12月米雇用統計でドル円が下落した理由

今年初めての重要な統計発表と言えるだろう。特に、現在減速しているアメリカのインフレの内、まだ減速していないサービス業の主な経費である賃金の上昇がどうなっているのかは、投資家にとって現状で最重要の経済統計と言える。

低下続く失業率

だが慌てずにまずは失業率から見てゆこう。失業率は3.5%となり、何と前回の3.6%から低下した。

チャートを見るといまだ下落トレンドを継続しているように見える。Fed(連邦準備制度)が怒涛の利上げで政策金利をゼロから4.25%まで上げ、経済から資金を吸い取っている中で企業の雇用意欲が衰えていないのは驚異的である。

これだけを見ると、中央銀行は利上げを継続しなければ賃金の上昇を抑えることはできないのではないかと思うだろう。

だが金融市場の反応がどうだったかと言えば、統計発表後ドル安で推移している。ドル円のチャートは次のようになっている。

何故市場はドル安で反応したのか? その理由は上で述べた最重要指標、つまり賃金にある。

賃金が減速トレンドへ

アメリカの平均時給は32.8ドルとなり、上昇率は4.6%で、前月の4.8%から減速した。上昇率のチャートは次のようになっている。

前月までのチャートでは横ばいと言えなくもないチャートではあったが、12月の数字が加わりはっきりと下落トレンドと言って良い形になっている。

ここまでの話を読んできた読者には、このデータが投資家にとって大きな意味を持つことが分かるだろう。以下の記事に書いた通り、原油や農作物のインフレはとっくに収まっている。

住宅市場もコロナ後の給付金バブルが崩壊し下落に向かっている。

だからあとはサービスのインフレだけであり、賃金が下降に向かえばインフレは完全に打倒されることになる。

利上げは停止か

そうなれば当然予想されるのが、Fedの利上げが止まることである。筆者は遠からずFedが利下げ転換することを予想し、今後の政策金利の推移を織り込んで上下する2年物国債の金利低下に賭けるトレードを開始していた。

雇用統計発表後、2年物国債の金利がどう動いたかと言えば、次のように動いた。

年始から強烈に上がり続けてきたアメリカの金利が筆者の予想する方向に曲がろうとしている。

結論

筆者はドル円の空売りもしており、今回の雇用統計は二重の意味で満足する結果となったと言える。

次はCPI(消費者物価指数)がどうなるかである。毎月の経済統計をすべて正確に当てることはできないが、資源と住宅と賃金のすべてが下降方向にある今、少なくとも長期的にはインフレはこのまま減速し続けるというのが論理的な予想ではないだろうか。

今回の雇用統計の結果もあり、筆者は自分のポジションにかなり満足している。読者はどうだろうか。それぞれ経済状況とポジションを比べてみてほしい。