今の中国経済のバブル崩壊は2年後の米国経済の姿を表している

もうずっとやばかったのだが、市場が今更中国経済がやばいと騒ぎ始めている。

中国の不動産危機など

発端は今月前半、中国の不動産会社碧桂園が債券の利払いを行えなかったことである。

2021年に破綻危機に陥った恒大集団に続く中国の不動産業界の大規模な破綻危機である。

恒大集団は実質的に破綻に陥ったものの、キャッシュが見かけ上途切れないように中国政府が計らっているので、一応まだ存在している。

ゾンビ企業を見かけ上延命して何の意味があるのか、と多くの人は思うかもしれないが、しかし結果として市場は中国の問題をもう2年も忘れていたのだから、結局は中国共産党の稚拙なトリックにしっかり騙されているのである。

だが不動産危機は進行していた。そして中国政府が見かけをどうにかしようとも、私企業はお金がなくなって支払いができなくなれば、お金がなくなりましたと言うほかない。それでもう1つの大企業、碧桂園の資金が尽き、まんまと騙されていた西側の投資家たちは現実を直視しなければならなくなっているわけである。

中国における若者の失業危機

そして今度は何かと言えば、中国の国家統計局が若者の失業率の公表を一時中止にしたことで市場がまた騒いでいる。

何故中止にしたかと言えば、中国では今若年層の失業率高騰が問題になっているからである。公式統計によれば、16歳から24歳の若者の失業率は6月に21.3%に達している。

信じられるだろうか? イタリア並みの失業率ではないか。イタリアでは若者の失業率の問題は有名だが、日本の読者にはどれだけ知られているだろうか。

もう2021年から言っていることだが、中国経済は終了している。規模が大きすぎて崩壊に時間がかかっているだけである。

それはアメリカのインフレ危機も同じことだが。

政府が人為的にバブルを作り上げて、それを崩壊させた。中国でもアメリカでも日本でも同じことだが、緩和によって人為的に作り出した雇用は、経済の過熱が終わった時には増加分以上に減少し、通りには失業者があふれかえることになる。

それを回避することはほとんど物理的に不可能である。以下の記事でも説明しているが、20世紀最大の経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏の『貨幣論集』を熟読してほしい。恣意的な緩和は長期的には不況をもたらす。

ハイエク氏の理屈は至極単純であり、読めば分かるはずである。にもかかわらず政治家は何故緩和を止めないのか。ハイエク氏は次のように言っていた。

しかし、短期において支持を獲得することができれば、長期的な効果について気にかける政治家が果たしているだろうか。

緩和バブルの崩壊から失業率の上昇まで

ハイエク氏の理論によれば、緩和によって経済が一時的には持ち上がるが、インフレなり何なりの問題が生じて緩和が続けられなくなり、経済の過熱が冷却された後、失業率が上昇することになる。

中国はバブルが冷却され、失業率が上昇している段階にある。恒大集団の問題から2年も経っているのだから、今中国はその段階にいるのである。

ではアメリカはどうか。恐らく2年前の中国と似たような段階だろう。シリコンバレー銀行の破綻から始まった銀行危機は、「恒大集団は駄目になったがそれが中国経済全体に波及するかはまだ分からない」と市場が思っていた2021年の姿に近い。

あるいは今年前半の銀行危機をリーマンショックにおけるベアスターンズ破綻と見るならば、リーマンブラザーズはこれから破綻するのかもしれない。

いずれにしても中国経済の今の状態はアメリカ経済のこれからの姿を占うのに丁度良い。ちなみにこの2年間、香港ハンセン指数のチャートは次のようになっている。

一方、アメリカの失業率はまだ上昇していない。ハイエク氏の本を読んで理解できる頭があれば、それは「まだ上昇していない」だけだということが分かるはずである。アメリカの失業率は以下のように推移している。

アメリカの失業率はこれから2年ほどかけて上昇してゆくことになる。中国の失敗から学ぶ姿勢さえあれば、アメリカ経済の今後を冷静に予想することができるだろう。

結論

しかし今回、中国政府を褒めて良い点が1つある。都合の悪い統計を改竄して公表を続けるよりは、非公開にすることを選んだことである。中国共産党がやることとしては大きな進歩ではないか。勿論皮肉である。

だが中国共産党の姿を見てやはり中国はと思っている日本の読者がいるとすれば、もっと身近に同じことをやっている人々がいることを指摘しておこう。

日本人がインフレに苦しむ中で、日本政府はインフレ統計に悪質な計算方法の改竄を行なっている。

筆者のでっちあげではないことは上記の記事を読んでもらえば分かるはずである。都合の悪い数字を非公開にする中国共産党よりも巧みなフェイクニュースの作り方だが、それだけが結局は中国と、日本を含む西側諸国の違いである。しかしフェイクニュースの作り方が巧みであることは褒められたことだろうか。

結局、何処の国の人間もやることは同じである。むしろ中国人は中国共産党を信用していないので、彼らは中国政府も西側政府も欺瞞のかたまりであることを知っている。

西側の人間だけが自分たちの国はまともだと思い込んでいる。それはそのまま彼らがまともではない証拠である。

政治の話ならば、それで人は騙せるかもしれない。だが経済は現実を織り込んで容赦なく沈んでゆく。2021年に恒大集団、2023年に碧桂園は沈んだ。アメリカの碧桂園はまだ沈んでいない。アメリカの碧桂園は、2年後の話である。

短期的に相場がどうなるかも重要である。だが長期の見通しを忘れずに今の市場を考えたいものである。


貨幣論集