ガンドラック氏: パウエル議長が退任すればアメリカの金融政策はもっと緩和的になる

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。

今回は、来年5月にFed(連邦準備制度)のジェローム・パウエル議長が退任することを踏まえてアメリカの金融政策がどうなるかについて語っている部分を取り上げたい。

アメリカの連続利下げ

Fedは先月末にFOMC会合を開き、9月に利下げを再開してから2度目の0.25%利下げを決定した。

利下げそのものは市場の予想通りだったが、1つ興味深い事実は、Fed内部の意見が割れているらしいことである。

利下げを望むトランプ政権から送り込まれたマイラン理事はより大きな0.5%利下げを望み、カンザス連銀総裁のシュミッド氏は逆に利下げなしを要求して決定に反対票を投じた。

Fed内部で対立が生じ始めているのかという質問に対し、ガンドラック氏は次のように述べている。

そのようだ。経済データが不足していることや、物価安定と完全雇用という2つの目標を両立することに問題が生じていることを考えれば、当然だと言える。

雇用とインフレは逆向きに動いている。少なくとも、インフレ率は2%に向かってはいない。

そしてわれわれの予想では、インフレ率は2026年の終わりまで3%台で留まることになる。

ガンドラック氏が言っているのは、失業率は引き続き上昇トレンドにあり、労働市場が減速している一方で、インフレ率はむしろ上がっていることである。

労働市場を支えるために利下げすれば、インフレを加速させることになる。だからパウエル議長は12月の利下げを確定事項とみなす向きに対して釘を差したのである。

ガンドラック氏は次のように述べている。

Fedの片方の目標は利下げしろと言っており、もう片方の目標は利下げするな、もしくは利上げしろと言っている。

それでFed内に対立が生じているわけだ。

今後のアメリカの金融政策

パウエル議長は、少なくとも次回12月の会合での利下げに一石を投じ、トランプ政権の利下げ要求とはやや距離をおいたように見える。

だが、ガンドラック氏は次のように言っている。

マイラン理事はこれから毎回の会合で0.5%利下げを要求するだろう。

そしてそれこそが、来年の半ばに新議長が就任したときにどうなるかを示していると思う。

マイラン理事の0.5%利下げ要求がトランプ政権の意向であるのだから、来年5月にトランプ大統領が指名する新議長が就任すれば、恐らくはそれがFedを支配するスタンスになるということになる。

だから、株式市場は今既にかなり上がっているが、それよりも更に緩和的な金融政策が来るということである。

ガンドラック氏は次のように続けている。

新議長が就任すれば、政策金利がインフレ率を下回るような低金利になる可能性があると思っている。

トランプ大統領や、ベッセント財務長官もある程度そうだが、金利低下を望んでいる。

アメリカの政策金利とインフレ率のチャートを並べると次のようになっている。

政策金利は、先月末の利下げによりこれより0.25%低いが、それでもインフレ率よりまだ高い位置にある。

もし政策金利がそれより低い位置まで降りてくるとすれば、2025年に入って上昇傾向にあるインフレ率はどうなってゆくのか。

Bridgewaterのレイ・ダリオ氏は、これからアメリカでアベノミクスと同じようなことが行われると予想している。

それで、株式市場もバブルになると考えている人も多いわけである。

株式市場はFOMC会合の後で下落しているが、投資家は来年に向けてFedがどうなるかを考えながら投資をする必要があるだろう。