに似ている。ゴールドラッシュでお金を儲けたのは、ツルハシやスコップやデニムを売った人々であって、ゴールドを掘り当てようとした人々は一般に金持ちにはなれなかった。だがそれらの人々にものを売った人々が金持ちになった。
だからわたしが注目しているのはエネルギーに関連するもの、電力に関連するものだ。それがAIブームをトレードする1つの方法だ。
ゴールドラッシュ
ゴールドラッシュというのは、アメリカで金鉱脈が見つかり、ゴールドを掘り当てるために多くの人々が金鉱山に集結した時のことである。
だが、実際に一番儲かったのは、ゴールドを掘ろうとした人々ではなく(結局掘れなかった人も大勢いた)、採掘に来た人々にツルハシを売ったり、宿や食事を提供した人である。
そして、興味深いことに、トランプ大統領の祖父であるフレデリック・トランプ氏こそが、ゴールドラッシュで不動産王になった人物なのである。
トランプ氏(祖父)はゴールドの採掘権を購入したものの、自分では掘ろうとせず、周囲にホテルとレストランを建てて経営した。そこには炭鉱夫がたくさん集まりトランプ氏の店は繁盛したのだが、結局この土地からゴールドはほとんど出なかったのである。
AIと電力
ガンドラック氏は、必ずしもAIが「掘れないビジネス」だと言っているのではない。しかし掘れるかどうか分からないビジネス以前に、眼の前に確実に儲かるビジネスが転がっている。それがガンドラック氏の言いたいことなのである。
ガンドラック氏によれば、それがAIに電力を供給するビジネスだということである。特定の銘柄は挙げられていないが、MicrosoftのAIに電力を供給するために原発を再稼働したConstellation Energyなどは有名である。
株価は次のように推移している。

結論
また、筆者もAIでサービスを提供する会社ではなく、AIの稼働に必要な製品を売る会社の株を買って、大きな利益を挙げた。
そもそもAI銘柄筆頭のNVIDIAも、道具を売る側だろう。
だが、ガンドラック氏はAIに関連する電力株を推奨しつつも、以下の記事でAIバブルはAIが普及する前に破裂すると予想している。
何故ならば、この記事で解説しているように、例えばドットコムバブルではAmazon.comが世界中で使われるようになる前に、その株価は一旦紙切れ同然まで暴落しているからである。
ガンドラック氏は次のように述べている。
新たな技術が出現するとき、人々はあらゆる可能性に興奮しすぎる。
それは、AIが最終的に世界中に普及するかどうかとは関係がない。相場とはそういうものなのである。