ガンドラック氏、ゴールドの積立投資を推奨

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回は金相場について語っている部分を紹介したい。

上昇した金価格

金融市場で今年上がったものと言えば何だろうか。株式もそうだが、市場をより広く見ている人ならばゴールドと答えるだろう。

金価格は以下のように推移している。

この金相場についてガンドラック氏は次のようにコメントしている。

今年ずっとゴールドには強気だ。

ゴールドは1月第1週の円卓会議で推奨した現物資産だが、ここまで上がるとは思っていなかった。だが相場とはそういうものだ。

雇用統計で大きく下落したが、2,300ドル強で推移しており、まだまだ強い。

雇用統計で賃金のインフレが止まっていない様子を受け、高金利の継続を懸念した市場では金価格が1日で大きく落ちはした。

だがガンドラック氏はそれも調整のうちと考えているようだ。ガンドラック氏はこう続けている。

年始から15%か17%の上昇だ。休憩も必要だろう。4ヶ月で20%も上昇したのだから。

金価格上昇の理由

今年の金価格の上昇は謎が多い。金相場は普通ドルの金利に反応し、ドルの金利が少なくなればドル預金からゴールドへ資産が流れてくるものだが、金価格が大きく上昇した3月と4月にはアメリカの金利は下がっていないのである。

では何が金相場を押し上げたのか。ガンドラック氏はこう語っている。

ゴールドの強気相場は世界経済と中央銀行にかかわる現象だ。世界的な債務の増加と関係している。

ガンドラック氏は先進国における政府債務の増加と紙幣印刷への依存がゴールドを押し上げていると考えている。より詳しくはレイ・ダリオ氏が解説している。

ゴールドの積み立て

だが今回注目すべきは金価格の水準について語っている部分である。ゴールドは買いなのか? ガンドラック氏は次のように述べている。

金相場が下落すれば間違いなく買い増すべきだし、現在の水準でもドルコスト平均法で買う価値がある。

ドルコスト平均法とは定期的に同じ金額だけその銘柄を買い続ける投資戦略である。定額で買い続けると、価格が低い時には多く、価格が高い時には少なく買うことになるので、平均購入価格が低くなる。要するに積み立て投資である。

読者も知っての通り、筆者はつみたてNISAに否定的である。税制上の問題があることに加え、株式の長期投資があたかも安全確実に儲かる投資であるかのように吹聴されていることが理由である。

だがこのつみたてNISAを有効活用する方法があるとすれば、それは貴金属の積立投資ではないかと筆者は考えている。

ガンドラック氏はゴールドを奨めているが、積み立てるなら筆者はむしろシルバーを推奨する。銀価格の長期チャートは次のようになっている。

以下の記事で説明した通り、シルバーはゴールドとともに1970年代のインフレの時代に高騰した銘柄である。

だがゴールドが史上最高値圏で推移している一方、シルバーはまだ過去のバブルの頂点さえ超えていない。

貴金属の長期の推移予想

貴金属の価格はインフレが収まるのか収まらないのかに依存する。だが長期の積み立てならそこは大した問題にならないと筆者は考えている。

来年にかけてインフレは収まるのか。仮に収まったとしたら貴金属価格は一時的に下落するだろうが、もしインフレがその程度で収まるならば、政治家はほぼ確実に紙幣印刷を何の問題もないものと考え、インフレを引き起こしたコロナ後の現金給付のような政策をもう一度、今度は更に大きな規模でやるだろう。

1970年代の例を見ても分かる通り、インフレ政策は麻薬のようなものであり、人々がインフレに本当に懲りるまでインフレは続く。

だから短期的なインフレの見通しは難しいが、長期的なインフレの見通しは簡単であり、長期的にはインフレは間違いなく再来すると筆者は考えている。

そしてそうなれば銀価格は1970年代の高値を超えてゆくだろう。

結論

それが厳密にいつかは分からない。だがシルバーの積み立てを数十年続けるのであれば、いつかのタイミングで貴金属相場が1970年代の再現になることはほぼ間違いないように思える。

少なくとも金融庁が吹聴しているような、過去40年の金利下落相場での株式市場のパフォーマンスをコロナ以後の金利上昇相場で期待するような長期投資のやり方よりはよほど確度が高いだろう。

長期的な価格水準で言えばシルバーよりもプラチナの方が更に安いのだが、EV(電気自動車)市場の動向を注視する必要があるため、目を瞑って買い続ける積み立て投資には向かないかもしれない。

積み立てとは株式で楽してお金が増えることを期待することではなく、自分の資産の購買力を守ることである。国民は政府のもたらすインフレから身を守る必要があるが、普通に貴金属を買ってインフレが来ても、価格が上昇すれば税金が発生してしまう。

だからこれがNISAの本当の使い方ではないか。アベノミクスの時代に国民の資金を株価の押し上げに貢献させることを目的として作られたNISAが、政府のインフレ政策から国民を守るために使われることを筆者は心から願っている。