世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がCNBCのインタビューで、アメリカの株式市場について語っている。
アメリカ利下げと米国株高
米国株は上がっている。トランプ政権の関税政策をきっかけとした4月の下落から回復し、その後はトランプ大統領が長らく求めていたFed(連邦準備制度)の利下げが始まったことから、金融緩和を織り込む株高となっている。
S&P 500のチャートは次のように推移している。

この状況をダリオ氏はどう思っているのか。ダリオ氏は次のように述べている。
わたしの使っているバブルの指標で見れば、米国株は比較的かなりバブルだ。それは単に株価だけを見ているわけではない。誰が株式を買っているのか、融資の状況はどうなっているかなどを考慮する。
その結果、現状は比較的バブルだと言える。
米国株のバリュエーション
米国株が極めて割高だということについては、去年末の段階でデイヴィッド・ローゼンバーグ氏が指摘していた。
今の米国株のバリュエーションでは、米国株は米国債並みに安全な資産だと評価されていることになってしまうという指摘である。
それはまったく真っ当な指摘である。そしてそのバブルは、4月にトランプ政権の関税をきっかけに弾けかけた。4月の株安は、あくまで関税がトリガーとなっただけで、本当の原因は米国株が割高だったことである。
だが当時、関税は一時延期され、このバブルは継続することとなった。そして今はどうか。ダリオ氏は、米国株がかなりバブルだと指摘した上で、次のように述べている。
しかしバブルは、金融引き締めなどの理由でとどめが刺されない限り続く。
バブルと金融政策
バブルは、針が刺さって弾けるまで大きくなり続けるのが普通である。割高であることは、バブルがすぐに弾けることを意味しない。
金融市場に長年居る人間であれば誰でも知っていることだが、何かがトリガーにならない限り、バブルはむしろ弾けず大きくなり続けるものである。
だから考えるべきは、このバブルを破裂させるようなトリガーが今の市場に存在しているかということである。
ダリオ氏は次のように言っている。
アメリカは、これから金利を上げるどころかむしろ下げる可能性が高い。
Fedのパウエル議長が来年5月に任期終了となるにあたって、トランプ政権は金融緩和に積極的な新議長を探している。
スコット・ベッセント財務長官によれば、新議長は年内に発表されるはずである。
バブルはどうなるか
しかし、そもそも何故利下げをしなければならないのか。ダリオ氏は次のように述べている。
アメリカ経済は2つに分断されている。一方では、経済の大部分が弱まっており、利下げが必要となっている。
例えば失業率は上がり続けている。だがインフレは収まっているとは言えない。債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は、1月の時点でこの状況を予想していた。
そして株価は上がり続けている。ダリオ氏は次のように続ける。
一方では金融市場でバブルが進行している。そして両方にとって最適な金融政策は存在しない。
株価が上がり続けていることは、決して良いことではない。金融市場では、価格とは高すぎても安すぎても駄目なのである。上がれば上がるほどクラッシュする確率が高まる。長期的には、上がりすぎた価格は元に戻らなければならない。
だが、失業率の悪化を止めることを優先するならば、当面のあいだ金融市場のバブルはこのまま続けるほかない。
だからダリオ氏は次のように言っている。
したがって、バブルはここから更に進行することになる可能性が高い。ここから起こることは、1998年か1999年、あるいは1927年か1928年に似たものだろう。
結論
ダリオ氏は明らかに、2000年までのインターネット・バブル、1929年の世界恐慌までの大幅な株高のことを指している。
ダリオ氏は今の状況をバブルだと言っているが、バブルの天井の2年前の年を引き合いに出したということは、バブル崩壊までまだ1〜2年あると考えているということである。
少し前に、ポール・チューダー・ジョーンズ氏が同じくドットコムバブルを持ち出して、次のように言っていた。
1999年のようだ。そうだろう? 1999年とまったく同じ雰囲気だ。厳密な繰り返しになるかどうかは分からないが、すべての材料は既に整っている。
トレーディングの観点から言えば、今が1999年10月であるかのようにポートフォリオを準備しなければならない。他のやり方をすべき理由は見当たらない。
ともに2000年をトレードしたことのある古株のファンドマネージャーである。
ダリオ氏が1998年か1999年と言ったのに対し、ジョーンズ氏は1999年10月とバブル崩壊まで半年の時点を挙げていることに注目したい。
だがそれでもジョーンズ氏は、ドットコムバブルはそこから2倍に上がったとして、株を買うべきだと言っているのである。
また、世界恐慌前後の米国株の巨大バブルとその崩壊、そしてその後の株価の長期低迷については、ダリオ氏がバブル崩壊を解説した本『巨大債務危機を理解する』の中で解説しているので、そちらも参考にしてもらいたい。
