世界最大のヘッジファンド、ポートフォリオを大幅リスクオフへ

機関投資家のポジションを開示するForm 13Fによれば、レイ・ダリオ氏率いる世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterが米国株や新興国株の買いポジションを大幅に減らしている。7月のFOMC会合以来株式市場が荒れる中、なかなか興味深い動きである。

先ず、少し前のダリオ氏の動きから復習しておこう。2018年初め、世界同時株安よりも前だが、株式市場は急騰していた。特に根拠のない上げだったので筆者は傍観していたが、ダリオ氏は1月にダボス会議でかなり強い表現で株高予想を表明した。

しかしこのダリオ氏の発言の直後、1回目の世界同時株安が起きることとなる。

ダリオ氏は下落開始直後は意見を変えず、ただの調整だと主張した。

しかしそのすぐ後でダリオ氏は意見を180度転換させることになる。

ダリオ氏は間違ったのだが、投資家としては間違いを即座に修正できるダリオ氏の潔さを評価したい。ジョージ・ソロス氏も、自分はしばしば間違えるが、重要なのは間違えた時にどう対処するかだとよく主張していた。

さて、その後株式市場は一度持ち直したが、ダリオ氏はもう迷わなかったようだ。

そして市場は2018年後半の世界同時株安へと繋がってゆく。

2019年のダリオ氏のポジション

さて、ではその後ダリオ氏はどうしているのだろうか?

Form 13Fによれば、2019年の初頭には株式の買い持ちポジションを増やしていたようである。Form 13Fに記載されているダリオ氏の主な買い持ちは、米国株指数のETFと新興国株のETFであり、3月末のデータでは新興国株ETFの方が大幅に増額されていた。

しかし6月末のものとなる今回のデータでは、この増額分が大幅に減額されている。具体的には以下のようになる。

  • iShares Core MSCI Emerging Markets ETF: 21億ドル -> 12億ドル
  • iShares MSCI Emerging Markets ETF: 31億ドル -> 11億ドル
  • Vanguard FTSE Emerging Markets ETF: 31億ドル -> 20億ドル

また、米国株ETFの方も微減となっている。

  • SPDR S&P 500 ETF: 23億ドル -> 20億ドル

Bridgewaterはまさに世界で一番大きいヘッジファンドであり、これだけの資金を躊躇なく迅速に動かすあたりは流石だろう。

Form 13Fでは買いポジションしか分からず、Bridgewaterの空売りポジションがどうなっているのかまでは分からない。しかし少し前に弱気の相場観を表明していたことを考えれば、今回明らかになった買いポジションの大幅削減もリスクオフに備えてのことだと考えて良いだろう。

ダリオ氏は間違いなく世界最高のヘッジファンドマネージャーの1人である。しかし少しだけ言わせてもらえれば、この状況で買うべきなのは新興国株ではなかったのではないか。リスクオフの状況下では、先進国市場よりもリスクの高い新興国市場から売られてゆくからである。

個人的にはやはり、こういう状況下では為替をいじっている方が好みである。