1月FOMC会合結果で株価が下落した理由

米国時間1月31日、米国の中央銀行Fed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を開き、政策金利を5.25%に維持した。

今年のアメリカ利下げ

金利の維持自体は事前の予想通りであり、いつもの様に問題は政策金利の今後についてFedがどう語ったかである。

前回のおさらいをしておこう。前回のFOMC会合では、Fedは2024年内に3回の利下げを行なうことを示唆した。

それを引き継ぎ、今回パウエル議長は会合後の記者会見で次のように言っている。

政策金利はこの引き締めサイクルにおいてピークにある可能性が近いと考えている。また、経済がおおむね予想通りに進行すれば、今年の何処かのタイミングで引き締めの巻き戻しを開始することが適切となる可能性が高いだろう。

コロナ後の現金給付によって引き起こされたインフレと、その後の大幅利下げも終わろうとしているということである。そしていつ利下げに転じるのかが問題となっている。

利下げのタイミング

今年3回の利下げを見込むFedに対して、金融市場は6回の利下げを見込んでいる。

今年の会合はあと7回しか残されていない。だから金融市場の利下げ期待に応えるためには、次回か次々回には利下げを開始しなければならない。

だがパウエル氏は市場の期待を牽制するように次のように言っている。

良い経済データをもっと見ることを望んでいる。より良いデータを見たいわけではない。望んでいるのは今見ている良いデータが継続することだ。そうすればわれわれが2%インフレへの継続的な道筋にいると安心できる。

そして利下げ開始には時間が必要だとして、次のように言っている。

(前回発表された)会合参加者の(予想の)中央値は今年3回の利下げを行なうというものだった。だが利下げを開始するべきだと感じられるまでには、インフレ率が実際に持続的に2%に向かっている証拠が必要となる。

市場は3月か4月には利下げが開始されると見込んでいる。だがパウエル氏は次のように言う。

今まだ利下げをする段階にはない。今回の会合で利下げの提案はなかった。まだ利下げを活発に議論してはいない。

今日の会合に基づいて言えば、3月の会合で利下げ開始を適切なタイミングだと思えるようなレベルの確信を得られるというのはありそうにない。

3月(の利下げ開始)は恐らくもっとも可能性の高いシナリオ、メインシナリオではない。

金融市場の反応

まず株式市場だが、株式市場はこれに対して株安で反応した。米国株の株価チャートは次のようになっている。

Reutersなどはこの株価下落の原因を、パウエル議長が早期の利下げを否定したからだと報じている。

だがそれでは以下のようにドル円まで下落した理由を説明できない。利下げ否定ならば金利上昇でドル高になるはずである。

株価下落の本当の理由

だから大手メディアの報道は市場の動きの本質を説明できていない。では実際にはどうだったのか。

まず、金利は上がっていない。今後の政策金利の動向を織り込んで推移する2年物国債の金利は次のように推移している。

執筆時点では昨日の下落からやや戻しているが、昨日の時点では金利が下落していることが分かるだろう。

だから金融市場は利下げ撤回を織り込んでいない。市場はむしろパウエル氏の発言を信じていない。次回3月の会合で利下げが行われる可能性さえ、まだ36.5%もあると織り込んでいる。

今年6回の利下げ予想も維持されている。だから市場はパウエル氏のタカ派発言をほとんど真剣に受け止めていない。

では逆に何故金利は下がっているのか。昨日金利が下がったタイミングがいつだったかと言えば、株価の下落タイミングと重なっている。

結論

つまり、金利が上がったから株価が下落したわけではない。チャートを見ればそんな事実はない。事実は何かと言えば、株価が下落してリスクオフで金利が下がり、結果ドルも下がったのである。

では何故株価は下がったのか。誤解を恐れずに言えば、株価の短期的な上下に理由などない。ここでは何度も説明してきたが、米国株はそもそも歴史的な割高水準にある。

割高な株価が下落することに正当な理由などない。正当な理由なく上がってきたから、正当な理由なく下がるのである。

きっかけになったのはパウエル氏の発言である。だが金融市場が利下げ予想を撤回したという事実はない。だから株価が下落しなければならない理由は実際には何1つないのである。

それでも割高な株価は下がる。それが理にかなっていなくとも、無意味なきっかけで下落するのが割高な株価なのである。こうした上下を繰り返し、米国株は年始の筆者の予想の範疇に収まるだろう。

だから著名投資家は米国株以外の選択肢を探している。米国株を買うべき正当な理由があれば教えてほしいものである。