DoubleLine Capital創業者のジェフリー・ガンドラック氏が、今月行われたFed(連邦準備制度)の利下げについてCNBCのインタビューでコメントしている。
9月の利下げ
今月のFOMC会合でFedは利下げを決めた。パウエル議長からすれば渋々利下げしたという感じではあったが、9ヶ月ぶりの利下げであり、Fedはここから連続利下げをしてゆくものと見込まれている。
パウエル議長を困惑させたのは、インフレ率と労働市場の乖離である。インフレ率は、今のところ2%台とはいえ今年からどんどん上昇しているのに、労働市場の方は弱まっているからである。
つまり、スタグフレーションの気配がし始めている。
労働市場の弱まり
労働市場では、失業率がじわじわ上昇していることが懸念されているだけでなく、過去の結果が遡って大幅に下方修正されていることが問題となっている。トランプ大統領はそれで雇用統計の担当局長を解任した。
雇用統計を見ながら利下げを判断しなければならないパウエル議長にも、これは重大な問題のはずだ。ガンドラック氏は次のように述べている。
170万人分の雇用が下方修正されたことに関して、パウエル議長は本当に驚いたというか、困惑していたように見える。
これは非常に大きな下方修正だ。また、パウエル議長は労働市場の需要も供給も急速にしぼんでいっていることにも困惑していたと思う。
パウエル氏がインフレを気にしながらも一応利下げをした理由はそこだろう。労働市場がこれ以上弱くならないためにも、緩和をしなければならないというわけである。
しかしガンドラック氏は次のように続けている。
この労働市場の減速の結果として、金融緩和が過剰になってゆく可能性を懸念している。
今後の利下げ動向
今月のFOMC会合では0.5%利下げに投票した会合参加者もいたが、ガンドラック氏は次のように述べている。
0.25%利下げは正しい動きだったと思う。
だが、パウエル議長が来年5月に退任するにつれて、トランプ大統領は緩和に積極的な新議長を任命すると予想されている。
トランプ氏が政策金利を下げたいのは、ガンドラック氏が以下の記事で指摘していた通り、発行されている米国債の8割が期間が1年以内の短期債だからだろう。
だから政策金利さえ下げてしまえば、米国債の利払いを抑えられる。米国債の利払いが財政赤字の半分にまで達している状況では、それは非常に重要である。
アメリカの財政問題
だが、米国債の利払いを抑えたいのは、財政赤字を抑えたくないからではないのか。
ガンドラック氏は次のように指摘している。
アメリカの会計年度の半分が終わろうとしているが、財政赤字はGDP比で去年より増えている。
アメリカの財政赤字は制御不能になりつつある。
ガンドラック氏は、利下げと財政赤字の拡大が長期金利を上昇させると考えている。
ガンドラック氏は次のように述べている。
長期国債は過剰な緩和をむしろ嫌がるだろう。長期国債にはFedがインフレを止めようとしている状態が一番良い。そして長期国債は財政赤字の増加を当然嫌う。
低金利政策を大きく推進する人物が新議長になった場合、米国債を買っている人にとっては極めて厳しい状況になるだろう。
長期国債の暴落から量的緩和再開、インフレとドル安というシナリオが現実味を増している。
米国債の8割が1年以内の短期債なのだから、それでFedが結局利上げをしなければならなくなるとき、すべては終わるのである。
米国債が暴落する相場において米国株が酷い状況になるということは、以下の記事でBridgewaterのレイ・ダリオ氏が解説している。
その2回とは、1970年代の物価高騰時代、そして1929年から始まる世界恐慌である。
特に世界恐慌の時の米国債と株価の推移については、これからの相場を予想する上で知っておくべき知識だろう。ダリオ氏が著書『巨大債務危機を理解する』で解説しているので、そちらも参考にしてもらいたい。