2023年金価格推移見通し: 金価格上昇の理由とドル暴落予想

金相場が上昇している。長らく世間の話題となってきたインフレにもようやく減速の様子が見えてきたことが理由である。

これは2022年の物価高騰相場の大きな転換点であり、そしてドル上昇相場の終焉である。ゴールドについてはこれまでも記事にしてきたが、もう一度今後の推移予想について纏めておこう。

金相場の基本的性質

まず最初に金相場がどういう要因で動くのかを説明しておこう。

ゴールドは一般的にはインフレ対策で買われる資産である。インフレとは紙幣の価値が下落することなので、価値の下落する紙幣を持ちたくない人が貴金属や宝石などの現物資産で富を貯蔵しようとする。

だが実際には、インフレが話題になった2022年には金価格はむしろ下落し、インフレが減速し始めてからようやく金価格は上がり始めた。

何故か? まず第一に、金融市場は実体経済に起こることを先に織り込むからである。金価格は実は2020年のコロナ後に暴騰した。以下の記事で報じている。

ゴールドだけでなく、金融市場で取引される貴金属やエネルギー資源や農作物などのコモディティ銘柄は軒並み高騰したのだが、その原因は世界各国で行われた現金給付である。

未曾有の規模でばら撒かれた現金が、株式市場だけではなくコモディティ市場にも流れ込んだ。それが2022年の物価高騰の原因である。

そして金価格が何故2022年に上がらなかったかと言えば、2022年のインフレは2020年に既に織り込まれており、2020年の時点で上がりきってしまったからである。それはチャートを見れば分かる。

アメリカ金融引き締めと金相場

その後、金価格は横ばいを続けてきたが、2022年に入ると下落に転じ始める。アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)がインフレ抑制のために利上げを行ない始めたからである。

アメリカの短期金利は今年次のように推移している。

金融市場におけるインフレは2020年、アメリカにおけるインフレは2021年には既に始まっていたのだが、それまでFedはインフレの脅威を否定して低金利政策を続けていたため、利上げが遅れて今年に入るまでインフレは醸成され続けたのである。

利上げ後のインフレと金価格

だが利上げは行われた。そして高金利はゴールドの天敵である。ゴールドは永遠に金利が付かないが、ドルの金利が上がるとドルを保有するインセンティブが生まれる。

今やドルを持っていれば4%程度の金利収入を得ることができる。それで以下の記事を書いたのを、読者は覚えているだろう。

そこまではドルの天下だった。ゴールドは落ち目で、誰もがドルを保有しようとした。日本ではドル建ての投資信託などが売れたらしい。だがはっきり言っておきたい。このドル高でドルに群がった人々は、去年の末に米国株に群がっていた人々と同じである。

彼らはこれから暴落するものにわざわざ群がり続ける。

インフレとドルの価値

そもそもアメリカのインフレとはドル紙幣の価値下落という意味であり、それを金利上昇で無理矢理価値を保っていたのだが、金利を上げ過ぎると経済が冷え込み、それ以上利上げができなくなる。

それでもインフレが高止まりしている間は利上げを止めると物価が天井を突き抜けてしまう。だからインフレ率が下落しなければ利上げは止められない。

だが2022年のインフレが2020年の金相場に織り込まれていたように、インフレ減速の兆しは夏の時点で既に金融市場に現れていた。

特に重要なのは原油価格の下落である。それが徐々に実体経済にデフレをもたらし始めた。

だからインフレ減速の兆候は事前に表れていた。インフレが減速すれば利上げの天井が見え始める。

これまで金価格を下落させていた高金利が緩まるならば、ゴールドからドルへの資金の流れは逆流するはずである。それで10月4日、筆者はついにゴールドの買いを開始する。

重要なのは毎月発表されるCPI(消費者物価指数)である。そしてついに11月11日、インフレ率の急減速が発表された。

記念すべきドル高相場の終わりである。その後金価格はどうなったか? チャートを掲載しよう。

結論

これは始まりに過ぎない。

これは長らく続いたドルへの資金流入の終わりであり、ドル紙幣の価値下落であるインフレが続いていたにもかかわらず、ドル相場が上昇していたことへの反動が一気に来るだろう。

だからドル建て金価格が上昇しているのである。詳しくはラリー・サマーズ氏とレイ・ダリオ氏のドル相場に関する論争を参考にしてもらいたい。

これまでもそうだったように、物価指数が毎月コンスタントに減速を続ける保証はない。だからインフレ率が発表されるたびに一喜一憂はするだろうが、原油価格や住宅価格や労働市場の状況を考えると、ディスインフレのトレンドは当分続くだろう。

そしてインフレ減速への楽観が行き過ぎるとインフレ第2波が来る。そうすると金融引き締めに逆戻りし、金価格には逆風が来るかもしれない。だがそれは当分先の話である。

それまでは金価格は上昇してゆく。それが中期の見通しである。だが長期的にはインフレ第2波、第3波を経験しながら、1970年代の物価高騰時代のように金価格は大相場を経験するだろう。

当時、金価格は20倍になった。逆に言えばそれだけドルが暴落したということである。

世界の基軸通貨ドルは暴落した大英帝国のポンドのようになるだろう。日本円も良い勝負だが、当面はドルのターンである。